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2026年11月8日(日)千葉・LaLa arena TOKYO-BAYにて『abc presents RIZIN.55』が開催されている。
メインは神龍誠vs.トニー・ララミーの「フライ級タイトルマッチ」、セミは井上直樹 vs. イリスベク・ティレノフの「バンタム級次期挑戦者決定戦」が並んだ。本誌『ゴング格闘技』では、大一番に臨む神龍誠に続き、井上直樹に単独インタビューした。
▼第12試合 RIZINバンタム級(61kg)次期挑戦者決定戦 5分3R
井上直樹(Kill Cliff FC)21勝5敗
イリスベク・ティレノフ(キルギス/Ihlas)8勝1敗
井上は、2017年に日本人最年少の19歳でUFCと契約。その後フライ級縮小の余波でUFCを離脱。20年2月にRIZIN初参戦。24年9月に、朝倉海が返上した王座をかけ、キム・スーチョルと対戦し、1Rパンチ連打でマットに沈め、第7代王座についた。
25年3月、元谷友貴と再戦し、かつて1度も防衛されていないRIZINバンタム級王座の初防衛の快挙を達成。7月、DEEP王者の福田龍彌を挑戦者に迎えると、その類稀なファイトIQと精緻な打撃技術を光らせ、完封勝利を挙げ、V2に成功。
大晦日、ダニー・サバテロを相手に3度目の王座防衛戦に臨むも、1Rに肋骨を傷め、終盤に失速。接戦を落として王座陥落した。
6月に29歳になった井上は、2017年当時、史上最年少の19歳でUFCと契約してからの10年を「あっという間でした。20歳になって4日ぐらいでUFCデビューして。いまは当時とは打撃のレベルもすべての技のレベルも全然違うし、新しいことも取り入れてきている」とその進化を語る。
日本に主戦場を移しても、常に「vs.世界」を見据えてきた。
「RIIZNにはずっと『強い外国人選手と試合をさせてください』と伝えてきました」
2026年5月に北米PFLに乗り込み、PFLバンタム級トーナメント2025王者のマルシレイ・アウベス・ダ・シウバと対戦。序盤にフラッシュダウンを喫した井上は、アウベスのスイッチに戸惑いがあったという。
「これまでの試合ではほぼサウスポーで構えて、最終ラウンドにオーソにした試合も見てきたんですが、僕との試合ではもう1ラウンド目からオーソで来た。パンチが当たっても怯まないで前に出続ける、ビビらない強さ、ずっと向かってくる強さもありました」
左前手フックを振って詰めて来るアウベスをさばく井上。右を振ったところに、オーソに構えたアウベスはいきなりのショートの右を合わせて井上からダウンを奪った。右手と片ヒザをマットに着きながらもすぐに立ち上がり、スタンドで作り直す井上。
鼻から出血し、ポイントを先行されるなか、それでもいかに打撃を効かせる展開を作るかをセットアップしていた。
「試合直前にもセコンドと話してたんですけど、『1、2ラウンド取られたとして、3ラウンド目に倒しに行かないといけないって時こそ、自分の距離を保って倒そう』と。どうしても焦って行くと距離が近くなってしまう。そこを耐えて自分の距離でしっかり当てられるように、っていうことを話していたんです」
アウベスが強い左オーバーハンドをサウスポー構えからガードの上に叩いてくる。それをステップとブロッキングでかわした井上は、オーソに戻したアウベスにワンツーの右をヒット。押し戻すアウベスが右から左をアッパー気味に振ったところに、左から右、そして左フックのコンビネーションをカウンターで当ててダウンを奪い返した。
「あれも練習してたやつだったんです。ワツー打って、下がってフック。あれが当たる間合いで打った」
バタン、と音を立てて横倒れにダウンしたアウベスに井上はラッシュ。しかし被弾しながらもアウベスは立って左を振ってきた。井上は左の打ち合いをヒットさせジャブも当てるが、アウベスは下がらない。それをさばいてワンツーヒザで前に出る井上にアウベスがクリンチし、ゴングが鳴った。
我慢の展開のなかでダウンを奪い返した井上。もしその誘いに相手が来なかったら? と聞くと「来なかったら行くしかないですね。自分からテイクダウン行ったり」と、手札はほかにもあったという。
判定は2-1で井上が勝利したが、激闘の代償は大きく、RIZIN7月大会でのサバテロとの再戦は見送られた。今回が約半年ぶりの復帰戦で、その試合はタイトル戦ではなく、キルギスの強豪イリスベク・ティレノフという厳しいハードルが設けられた。
「次はタイトル戦だと考えてましたし、そう言われてました。だからもう最初と言ってること違うじゃん、て思いながらも“榊原選手”に一本取られました」と苦笑する。
井上と対するティレノフは、ラジャブアリ・シェイドゥラエフの同門で、Snow leopard (ユキヒョウ)の異名を持つキルギスからの新たな刺客だ。
10歳からレスリングを始め、22年10月、ウズベキスタン開催のATFでプロMMAデビューすると、25年9月には、のちに福田龍彌をKOに下すアジズベク・テミロフをグラウンドコントロールし、最終回にはチョークを狙うなど攻勢を貫き、判定勝利を収めている。
26年4月にはウズベキスタンでONE出場経験のあるファリド・アリババザデに判定勝ち。7月にRIZIN初参戦を果たすと、太田忍を2Rにヒザ蹴りでKO。試合後には「ラジャブアリ・シェイドゥラエフに続いて、自分が61kg級のベルトを取るので、サバテロ選手、待っていてください」と王座挑戦をアピールした。現在、破竹の7連勝中だ。
そのティレノフについて、井上は「身体が強い。ゴリゴリな感じのレスラータイプでもないけど、ちゃんと芯を持ってる。あんなに大きく振って、普通だったら軸がブレれたりするのに、返しの打撃もしっかり打てる。そういった“変な強さ”に気をつけないといけない」と警戒する。
“絶対距離”からの精度の高いジャブ&ロー、カウンターを誇る井上に対し、ティレノフはパワフルで一見粗いが、柔らかさを伴い伸びてくるパンチ、高いフィジカルを持ちながら高地出身らしく、後半にも強いスタミナを持つ。
太田忍にも組み負けないティレノフのグラップリングについても井上は、「レスリング系で言ったら、普通サイドバックから殴ったり倒すとか、そういう“地獄を味合わせる”系かと思いきや、足を入れてバックを取るにくる。柔術的な動きも持っていながら、そこには“雑さ”もある」と、組みでもセオリーとは異なる強さと、突くべき点があるとした。
勝者は早ければ、大晦日に王者サバテロとの王座戦が組まれる可能性があるが、「手ごわい選手だと思うので、大晦日のことなんて考えている場合じゃない」と、“絶対王者”シェイドゥラエフに続くと言われるティレノフの進撃を止めるつもりだ。
「22歳ですよね、彼。若くて勢いはあると思うんで、そこの勢いに飲み込まれないよう、しっかり自分が29歳の丁寧さを持って戦って勝つ」──井上直樹は、三十路を前に、立つ。







