2021年4月20日、元K-1王者の魔裟斗とRIZINで活躍する朝倉未来(トライフォース赤坂)が、それぞれのYouTubeでコラボをアップ。
魔裟斗が動画「立ち技から組みまで! 朝倉未来選手の強さに迫ってみた」で、ミットを持って未来の打撃を体感。さらに、未来に練習内容の提言と「米国行き&立ち技競技への挑戦」を勧めると、未来も「魔裟斗さんと対談したら格闘技にかける気持ちが倍増した」と、世界とK-1への挑戦について、「やってみたい」と前向きな姿勢を示した。
まだ本気でやっていない、俺から見ると強くなる要素がいっぱいあるからもったいない(魔裟斗)
未来の動画を確認し、「打撃のセンスがある」と評価する魔裟斗は、その一方で、「練習は走りも筋トレもしないらしいですね。ミット打ちも無し? スパーだけ? それでよくスタミナが持ちますね」と、未来の練習内容について言及。
「いま28歳ですよね……で、30で辞めると言っていて、伸びしろだらけなのになって。だってまだ本気でやっていないんで。走ってもいないし、俺から見ると、まだまだ強くなる要素がいっぱいあるからもったいない。潜在能力の50%くらいしか出していないんじゃないかなって。本気で練習して、それこそアメリカへ行って、外国人を倒していくのがカッコいいんじゃないかな」と、未来のファイターとしての現状を「もったいない」と評した。
「いや、やってますよ(笑)。スパーリング、やってます」と苦笑する未来。
魔裟斗は、「スパーリングはやっぱ一番大事なんだけど、ミット打ちも走るのもウエイトトレーニングも、すべての練習が大事で、“スパーリングに行くまでの順序”がある。ウエイトトレーニングをやってなかった人がやると、一気にパンチの質が変わるんです。軽かったパンチが、カチーンっていうパンチに変わるんですよ。
筋肉の繊維って速筋と遅筋があって、ウエイトトレーニングをやることによってその速筋繊維に神経が通る。半分くらいしか使えなかった筋肉が(より)使えるようになるわけです。そうすると全然、違う威力が出る」と、フィジカルトレーニングの重要性を説いた。
ウエイトに加え、魔裟斗が現役時代に重視していたのがラントレだ。
「やっぱり走り。中距離から短距離から。1500m走とかバンバン走って、3本全部ダッシュで走れるくらいにスタミナつけたら、試合でスタミナの配分いらないから。5分3Rバテない。1Rから全速で行ける」と、「本気の取り組み」のなかに、ラントレも加えることを勧めた。
未来も「そしたら強いですね。たしかに、練習少ない分、試合中に体力の計算しているところがあるんで」と吐露すると、まずはウエイトトレーニングから本格的に取り組むつもりであることを語る。
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(UFC王者は)めちゃくちゃ厳しい道のりだけど、夢がある(未来)
「基本的に我流でしょ。トレーナーが付いたことがない。堀口(恭司)選手がアメリカに行っているように、アメリカのジムに死んだつもりで、少年院に入ったつもりで、1年半くらい入っちゃえば? したら、めちゃめちゃ強くなるんじゃない?」と、未来にあらためて米国行きを勧める魔裟斗。
「だって人生一回しかないからね。“あそこでやっておけば”って思っても時間は戻んない。まだ今だったら間に合う。いまのUFCとかを観ると、選手全員がアスリートですよね。アスリートのトレーニングをしないと一番のトップはなかなか難しいんじゃないかなって」と、世界との差を語った。
魔裟斗が未来に米国を目指せと言うのには理由がある。
魔裟斗がK-1 MAXのチャンピオンになった当時、日本には「世界」の強豪が揃っていた。そんな魔裟斗にとって、もうひとつの夢が、ファイトスポーツのメッカであるラスベガスで、K-1中量級の試合を認めさせることだった。世界中のトップボクサーたちが輝く場所で、K-1ファイターとして世界と戦うこと──その叶わぬ夢に、MMAであれば、挑戦が出来る。
