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MMA(総合格闘技)世界最高峰のUFCで、バンタム級が黄金時代を迎えている。
2020年6月6日(日本時間7日)、米国ネバダ州ラスベガスの「UFC APEX」にて開催された「UFC 250」のバンタム級で、注目の新鋭や元王者が復活。引退を表明したヘンリー・セフードが持っていたベルトを巡る王座戦線が激化を迎えている。
セミファイナルでは、バンタム級5位のハファエル・アスンサオ(ブラジル)と9位のコディ・ガーブラント(米国)が対戦した。
▼バンタム級 5分3R
〇コディ・ガーブラント(米国)136lbs/61.69kg
[2R 4分59秒 KO]
×ハファエル・アスンソン(ブラジル)136lbs/61.69kg
高校時代にレスリングでオールアメリカンに選出され、アマチュアボクシングでも32勝1敗。プロMMAでは15戦目となるガーブラントは、まだ28歳。驚異のMMA11連勝から、2017年11月に元同門のTJ.ディラショーにMMA初黒星のKO負け。2018年8月の再戦でもKO負けで連敗。さらに2019年3月の前戦ペドロ・ムニョス戦でも打ち合いに敗れ3連敗。崖っぷちの状況だ。
対する37歳のアスンサオはMMA27勝7敗のベテラン。2017年1月からアルジャメイン・スターリング、マルロン・モラエス、マシュー・ロペス、ロブ・フォント相手に4連勝を飾るも、2019年2月のモラエスとの再戦でギロチンチョークに敗れると、8月にサンドヘイゲンに判定負けと連敗を喫した。タイトル戦線に戻るためにはガーブラント戦は落とせない試合となる。
1R、ともにオーソドックス構え。遠い距離を保つガーブランド。右ローを当てるアスンサオ。さらにスイッチしての左ハイは浅い。右の後ろ廻し蹴りで牽制はガーブランド。サウスポー構えに変えて左ハイも打つが遠い。
右ローを当てるガーブランド。アスンサオがスイッチすると右前足にインローを打ち込む。ローからワンツーで入るガーブランドにカウンターの右を狙うアスンサオ。右ローを当てる。さらに右の後ろ廻し蹴りを見せ、ガーブランドがスウェイで避けたところでホーン。
2R、アスンサオの右の後ろ廻し蹴りにテイクダウンを合わせたガーブランド。すぐに立つアスンサオの立ち際に蹴りを狙う。ガーブランドの右カーフキックを嫌ったか、アスンサオはサウスポー構えに。オーソドックス構えに戻すアスンサオ。アスンサオの左ミドルとガーブランドの右ミドルが交錯。徐々に詰めて行くガーブランド。頭を下げてテイクダウン狙いも切るアスンサオ。
ガーブランドの右に一瞬片ヒザを着くアスンサオ。すぐに立つとガーブランドは右手を振る。右の水面蹴りを見せるガーブランド。アスンサオは金網に詰めて右の跳び蹴りも着地。ガーブランドは金網背に。
アスンサオはサウスポー構えから右を振るが、右にダックしてかわしながら振りかぶったガーブランドはタメを作って右フック! と同時にブザー。カウンターでもらい後方に倒れたアスンサオを見てレフェリーが試合を止めた。ホーン後、両肩を支えられて立とうとしたアスンサオは足もとがふらつき立ち上がれず。
約3年半ぶりの勝利に“ノーラブ”ガーブランドは「長い旅だった。アメリカ中を旅して練習してきた。こうしてジョーからまたインタビューを受けられる。タイトルマッチに再び挑戦するんだ。マーク・ヘンリーとクリス、サクラメントとニュージャージーのコーチたちに感謝したい。彼(アスンサオ)が削れているというコーナーの声を信じていた。もともと自分はスピードがあったけど、(コーチたちが)高いレベルに引き上げてくれた。パッション、モチベーションも高まっている。バンタム級は層が厚く燃えている。そこに絡みたいし、タイトル戦線に戻ってきたい。いま涙が出るくらい嬉しいよ」と笑顔を見せた。
