「“キック・スポーツ”はやりたくない。倒すか倒されるかの駆け引きをやりたい」と鈴木
2021年3月13日(土)東京・後楽園ホール『KNOCK OUT~The REBORN~』にて、「KNOCK OUT-BLACKスーパーライト級王座決定トーナメント」の準決勝3分3R延長1Rで久保政哉(Monolith)と対戦する、鈴木千裕(クロスポイント吉祥寺)のインタビューが主催者を通じて届いた。
鈴木はMMAファイターとしてパンクラス・ネオブラッド・トーナメント2018フライ級(56.7kg)で優勝。2019年8月の『REBELS』でキックボクシングデビューすると、圧倒的な破壊力を誇るパンチで3連続KO。2020年2月のトーナメント準決勝で西岡蓮太に初黒星を喫したが、その後も怒涛の3連続KOを果たしている。「判定なんてクソくらえ」とKO至上主義を貫く。戦績は8勝(6KO)1敗。
ここからは若い自分たちが『KNOCK OUT』を『立ち技最強』と言われるまでにひっぱっていかないといけない
──昨年後半は9月、11月、12月と3連続KO。特に11月、12月は1RKOで決めて、いい流れで来ているのでは?
「そう思っていたんですけど、最近になって全部崩されたんですよ」
──というと?
「詳しくは言えないんですけど、ある人たちと練習していて、そこで『強いヤツっていうのは、自分以外にもメチャクチャいるんだな』というのを改めて痛感させられる出来事があったんです。前回、自分は勝てたんですけど、そのことを経て『まだまだこんなところで喜んでる場合じゃねえな』と思って。気持ち的にはまだまだこれから、むしろテングになってた心が折られたところです」
──そんなに衝撃的な体験をしてるんですね。
「そうですね。同じ人間なのにこんなに強い人たちがいるんだなという選手と練習できているので、俺はまだまだ自分のことを強いなんて言ってられないなと」
──そういう状況で王座決定トーナメントが決まったわけですが、エントリーされたことについては?
「トーナメントに呼んでいただけたので、もちろんチャンピオンになるのは絶対条件ですよね。自分たち20代の選手たちが新しい時代を作っていくためにも、それこそこのトーナメントに出場するベテランの選手たちよりも、自分と与座選手のどちらかが上に行かないといけないと思っています。だからこのトーナメントは、自分の中ではベテランを越えていくための試練ですね」
──準決勝の相手、久保政哉選手については?
「ベテランでテクニックもすごくあって、“世界の久保”と言われてるぐらいの方なので、自分にとっては本当にターニングポイントというか、ここで勝つと負けるとでは全然違うと思うので、僕の意地を見せる試合をしたいです。『KNOCK OUT』を背負っていく覚悟を見せる試合をします」
「誰もが言う左ミドルですね。とにかく速いしタイミングも分かんないし、蹴りのスキルがすっごく高いので、どう攻略するかが自分の課題です。試合までに一歩でも実力差を埋められるようにと頑張ってます」
──その手応えはどうですか?
「そうですね、今までとは全然変わってるというのを信じてやってるので、今までの自分は死んだと思いたいです。新しい、進化した“クレイジー・ブラック・ダイヤモンド”鈴木千裕を見せます!」
──そうなると、与座選手とともに若い選手がベテランを倒して、決勝で対戦するのが理想ということですか?
「若い世代が時代を作るのが理想なんですけど、決勝戦は正直、誰でもいいです。やっぱり65kgで一番強い人がベルトを持って、チャンピオンとしての責任を背負うことになるので、与座選手と宮越選手、どちらよりも優れていなければいけないじゃないですか。そういった意味では、どちらでもいいですね」
──そこで勝てばチャンピオンということになります。改めて、ベルトへの思いを聞かせていただけますか?
「ベルトへの思いは、実は今はあんまりなくて、『この4人の中で一番優れたい』と思うようになってますね。結局はそれがベルトに直結しちゃうんですけど。『ベルトがほしいからこのトーナメントに勝つ』ではなくて、『他の3人よりも強いことを証明したい』と思えたので、それを実際に見せるのがこのトーナメントでの目標です」
──それができれば、結果的にベルトが手に入っているということですね。
「そうですね。だから今は、ベルトはついてくるものだと思っています」
──それにも関係してきますが、このところ『KNOCK OUT』の「エース争い」「主役争い」が活発化しているのには、鈴木選手の試合ぶりや発言が大きく影響している部分があると思います。その中にいて、ご自分としてはどうですか?
「やっぱり格闘技なので、僕は実力でエースになりたいんですよね。『KNOCK OUT』の看板を背負うために、パフォーマンス・エースじゃなくて、実力でエースになりたいんです。パフォーマンスや発言ももちろん大事なんですけど、それは二の次で、実力を重視したエースになりたいと思っています」
──そこに近づいているという手応えはありますか?
「いやあ、まだまだですね。いっちょ前に語るにはまだまだですけど、勝っていけば勝手にそれは証明されていくと思うので、焦らずに一つひとつ結果を残していきたいと思っています」
──ところで先日の2・28後楽園大会で、『REBELS』がいったん封印ということになりました。その会場にもいらっしゃいましたが、あの日は何を感じましたか?
「素直に感じたのは、先輩方が作ってこられた10年間の歴史でしたね。先輩たち一人一人が合わさった、みんなの力で成り立ってたんだなっていう。だからこそ、僕は山口会長のエキシビションの時にはコーナーに行かなかったんですよ。少なくともそこに立つのは僕じゃなくて、『REBELS』を初期から盛り上げている小笠原裕典先輩、瑛作先輩が行くのがベストだなと思ったので。僕はこれから『KNOCK OUT』の中心になれるように頑張ろうと思いました。先輩たちじゃなくて、ここからは若い自分たちが『KNOCK OUT』を『立ち技最強』と言われるまでにひっぱっていかないといけないと、改めて感じましたね」
──若い世代全体で。
「はい。自分一人が『盛り上げよう!』って言ってるだけじゃ意味ないんで。20代の選手たちがどういう心持ちでやってるかは分からないですけど、少なくとも自分は世代を作ろうと思ってやっているので、同志が集まれば勝手に盛り上がっていくのかなと思ってます」
──その旗頭として認められるような試合を見せたいと。
「はい、ガンガンやらないといけないですね。“キック・スポーツ”はやりたくないんですよ。ポイントを取って逃げても勝ちになるような試合はしたくないんです。倒すか倒されるかの駆け引きをやりたいので、そういう試合ができる看板選手になります。トーナメントも慢心せずに練習して、あとは試合を待つだけです」