「選手って一番、高いところに行きたいもんなんですよ。絶対に。やっぱ時間って限られるし、僕も若い頃いっぱい仕事をして、目先の金はいっぱい入るけど、そうするとやっぱりチャンピオンになれなくて、2回目の世界チャンピオンになったからこそ、いまも自由に生きていける」と、魔裟斗はファイターとして後悔のないよう、未来に世界への挑戦をうながした。
30歳での引退を表明しながらも、本誌の取材に「斎藤戦後にモチベーションが上がって、実際、辞められるか分からない」と話していた未来。魔裟斗は、「いまは34~35歳くらいまでは身体能力が上がるとスポーツ科学で証明されているからもったいないよ」と、これからに期待する。
「今、肉体的にも精神的にも、こっから強くなるときなんで、YouTube仲間も引き連れて、アメリカに行った方がいいんじゃないかなって。まだまだ若いし、総合格闘技だとアメリカに行くっていうデカい世界もまだ広がって行く。向こうへ行ったら、お金の額が違うでしょ。UFCでチャンピオンになった日本人もいないでしょ? 日本人で初めてUFCチャンピオンになったら凄くない? そこを狙えばいいんじゃないか」という魔裟斗。
続けて「俺が選手だったら絶対にそこを狙う。誰もやったことのないことに挑戦するっていう。リングの上の緊張感はあそこにしかない。喧嘩で勝っても周囲は喜んでくれないけど、リングだったらみんなが喜んでくれて、地位も名誉もお金も手に入る。その最高の舞台で一番光れる場所だから、それがUFCでトップになったら皆、尊敬するし、いいんじゃないかな」と、さらに熱を帯びた。
未来も「たしかにそれは夢がありますね、いいですね。頑張ります」と呼応しながらも、「めちゃくちゃ厳しい道のりですけどね」と、世界最高峰への道のりが簡単ではないことを理解している。
「でも人生って楽しても面白くないでしょ。辛い方が達成したときの喜びがある。そんな気がするんですけど」と語る魔裟斗に、未来は、「トーナメントのときに言ってましたね。ブアカーオと戦うときに、『一番厳しい道を行くのが……』」と、2007年10月の「K-1 WORLD MAX 2007 世界一決定トーナメント」で前年度王者を自ら指名した魔裟斗の言葉を引用。
魔裟斗も「そうですね。『一番辛い道を行くのが、一番成功の近道』って言いました」と、未来にもその気概があることを感じていた。
「人生、何かを得るには何かを捨てる必要がある。ほんとうにもしUFCでチャンピオンになるんだったら、YouTubeは捨てなきゃいけない、とかあるかもしれない。両方を得ることは難しい。欲しいものが大きければ大きいほど、捨てるものも大きい。ただ、YouTubeって、この状態は一生続くわけじゃない。何か自分の一生涯持てる──俺だったらK-1チャンピオンに2回なったこと──そういうものをひとつ持っていると、歳を取ったときに、これを持っててよかったなと思えて、それが助けになる」との魔裟斗の言葉に、「絶対そうだと思います」と頷いた未来。
「魔裟斗さんと対談したら格闘技にかける気持ちが倍増した」と言う通り、ファイター朝倉未来の心が燃えたようだ。
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武尊vs.天心の舞台で、未来選手がK-1と戦ったら盛り上がる(魔裟斗)
対談では、未来から魔裟斗に、「もし現役時代だったら、今のK-1選手でやってみたい選手は?」の質問も。
魔裟斗は「それは同じ階級で木村“フィリップ”ミノルとか」と、同じ70kgの世界王者として、木村の名前を挙げると、突如、未来に「逆にK-1に出てほしいな」と、立ち技挑戦を勧めた。
「結構、いけると思う。67.5kgで安保瑠輝也とか、木村ミノルとも打ち合いしたら面白い。それか山崎(秀晃)とも。でも安保とか木村ミノルの方が、面白いかな。観たいなぁ」と、魔裟斗は未来の立ち技の試合を熱望。
