MMA
インタビュー

【GRACHAN】ONE王座戦直前の消滅から1年2カ月、鈴木隼人が復帰戦「もう1回、格闘技が出来る……考えただけでも涙が出そうです」

2020/02/27 15:02
【GRACHAN】ONE王座戦直前の消滅から1年2カ月、鈴木隼人が復帰戦「もう1回、格闘技が出来る……考えただけでも涙が出そうです」

GRACHANフライ級のベルトを肩にかける鈴木。GRACHANには約3年ぶりの帰還となる。

2020年3月1日(日)大田区産業プラザPIOにて「GRACHAN43×BRAVE FIGHT22」が開催される。

同大会で1年3カ月半ぶりにMMA復帰戦に臨む鈴木隼人(BRAVE/初代GRACHANフライ級王者)のインタビューが主催者より届いた。

鈴木の試合は、2018年11月17日のONE Championship(ONE)以来。

GRACHANやBRAVE FIGHTなど国内で16勝2分の負け無しで、2017年8月からONEに参戦した鈴木は、ONEデビュー戦で後のストロー級王者ジョシュア・パシオにリアネイキドチョークで一本勝ち。2戦目こそアレックス・シウバの腕十字に一本負けも、2018年には1月に元タイトルコンテンダーのヤゴ・ブライン、10月にロビン・カタラン、11月にポンシリ・ミートサティートをいずれもリアネイキドチョークで極めて3連勝を飾るなど、タイトルマッチ目前の状況にあった。

しかし、王座戦前のMRI検査の結果、頭部の嚢胞が確認され、パシオへの挑戦者が猿田洋祐に変更。猿田が王座を奪取していた。

鈴木はその後も国内で再検査を行い診断書を提出するなど、復帰に向け症状を報告。同時にONE本戦出場を目指す妻・鈴木祐子をサポートしてきたが、自身のONE出場見込みがなくなったため、日本マット復帰を模索。所属ジムのBRAVEとGRACHANの共催大会での試合に臨むことを決めた。今回の単発での試合を経て、国内メジャーマット参戦に繋げたい考えだ。

BRAVEジムの宮田和幸代表とともに今大会を共催する岩崎ヒロユキGRACHAN代表は、鈴木隼人の出場について、「新たな診断書も確認し、鈴木選手が1年4カ月試合を行わずダメージを負っていないこともあり、何より本人の復帰への熱い想いを受けて今大会の出場となりました。鈴木選手は初代GRACHANフライ級王者ですし、GRACHANとの縁も深く、今後のリスタートのきっかけになればと考えています」と語っている。

インタビューでは、鈴木がONEでの王座戦直前の消滅、一時は精神的に自暴自棄になったところを妻の鈴木祐子の言葉と行動に励まされたこと、RIZINストロー級参戦を望んでいることなどを語り、復帰戦で「僕が1ラウンド、バックチョークで一本勝ちすると思います」と完全勝利を予告。「これが再スタートとして新たな鈴木隼人として、素晴らしい試合が出来るように、精一杯頑張ります」と意気込みを語っている。

鈴木「嫁には結果で示してもらってるんで、僕も格闘技これで終わっても終わりきれないんで頑張ろうって気持ちにさせてくれてます」

──ONE Championshipで試合をしてから、今回の復帰戦まで時間が空きました。最後は……。

「1年ぐらい前だと思います、2018年の11月が最後です、ジャカルタが最後です」

──ONEでのタイトルマッチ(2019年1月19日のジャカルタ大会でストロー級王者ジョシュア・パシオに挑戦する予定だった)が無くなったのは何日前のことでしたか。

「20日前くらいです。最初に『検査してくれ』ってなったのが、試合の1カ月くらい前に言われました」

──では、12月20日前後に急にMRIなどを撮りに行った。何か前触れはあったのですか。

「僕自身、何も異常も分からなく聞いてもいなくて、症状も何もなかったです。ONE Championshipは(のう胞があることは)ずっと知ってましたので、契約した時に、1試合ごとにMRIを提出、CTスキャンで取りに行くので、それまでに5回は撮ってるんで、その時にずっとあると思ってたみたいです」

