【1998年4月の格闘技】チャンプアvsマンソン・ギブソンの遅きに失した最強外国人対決

　1986年10月に創刊され、30年以上の歴史を誇る格闘技雑誌『ゴング格闘技』が、秘蔵写真と共に過去4月にあった歴史的な試合や様々な出来事を振り返る。32回目は1998年4月26日に横浜アリーナで開催された『SHOOT the SHOOTO』から、ついに実現した大物外国人対決。 　日本を主戦場に活躍し、多くの名勝負を残してきたマンソン・ギブソン（アメリカ）とチャンプア・ゲッソンリット（タイ）がついに相まみえた。 　マンソンは1989年5月にシュートボクシングのリングに初来日。シーザー武志をKOする番狂わせを起こし、平直行や吉鷹弘ら若手エースたちも撃破した。さらにMA日本キックボクシング連盟にも参戦すると、ムエタイの現役ランカーをも得意のバックスピンキックやバックハンドブローでなぎ倒し、旋風を巻き起こした。そのスピードの速さから“黒い稲妻”と呼ばれるようになる。 （写真）前日記者会見ではチャンプアを無視するように背を向けていたマンソンだが、かなり意識していた　K-1のK-2グランプリにも参戦し、アーネスト・ホースト（オランダ）に敗れるもバックハンドブローでダウンさせ、延長戦までもつれるほぼ互角の戦いをやってのけた。 　チャンプアは1989年11月にUWFの東京ドーム大会に初来日。以後、キックボクシング団体で試合を行い連戦連勝し、1993年4月からはK-1に参戦。小さな身体でヘビー級に立ち向かい、黒星は多かったがファンのハートをつかんでいた。 　その2人がついに激突した――と言いたいところだが、試合が実現したのは1998年で2人の初来日からすでに9年が経っていた。選手としてはすでに下り坂で、数年前なら夢の対決として大いに盛り上がった試合になったであろうが、この時点では“古豪対決”となっていた。 　しかし、蓋を開けてみるとマンソンは全盛期に引けを取らない良い動きを見せた。上体を後ろに引き、片足を前に出したサイドキックスタイルで構え、クルクルと回転してバックスピンキックやバックハンドブローを放つスタイルは健在。チャンプアに付け入る隙を与えなかった。 （写真）相手を担ぎ上げて場外へ投げようとするマンソンの常とう手段　タックルから相手を高く担ぎ上げ、リング外に放り投げようとする仕草も以前のままだ。 　チャンプアも“黄金”と称された左ミドルや左ローキックを放って反撃するも、マンソンのスピードに付いていけず翻弄される形に。最終Rにはマンソンがバックキックを空振りするとそのまま一回転してのバックハンドブローでダウンを奪い、判定3-0で快勝。 　試合後、マンソンは「俺はムエタイ・キラーだ！ キングコングだってぶっ飛ばすぜ」と雄叫びをあげた。メジャーシーンでは活躍できなかったマンソンだが、格闘技ファンの間では今でもK-1レジェンドファイターたちと共に最強外国人選手として語り継がれている。