2019年11月7日、瀧澤謙太(EXFIGHT)が11月10日(日)の「PANCRASE310」スタジオコースト大会に向け、所属ジムで公開練習を行った。
9月1日の「Road to ONE:CENTURY」新木場大会で、10月13日の「ONE:CENTURY 世紀」両国国技館大会の「修斗vs.PANCRASE」前哨戦となる対抗戦を行った修斗とPANCRASE。結果は、PANCRASEが0勝6敗と白星を挙げられずに終わったが、10月の両国大会での王者対決では2勝2敗の痛み分けに終わっている。
その両国大会後にも対抗戦の火種は広がり、11月10日(日)の「PANCRASE310」に引火、修斗世界フライ級2位の石井逸人(TRIBE TOKYO M.M.A)がPANCRASEに参戦し、PANCRASEバンタム級3位の瀧澤謙太(EXFIGHT)と対戦する。
瀧澤はPANCRASEバンタム級のホープ。2018年にハルク大城とTSUNEに2連続KO勝ちし、2019年3月17日の「PANCRASE 303」ではバンタム級暫定王者のハファエル・シウバ(ブラジル)が持つベルトに挑戦。1R 3分22秒、リアネイキドチョークで一本負けし、王座奪取に失敗した。
その後、6月の再起戦では瀧澤と対戦予定だったリッキー・キャンプが「親族に不幸があり」試合を辞退。急遽、対戦相手がキルギスのダスタン・オムルザコフに変更されたものの、前日計量で6.95kg差が発覚。いったんは無差別級戦として行われることが発表されたが、試合直前に「オムルザコフがメディカルチェック(血液検査)を通過せず、選手が安心して安全に試合ができる環境が担保できなかったため試合は中止」と主催者が発表。
デカゴンのなかで瀧澤は「計量前日の夕方の5時半にリッキー・キャンプ選手が来日しないという連絡が入り、『71kgの契約で、10kg重い契約だったら、キルギスのダスタン選手を用意できる』と言われ、急きょ、試合を飛ばすわけにはいかないし、応援してくれているファンの皆さん、スポンサーしてくれている皆さんの気持ちを裏切るわけにはいかないので試合を受けることにしました。7kg差というので、僕はもう関係ないと思って、どうなろうが必ず倒してやろうと思っていたんですけど、血液検査を通っていないと、今の試合の2試合前に聞いて、もうバンテージも巻いて準備万端に備えてきたのにすごい悔しいです」と、涙を流しながら無念の想いを語っていた。
「次、ランキング上の選手、やってない選手」としてハファエル・シウバvs金太郎の勝者(シウバが2R TKO勝ち)との対戦を希望していた瀧澤だが、今回、ランキングは上でも別団体・修斗の世界ランク2位の石井逸人との対戦が決定した。瀧澤にとっては真価が問われるマッチアップだ。
新しい環境を得た瀧澤は公開練習で、高谷裕之が持つミットに打撃を打ち込むと、「僕からしたら(石井は)相手じゃない。1R目から何もさせずに圧倒して、最終的にはKOします」と語った。
──瀧澤謙太選手は6月の試合が飛んだため、3月以来の試合になります。調整具合はいかがでしょうか。
「調整はかなりいいですね。順調に調整できました」
──今回、修斗世界フライ級2位の石井逸人選手との試合が決まり、どのように感じましたか。
「まあ、(対戦候補が)3人目くらいだったんですよね。もう誰でもいいやと思ってたときに、石井逸人選手で。修斗では若手で勢いがあるからちょうどいいかな、という感じですかね」
──PANCRASEでベルトを目指して外国人選手との試合も多くなってきたタイミングで、厳しい日本人選手との対戦ということについては、どうとらえていますか。
「なんか、試合発表と同時に結構『面白いカードだ』とか騒がれて、僕にとっては“そんなに注目するカードなのかな”という感じでした。このあいだ生で試合も観て……僕の高校の同級生のSA$KEの試合の応援で後楽園に行ったときに、ガッツ天斗選手と(石井が)試合をして(石井が判定勝利)いて、“ああ、この子が修斗の若手の選手なんやな”と思ったんですけど、まあ僕からしたら相手じゃねえなって(苦笑)、思ってたんで。まさか当たるとは思わなくて。まあ当たって、こんだけ注目してもらえてラッキーだなという感じですね。やりやすいと思います」
──観たときはあまり印象に残らなかったと。選手としてはどのように評価していますか。
「この間の試合しか生では観ていなくて。そんときはまあ、寝かせたら強い。コントロールは上手い。でもそこにいくまでがまだまだだなと。僕だったら1Rで倒せるなと自信を持っています」
──その相手に例え寝かされても立つことはできそうですか。
「立つことができますし、寝かされることはないと思います」
──本日、昼間の石井選手の公開練習では、「お互いやりたいことが対極で向こうは打撃でこっちは寝技。一方的な試合で速い展開で極めて終わらせます」と語っていました。
「『圧倒される』ことはないですね。僕が負けるとしたら、なんか滑ってコケて(笑)、後ろ向いたときに首を獲られるくらいじゃないですか……。いま、ほんとうに練習を追い込んでいて、違う環境で新しい指導者の方と触れ合って、指導していただくことで、自分の頭のなかの考え方が柔らかくなって、そこがすごく伸びました。戦い方のスタイルも変わりましたし、以前の僕とは比べものにならないくらい強くなっていると思います。
この間の北田(俊亮※2017年8月・瀧澤が2R TKO勝利)戦とかは、練習を積んでも自分で理屈がわからないまま本能的にやってた部分があって、それを細かく噛み砕いて、自分がどういう距離感でどういう体勢で戦うのか、いまやっとピントがあった感じです。あの試合やああいった場面は、自分のコンディションによって、できるときとできないときのムラがあったんですけど、いまは1R目の1秒目から空間を作れる。あのスキルを最初から出せるように頭のなかで理解できました。
自分の試合を自分で見て、練習でやってない新しい動きが、ポンと試合で出ているときがありました。それをいまの状態で復習で見ると、そのときはたまたま出たのを、いまは必然として出せるように練習してきました。だから1R目からかなりいい状態で動ける自信があります」
──覚醒したと?