「えっ、僕ですか?」と驚く未来だが、「チャンピオンは山崎(秀晃)選手ですよね。山崎選手も1回スパーリングさせてもらいましたけど、強いですね。一番、上手く感じました。蹴りとパンチの出し方が絶妙で」と、王者を高く評価し、「1回やってみたいですね。1試合だけ、立ち技に挑戦して、チャンピオンとかとやらせてもらいたいですね」と、前向きな姿勢を示した。
「それめちゃくちゃ盛り上がるんじゃない。それが昔、KIDだったじゃん。K-1のリングに上がってきて。最高の舞台で、最高の選手同士がやって盛り上がれば。やるかやらないか、武尊vs.天心っていう噂もあったりするじゃないですか。そこにね、(朝倉未来vs.K-1ファイターを)やったら面白いね。そんなカードがあったら、盛り上がるんじゃないかな」と、かつて「K-1 PREMIUM 2004 Dynamite!!」で対戦した山本“KID”徳郁との試合を引き合いに出して、ドリームカードの実現に期待を寄せた。
「面白いですね。K-1でそういう試合をするんだったら、流石にミット打ちを頑張りますね」という未来に、魔裟斗は、「でもK-1の動きをしちゃ駄目なんじゃない? 総合格闘技の動きで行った方が、相手はやりにくい」と指摘。「そうですね、このまま行った方が。ぜひ後で教えてください」と、未来は魔裟斗に直接指導をリクエスト、魔裟斗は自身の動画で未来の打撃をミットで受けている。
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(魔裟斗は)ありえない組みの強さ。総合でもやってたら強かったんだろうなって(未来)
右利きサウスポーの未来に、前手の右ジャブの使い方を「ナックルを返すときに肩を入れて打つ」と指導する魔裟斗。得意のアッパーでは、ガードの隙間を縫うように「アッパーは小指で当てる」と、そのコツを伝授している。さらに「KOパンチ」というフックでは、前足をインサイドに踏み込む動きを、未来と何度も繰り返した。「いつもはもっと体重を乗せているでしょ」という魔裟斗は未来に力を出すように求めると、未来は伸びる左ストレート、力強い右フック、左ミドルを披露。
魔裟斗は目を輝かせて、「おおー、パンチあるわ。蹴りも強い。これ倒れるわ。フックも強い。K-1でやって欲しい。身体はそんなに筋肉質じゃないけど、背筋力あるよね。練習しないでこれだから(笑)。全然、打撃でも現役のK-1ファイターに負けてないよ。ものすごい強い。K-1ファイターと質が違うけど当たれば倒れる。今日は朝倉未来の強さの秘訣が、組んで分かった。パンチも蹴りも強い」と絶賛した。
なおも動画で魔裟斗は、「未来選手とは似ているところがあって。僕も小さい頃にまわしを着けて相撲をやっていた。動画でなかやまきんに君が未来選手に速攻、投げられていたので、相当、腰が強いんだな、体幹が強いなって思って。そこで…ちょっと組んだ感じを(知りたい)。俺も首相撲はムエタイのタイ人と組んだので、結構強い方ではあったけど」と、急遽、未来との組み技スパーリングを敢行。
腰の強さに定評がある未来をして「びっくりしました。組みもめちゃめちゃ強い。いや、ありえない強さですね。総合でもやってたら強かったんだろうなって」と驚かせる組み力を、魔裟斗も見せている。
手合わせを終えた魔裟斗は「久しぶりにこんなにパワーある選手に出会った」と語ると、あらためて未来に「日本で終わったらもったいない。アメリカへ行った方がいいよ。やっぱり最高峰の舞台で戦わないと後悔するよね。これからの朝倉未来、さらに強くなっていくんで、UFCのチャンピオンに、もしくは立ち技でそういうビッグマッチもあったら楽しみじゃないですか。俺とKIDがやったみたいに。ここにもいますよ、立ち技でも通用する男が。そんなビッグマッチを組んで、元気のない日本をね、選手のみんなに元気にしてもらいましょう! 楽しみにしています」と、期待を寄せている。
このほかにも、両者のチャンネルでは、魔裟斗のKID戦の秘話、そして「初めて話す」という引退時の状況、未来とRIZINの出会い、武尊vs.天心の予想などに触れており、必見の内容となっている。