──タイトルマッチが中止になった時の気持ちを教えてもらえますか。

「最初、病院を回ってる時で、『試合が無くなるかもしれない』って話になった時に、“そんなのある訳がない!”ってちょっとバカにしてる感じだったんです」

──悪い夢を見ているような。

「半分半分です。本当なのか嘘なのか。でも自分じゃ“まぁ余裕だろ”みたいな感じもあって。“できないわけがない、どこも元気でやれてるんだから”と思って、人生で初めての感情って言うんですかね、怒りでもないし悲しみでもないし、どこにぶつけて良いのかも分からないし、人に何を言えば良いかも分からないし、自分でどう今を生きてれば良いのか、と人生で初めての感覚でした。

“僕は元気だからそんなわけないだろ”って思って、MRIを撮り行って、病院を出た時にONE Championshipのホームページを見たら、なんか僕じゃなくて『(ジョシュア・パシオの挑戦者が)猿田(洋祐)に決定』ってなってたんで、“あれ、俺出られねぇの?”っていう風に突然なって。誰からも知らされることなく、一番最初に知ったのが、自分自身でホームページを見て知ったんで、“えっ、本当かな”って周りに確認したら“すみません”みたいになっちゃってて。“嘘だろ”と思いながら、パシオと猿田選手のタイトルマッチが終わるまでは、まだ自分が出られる可能性があるんじゃないかなって思ってずっと思ってました。試合見てる時も複雑な気持ちでした。“あれ? 本当に俺できないの? なんで試合やってないの?”みたいな感じがずっと続いてましたね」

──悪夢から覚めて、現実を受けとめたのはいつですか。

「ぶっちゃけて言うと最近ですね。完全にONEが『あなたは出られません』って完全に切ってくれたのが最近だったんで。最近までは“なんとか戻れるだろう、戻ったら一発タイトルマッチできる”っていう口約束もあったので、(挑戦者)『第一人者は鈴木隼人だ』って言われてたんで。

何回かMRIを出したり、診断書を出したりっていうのは、もう本当に4、5件回って、英文ももらって日本語ももらって全部提出したんで、“まあやらしてくれるだろう”と思ってたんですけども、自分でやるだけはやって、もうだめだってなって諦めた時には“もうやっぱ俺だめなんだな”って思いましたね。そこで自分でいったん落ち着いたじゃないですけども、ここでONEを切ろうって、初めて自分で踏ん切りがついた感じですかね」

──このモヤモヤした期間をどう過ごしてましたか。

「練習はもう……僕の場合、試合が決まったから練習を上げるとか下げるとか、そういった上げ下げもなく、淡々と毎日メリハリつけて、自分で気持ちを高めてやってくタイプなので、試合が無くても、『3日後に試合』って言われても、いつでも出られるような感じで練習は毎日やってたし、周りのみんなを見ても分かるように、練習はBRAVEのプロ練習もそうだし、夜の練習もそうだし、色んな選手と変わらず日々やってました。私生活も変わらずですね。食事も元々減量も無いタイプなので、好きな物を好きな時間に食べてっていう感じで。

みんなが居ないところでは愚痴だったり文句っていうか、“うわっ、なんなんだ”って自分を責めるみたいな、すぐ投げやりになっちゃうっていうのはありました。やっぱり嫁(鈴木祐子)と一緒にONE Championshipに出るって目標があって、僕がこんな形でダメになっちゃっても、嫁はずっと頑張ってやって今でも頑張ってるし、色んな面で言葉だけじゃなく、行動でいろいろ励ましてくれてましたね(ONEの登竜門大会「ONE WARRIOR SERIES」で2勝1敗)」

──総合格闘技を一緒にやって、一緒にONE Championshipに出るっていうストーリーがあった。

「一番はタイトルマッチが無くなった瞬間、もう、何て言うんだろうな気持ちが萎えちゃって……“俺が死んだら、もうONE Championshipとか皆、分かってくれるかな、死んでまで出たかったんだぞ”っていう、もう何言ってもダメだったんで、自分が死んじゃえばこんだけ僕がそれに賭けてたっていう気持ちが伝わるかなと思って、嫁に言ってたんですけど『何言ってんの、バカじゃないの』って終わって。でも、本当に一人で格闘技頑張ってる身だったら、本当に無い話じゃないかなとは思ってました。そんだけやれば格闘技界ひっくり返るかなんかあっかな、みたいな野望っていうか、その時は憎しみが多い感情だったとは思うんですけど、そんなのがありましたね。

