フェイスオフ撮影でもホイスは桜庭を睨みつける
1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去4月にあった歴史的な試合や様々な出来事を振り返る。49回目は2000年4月11日に行われた『PRIDE GP 2000~世界最強決定トーナメント決勝大会~』の記者会見で、桜庭和志(高田道場)とホイス・グレイシー(ブラジル)が一触即発の険悪ムードとなった出来事。
(写真)桜庭が挑発した後、桜庭にガンを飛ばすホイス。桜庭はうつむいて無視する表情を作った
東京ドームで開催される決勝トーナメントの準々決勝で対戦が決まった桜庭とホイス。1回戦終了後にはホイス陣営が無制限ラウンド制へのルール変更を要求し、主催者側に無理やり呑み込ませたことでグレイシーに対する反感が高まっていた。そんな時期に行われた記者会見で“事件”は起こった。
「いつも彼らの条件を受け入れさせられているので、こっちの条件もたまには聞いてくれませんかね。勝った方がファイトマネーを全額もらうというのはどうですか?」
記者会見上、桜庭は「最初から言ってやろうと思っていました」というセリフを口にした。それを通訳がホイスに伝えると、みるみるうちにホイスの顔色が変わり、桜庭を睨みつける。
その返答としてホイスは「それはそれでいいと思う。私は構わない。誰が強いのかを決めるのなら、2人で密室の中に入り、勝った方が出てくるというやり方でも構わない」と怒りの表情で桜庭に“決闘”を提案したのだ。
しかし、これはホイスが意図したものと通訳が違っていた。後にホイスに確認すると「そんなことを言うなら、今この場で勝負してやる! 賞金も何もいらないならな。この部屋のドアを閉め、みんな外に出てもらい2人だけで戦って、勝った方が外に出てくる、それでいいじゃないか!」と、その場での決闘を申し込んでいたのである。
桜庭へ今にも挑みかかりそうな視線を投げかけ続けるホイスだったが、桜庭はうつむいて知らん顔。まさか、この場での対戦を迫られているとは夢にも思わなかっただろう。会見は終始険悪なムードで幕を閉じた。
フェイスオフ撮影ではどちらかが手を出すのではないかと一触即発の危険さが漂っていたが、桜庭は「いい試合をしましょう」と言ってホイスに握手を求める。ホイスも日本語で「ガンバッテクダサイ」と言ったが、桜庭は日本語で「お前こそ頑張れよ」と笑顔で言った。
会見後、桜庭は「こっちからも条件を出したかっただけ。(賞金マッチはやってもやらなくても)どっちでもいいですよ。受けてくれれば大金が手に入るんですけれど(笑)」と、ひとこと言ってやりたかった的な発言だったことを明らかにした。