元UFC世界フライ級王者にして、ONEフライ級ワールドGP覇者デメトリアス・ジョンソン(米国)。2019年のGPでは若松佑弥、和田竜光、ダニー・キンガッドをいずれも危なげなく破り、優勝を遂げた。次戦では、現フライ級世界王者アドリアーノ・モラエス(ブラジル)が持つベルトに挑戦が決定している。
今回は、DJことデメトリアス・ジョンソンの驚異的なハードワークと犠牲について、その妻デスティニー・バーテルズが語った。
デスティニーは、まだジョンソンが駆け出しの総合格闘家だった10年以上前、レッドロブスターのレストランで同僚としてジョンソンと出会った。それ以来、ジョンソンの献身的な努力を間近で見続けてきた。
「レッドロブスターで知り合ったんだ。僕は当時まだアルバイトで厨房で調理をしていて、妻がウエイトレスだった。そこから知り合った」と、DJは当時を振り返る。
DJが記録破りの世界チャンピオンになり、ともに幸せな家族を築いた時も、その努力は続いた。ONE世界フライ級王座に挑もうとする今も、それは変わらない。
「彼の真面目さは他に比べる者がないほど。彼ほど一生懸命に、そして賢く取り組むことができる人を、他に知らない」とデスティニーは語る。
DJがUFCで世界タイトルを獲得し、新記録となる11回連続防衛を達成したのは、この懸命な努力のおかげだ。辛いフルタイムの仕事をしていた時でさえ、ジョンソンはファイターの夢を一途に追求した。そして、より懸命に取り組むほど、夢は現実に近づいた。
デスティニーは言う。「彼は目標を立てる。そして目標を達成するためにやるべきことを一つずつやっていく。何があろうと。目標を設定し、そこに到達するために必要な全てのものを洗い出すことができる。そういう決意と強い思いがあるの。そして、それらを実行して、達成することができる」
真面目さに加えて謙虚であることがDJをトップへ導いたと、デスティニーは思っている。
「彼が自我を押しやることができるのは、間違いなくトップに導いた要因だと思う。みんなが苦労していることだけど、彼は他人と比べて人生を生きようとしないの。自分の道をしっかり歩むことだけに集中できている。彼にとっては『自分の目標を達成するためにやるべきことをやるだけ。隣の人が何をしていようと気にしない』」
今や3人の子どもの父親となったDJの責任は大きくなっている。だがそれでもまだ、集中は途切れていない。選手としてのキャリアの中で、できる限りのことを成し遂げ、それによって引退後も、家族ができる限りよい生活を送れるようにしたいと思っている。
「“今年”と“去年”などを比べるのは好きじゃないんだ。素晴らしいプロモーションの一員になれて、そしてケガなく過ごせたことに、とても感謝しているんだ」
DJは続ける。「長い間続けているとわかるけど、多くのアスリートが(格闘技のキャリアを始めて)やって来ては『チャンピオンになりたい』と言うんだ。でも自分は“成功したい”だけ。長い間ずっとチャンピオンとしてやってきた。今もちょうどWGPでチャンピオンになったところだ。でも、まだONEフライ級世界王者にはなっていない。それは最終目標じゃないんだ。最終的な目標は毎年毎年、成功し続けること。それが僕にとって重要なことなんだ」
その成功のために、DJは大きな犠牲を払う必要があった。DJは大切な人や家族のイベントに行けなかったときに、いつも取り乱すという。だがデスティニーはこういったことが、グランプリ制覇を達成するなど、成功を続けていく上で不可欠なことだったと確信している。
「誕生日、結婚式、旅行やパーティー。彼はトレーニングで参加できませんでした。多くの人にとってはとても重要なことだと思う。でも私たちは、ポジティブに捉え、彼が目標を達成しようとしているんだと思うことにしている。こういった犠牲が勝利につながると示してくれた」
数々の成功により、多くのファンにとってジョンソンは史上最高の格闘家になった。デスティニーはもちろんその肩書に納得しているが、むしろ家族への責任感の強さを嬉しく感じているという。格闘家としてのキャリアがどれだけ重要な時でも、ジョンソンは父親として、そして夫としての役割をしっかりと果たしたいと考えてきたからだ。
「(史上最高と言われることは)正しいと思う。彼は素晴らしいと思う。でも、見方は人によってそれぞれです。私たちは必ずしもそういう生き方をしているわけではないけど、彼は驚異的。全てにおいて最高。パウンド・フォー・パウンドという肩書は彼にふさわしいと思う。でも私たちにとっては、人生のバランスが取れているというところに価値があると思う」
人生のバランスを大切にし、成功すること。そのためにさらなる大きな戦いに臨もうとするDJは、新型コロナウイルス感染防止のために、子どもたちとともに自宅で過ごしている。
「一緒に頑張ろう。家族とともにリラックスして、今この動けない時間をエンジョイするんだ」
末っ子にミルクを与えながら、DJは今日も自宅でトレーニングに励んでいる。(協力:ONE Championship)