出られなかったことに関しては、ONE Championship運営側には“なんでだ?”っていう、まあ”誰のせい”ではないですけど、そういう感情もありました。(のう胞は)僕の頭の中が生まれつきある物なんで、まぁ電話で両親とか母親も泣きながら『ごめんな』とか言われましたけど、でも母親が悪いわけでもないし、僕が悪いわけでもないし、まぁ言ってみればONE Championshipでもすごい夢も見させてもらったし、活躍もさせてもらってたんで、悪いとかそういうせいにはしてないですけど、まあそれが僕の運命だったんだなっていう感じで、自分の心殺してまででも納得するしかないのかなとは思ってます」

──苦しいときに心を支えてくれたのは奥様だった。

「最初に僕がONE Championshipと契約して、セコンドに嫁を連れていったときに、嫁も『ここに出たいな』って。やっぱり素晴らしい舞台だったんで、ここを目指して頑張りたいっていう気持ちが芽生えたんで、僕の試合をセコンドで同行するうちに嫁も『ここに出たい』ってなって。『出るならば、いきなりは出られないんだよ』って。ONE WARRIOR SERIESっていうところで実績を残せば、ONE Championshipに上がれる舞台がある。『そこから始める』ってことで、僕がONE Championshipに出ながら、嫁はそのWARRIOR SERIESで勝ちを続けて、お互いに頑張ってNE Championshipに出ようって感じになってました。僕の頭の件でつまづいてる時に、嫁が2試合連続一本勝ちで勝ってくれたんで、そういった部分では嫁には、そういう結果で示してもらってるんで、僕も頑張ろうって気になれるし、やっぱまだまだ、格闘技これで終わっても終わりきれないんで頑張ろうって気持ちにさせてくれてます」

──MMA20勝1敗1分け。あらためて見てもすごい戦績ですね。ONEでも白星はすべて一本ですね(ONE4勝1敗)。

「白星は全部一本です。1ラウンドで極めました。その時はもうメンタルやばかったです。1人であっちに行って言葉も分かんない外国人と、周りも僕が勝つか負けるかも分からないみたいな状況で。でも日本の皆からは僕が勝って当たり前だと思われてて、その状況ですごいプレッシャーでやって、試合前とかも宮田先生が仕事で来れない時とかは、ずっと今こういう状況でこうですみたいに報告して、励ましてもらいながら試合してたんで」

──今回試合で新たな目標などもできましたか。

「格闘技の中でこれといった……『ONE Championshipのベルト』のような具体的な目標は今のところ無いし、僕が今どの舞台でどうなれるのかって確信が無いんで……。今は『僕はやれるんだぞ』っていうのを周りに見てもらって、“やっぱり鈴木隼人、強かったな”っていうのを、日本でも納得させて、どんどん大きな舞台、一般人の方でも分かるくらいな大っきな舞台に出たいですね。たぶん、僕がONE Championshipのタイトルマッチが無くなって、1年ちょっと出てなくて“あー、もう鈴木隼人出られなくて格闘技(人生が)終わったんだな”って思ってる人がほとんどだと思うんで、ここで一発分からせてあげたいって気持ちはありますね」

──試合が決まった時の心境を教えてください。

「ONEがダメで、いきなり日本の一番でかいRIZINとかに、そのままスライドして出たかったんですけど、やっぱりそういうわけにも行かないんで、今回、BRAVE FIGHTとGRACHANの合同の大会でやれるっていうことで、僕を使ってくれる皆さんに感謝して、純粋な気持ちでリングに上がれるっていうのが、もう1回、格闘技が出来るっていうのが……考えただけでも涙が出そうですね。やっぱり、いままで出られなかった1年ちょっと、後輩たちがだいぶ活躍してきて、タイトルマッチのセコンドに入ったり、様々なサポート側に回っていたので“このまま終わるのかな”っていう思いもあったので、“次は僕が出る番だ”って考えただけでもワクワクしてます」

──対戦相手の加マーク納選手印象は?

「印象が……ありません」

──どんな試合展開になると思いますか。

「僕が1ラウンド、バックチョークで一本勝ちすると思います。正直、名前も戦歴も知らなくて、試合が決まってちょっと経って発表されたら、後輩の竿本樹生が(加マーク納)と試合をやっている(2018年5月のZSTで竿本が判定勝ち)ことを知り、樹生のセコンドについたはずなのに覚えてませんでした。だから印象は無かったです。決まってから映像を見て、“そういえばこんなのかな”っていう感じです」

──久々の試合でプレッシャーなどはありますか。

「特に無いですね。プレッシャーというよりは、ちょっとしたやっぱり(久々の試合になった)悲しみが多いですかね」

──いまのGRACHANの印象は?