「進化しました。今回の試合でたぶん見せられると思います」
──今回の公開練習でも高谷裕之選手にミットを持ってもらいましたが、岡見勇信選手らもいるこのジムでどのような選手と練習をしているのですか。
「8月くらいからここでプロ練習は、今度のDEEPにも出るレスリングの強い高野優樹選手、修斗の環太平洋フェザー級チャンピオンの高橋遼伍選手、9月に修斗で藤井伸樹選手と対戦した齋藤翼選手(藤井が判定勝利)らと練習して、平日の夜は、高谷選手のクラスにも出て、DEEPの石神(保貴)選手やプロ候補生が自分に当たってくれる感じです。高谷選手に追い込んでもらっています」──その成果が試合に出ると?
「はい。普通にやれば1Rで倒せると思います」
──高谷選手のミットや高橋遼伍選手らとの練習で一番変わったのは?
「うーん……重心のかけかたですね。重心が浮くとやっぱりタックルを取られしまうので、前足で距離を取るようになりました」
──ハフェル・シウバ戦の課題ですね。
「はい。あれも重心がハッと浮いたときにダブルレッグに入られました。あのタイミングで入ってくるとは全く思ってなかったんです。相手が一歩遅ければ僕がバチコンとヒザを当てていた。あの浮いた動きがダメと決定的に分かったので、それはもう、何の攻撃を打つにしてもあの瞬間を作らないようにする練習をしてきました」
──それは跳びヒザを含め、瀧澤選手の持ち味を消す形にはならないのですか。
「蹴り技が得意な自分が、あの重心ではない、浮わつきの無い蹴り方を打てるし、それでも倒せる自信があるので、MMAの打撃です、完全に。キックの選手は棒のように腰を入れて打つんですけど、それをしない。空手のような重心を落とした蹴り。そして破壊力もある蹴りを打てるように練習してきました。だから、いままでも僕は蹴り足を取られたことはないんです。蹴り足取られる心配は僕の場合は無くて、いまは蹴り終わりも重心が浮いていないので大丈夫。相手が組んでくることをずっと想定して穴を埋めてきたので。相手が僕に勝つしたらどうやって勝つのかを徹底的に詰めてきた自信があります。
そのせいで近い距離で戦えるようになりましたね。やっぱり高野さんのようなトップレスラーとやって寝かされないようになったので、そこが強みです。寝かされたとしてもそこで立てる。だからフルスイングで打ったら……と想像すると、試合が楽しみですね」
──今回の試合は、10月の「ONE:CENTURY 世紀」両国大会の「修斗vs.PANCRASE」の対抗戦の流れのなかで見られることもあると思います。
「まあ、メインでPANCRASE対修斗っていう画になっているので、負けるわけにはいかないですよね。これでメインで負けたらどうしようもないので。とりあえず仕事をしっかりして、倒して盛り上げるだけですね」
──PANCRASEを主戦場に戦ってきた瀧澤選手のPANCRASE愛は?
「PANCRASEが一番最初に『世界標準』を掲げて、世界に通用するファイターを上げるために、海外からも選手を呼んでいますし、国内で一番強い団体だと思っているし、そこでずっとやってきたんで、完全実力主義だと思います」
──どんな試合になりますか。
「スカッとKOしたいです。通過点です。ここで勝って終わりじゃない。とりあえずキレイにスカッと勝って盛り上げたいです」
──その先を見据えている?
「そうですね。またハファエルとやりたいと思ってます。それはマッチメーク次第で。この間の春日井(たけし)選手とヤマニハ選手の試合もヤマニハ選手が勝って(判定勝利)、逆に安心したというか(※2016年1月に瀧澤はヤマニハに2R TKO勝ち)」
──PANCRASEバンタム級の混戦については?
「楽しいです。自分の実力は上がったと思っているので、まあ大丈夫かなという感じですね。僕にとって、あのハファエル戦はやっちまったなという感じなので(苦笑)。この間、ハファエルは(佐藤将光に)負けたし、ハファエルをブッ飛ばしたいですね。1Rでブッ飛ばしてくれると思ってたのに……体調悪そうでしたね。(計量方法が異なる)水抜きの問題だと思いますが」
──この試合を楽しみにしているファンにメッセージを。
「皆さん僕と石井選手の攻防を楽しみにしていると思いますが、もう1R目から何もさせずに圧倒して、最終的にはKOします。応援よろしくお願いします」
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