ブザーとほぼ同時、2R終了1秒前の勝利にファイターたちも大興奮。現UFC世界フェザー級王者のアレクサンダー・ヴォルカノフスキーは「ワーーーーーオ ブザーと同時。コーディの夜だ」とツイート。UFC世界ライトヘビー級ランキング1位のドミニク・レイエスも「年間KO賞だ!」、カブ・スワンソンは「俺が今まで見た中で最もヤバイKOの一つだ」とツイートするなど、タイムラインが絶叫の嵐に。
まじでかっこいい https://t.co/n0W7P7WmQU
— 平本蓮 (@ren___k1) June 7, 2020
金網を背にノーガードで身を沈めて、カウンターで振り抜いた右フックでアスンソンを失神KOに下したガーブランドに、日本でもガーブランド好きを公言し、MMA転向を表明している平本蓮も「まじでかっこいい」とつぶやいている。日本人選手では、同級の世界ランクに堀口恭司(元RIZIN&Bellator王者)、朝倉海、扇久保博正、田中路教らが名を連ねるが、UFCバンタム級戦線をどう見るか。
佐々木憂流迦を驚愕させたアルジャメイン・スターリングの一本勝ち。半身からの蹴りや回転系の打撃も繰り出し、「QUINTET ULTRA」では2階級上の五味隆典に一本勝ちしているショーン・オマリーらも今大会では鮮やかな印象を残している。
この日の「パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト」はガーブランドをはじめ、ベテランのエディ・ワインランドを右ストレートの一撃でKOし、戦績を12戦無敗としたオマリー、ランキング4位のコーリー・サンドヘイゲンを88秒リアネイキドチョークで極めた2位のスターリング、フライ級のアレックス・ペレスが受賞しており、さながらバンタム級祭りとなっている。
バンタム級では、ランキング1位のマルロン・モラエス、3位のピョートル・ヤンも上位で構えており、ヤンと6位のジョゼ・アルドによる王座決定戦も噂されている。まさに「黄金のバンタム」で、引退を表明したヘンリー・セフードが持っていたバンタム級のベルトを巻くのは誰か?
▼バンタム級 5分3R
〇ショーン・オマリー(米国)136lbs/61.69kg
[1R 1分54秒 KO] ※右ストレート
×エディ・ワインランド(米国)136lbs/61.69kg
日本のファンには、2019年12月の「QUINTET ULTRA」で2階級上の五味隆典に一本勝ちしたことで知られるショーン・オマリー。ホイス・グレイシーの弟子ジョン・クラウチを師に持ち、得意のハイエルボーギロチンチョークで五味を極めているが、MMAでは打撃でのフィニッシュも多く、LFA、DW's Contender Series 2017を経て参戦したUFCでの3つの勝ち星のうち、ひとつはUFC5勝2敗のホセ・キニョネスに1Rハイキックでダウンを奪ってのパウンドで勝利している。
対するエディ・ワインランドは、2013年に当時の王者ヘナン・バラォンに挑戦したキャリアを持つベテラン。2RバックスピンキックでKO負け後、水垣偉弥に勝利するなどオクタゴンで4勝4敗の五分。2019年6月の前戦ではUFCデビュー戦のグリゴリー・ポポフに右クロスで1RKO勝ちしている。
1R、右後ろ廻し蹴りを見せるオマリーは左ミドルを当て、右ストレート。ワインランドの詰めにバランスを崩して尻餅を着くが、すぐに立ち上がると左ストレート、さらに右アッパーのフェイントから右ストレート! アゴを打ち抜かれ後方に倒れたワインランドを見て、オマリーは深追いせず踵を返した。
25歳のオマリーは、これでプロMMA12戦負け無し(アマチュア9勝2敗)。元WEC王者をワンパンKOし、その印象を「特に何も感じなかった」とクールに語ったオマリー。ランカーとの対戦が見えてきた。
One shot is all he needs! 😳@SugaSeanMMA - have yourself a night! #UFC250 pic.twitter.com/OkvVFqvQmg
— UFC (@ufc) June 7, 2020