「いまのGRACHANに関しては、敵がいない。僕が絶対王者的な感じかなとは思ってます。GRACHANのベルトを持って、他の団体に行っても負けるやつはいないかなって思ってます」

──GRACHAN現フライ級チャンピオンの松場貴志選手については?

「松場選手には興味がないです」

──日本で試合が決まった時の周りの反応はいかがでしたか。

「『格闘技出来るんだ、おめでとう、頑張って』っていう感じですね」

──応援してくれる人にどんな試合を見せたいですか。

「やっぱり僕の代名詞のタックルからのバックチョーク、そこの一点ですね。タックルで取れなかったやつ、今まで本当いないんで、タックル取って、後ろ回ってチョークっていうかんじで、(これまでも)相手が分かってても極めてきてたんで、相手がどんな対策しようがこれで行くんで、それを魅せつけたいですね」

──ここからの鈴木隼人はどのようなストーリーを創っていきますか。

「一番はやっぱり日本で一番でかいRIZINに出て、軽量級をかき回したいじゃないですけど──いまのRIZINって打撃に固執して、ちょっと寝技が目立たない所があるんで、ファンもその方が良いんでしょうけど、寝技のズゴさっていうのも見せたいなっていうのはありますね」

──いまRIZINに出場している同階級の選手に対しては?

「負ける気はないですね。階級にもよるんですけど、僕が狙ってる53(kg=ストロー級。フライ級より階級下)とかの、そこらへんのだったら全然僕の方が勝てると思います(ジャレッド・ブルックス、越智晴雄、砂辺光久らが参戦)。あとはもう、いろんな団体が僕を頭の件でダメだって言ってくれたら、潔く引退はできます。でも、まだちょっとでも出られる場所とか、出られる可能性があるんだったら、やっぱりやりたくなっちゃうんで。

自分で仮に30歳までで終わるとか、ここまでで終わるって決めれば、いくらどの位置にいても辞めれるとは思うんですけど、僕はもう全人生の腹くくって友達も捨ててきたぐらいの感じなんで、それで布団と練習着だけ持って三郷のBRAVEジムに住み込み始まって、もうそっからどんどんどんどん練習して勝ってこれだけに賭けてきたんで。もう本当に、自分の身体が出られるまで、本当に40歳、50歳でも出てやろうと思ってたんで、それがダメでも何かしら格闘技を選手という形で生活にしていきたかったんですけど、いまその可能性がちょっとでもあるなら、細々でもなんとでもやってこうかなっていう頭の切り替えができてきたんで、(戦う)場所があれば生活できるくらいやってこうかなと思います」

──闘いが好きですか? 格闘技が好きなんですか?

「もともと喧嘩とか相手と戦うとかは好きじゃないです。痛かったり、キックだパンチだって、なんか痛いのは好きじゃないです。ただ、格闘技が面白いのは、相手と武器も何も持たず、1対1で自分の身体を使って、色んな戦術やフェイントや色んなやりとりの駆け引きがあって技が成り立って、その駆け引き、微妙な駆け引きが僕は好きです。力任せで勝つってやり方もあるんですけど、力よりもそういうタイミングだったり技術だったり、ちょっとしたミスを僕が突く、そういう風なアスリート的な戦いが好きです」

──鈴木隼人を知っている人にメッセージをお願いします。

「いままで色々足踏みしちゃって、いまここまで来ましたけど、僕のハートはまだ終わってない、どんどん進化もしてるんで、僕にもっともっと注目して日本の格闘技界もっともっと掻き回したいと思いますね。『僕のこと忘れんじゃねー』そう思います。“俺を使わなかったやつはザマーミロ”って言ってやるっていうのはあります。もしもこのままRIZINに出られなかったら、日本の違う所でRIZINよりも俺が盛り上げて、俺が強いっていうのも証明したい。格闘技始めてからずっとトントン拍子で進んできて、ここ1年足踏みしちゃったけど、これが再スタートとして新たな鈴木隼人として、素晴らしい試合が出来るように、精一杯頑張ります」

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