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【ONE】ナラントンガラグ以来11年ぶりモンゴル人王者誕生! バータルフーがアンドラージに一本勝ちで新王者に。アリーフがオンダッシュからダウン奪う判定勝ちでプラジャンチャイに挑戦へ、ジエゴ・ヘイスが米倉大貴に判定勝ちでフライ級SUB世界王者に、ペッディージャーがTKO圧勝、ジャイルズがマルセリーニョに一本勝ち引退、ホルミルザエフが6連勝! 鈴木真治が判定負け

2025/12/06 11:12
ONE Fight Night 382025年12月6日(土)タイ・ルンピニースタジアム※U-NEXTにてLIVE配信 ▼メインイベント(第8試合)ONEバンタム級(-65.8kg)MMA世界選手権試合 5分5R×ファブリシオ・アンドラージ(ブラジル/Evolve MMA/Tiger Muay Thai/王者)[4R 1分33秒 リアネイキドチョーク]〇エンク・オルギル・バータルフー(モンゴル/Team Tungaa/挑戦者) アンドラージはMMA10勝2敗、中国のクンルンファイトや武林風でキックやムエタイを戦ったストライカー。2020年7月のONE参戦から5連勝し、2021年2月には佐藤将光に判定勝利し、実力を証明した。2023年2月にジョン・リネカーに4R TKO勝ちでONEバンタム級王座を獲得している。2023年11月にはジャナサン・ハガティとキックボクシングバンタム級王座を争い、2R TKO負け。1年11カ月ぶりのMMA戦となった2025年1月のクォン・ウォンイル戦で42秒TKO勝ち、初防衛に成功した。 バータルフーの師匠は、K-1 MAXや戦極、LFCで活躍後、2014年8月にONE FC 19で大石幸史に判定勝ちで王座を獲得したジャダンバ・ナラントンガラグ。  その弟子であるバータルフーは『ONE Friday Fights』で2連勝し、2024年8月に本戦デビュー。2023年8月にジャンロ・マーク・サンジャオにキムラロックで一本勝ち。2024年1月にアルテム・ベラーには跳びヒザからの連打でTKO負けも、2024年8月にカルロ・ブーミナアンを肩固めで極めて再起。2025年1月にはアーロン・カニャルテを1Rで再びキムラに極め、3月にはジェレミー・パカティウに判定勝ちで3連勝中。  1R、サウスポー構えで入るアンドラージ。バータルフーは詰めて左右からコーナーに右で差して押し込む。左オーバーフックのアンドラージ左手は差させず、横に動いて崩して投げ飛ばす。  すぐに組みつくバータルフーはダブルレッグ。差し上げるアンドラージはヒジも狙うが、より近い間合いでヒットさせないバータルフーはなおも右で差してコーナーに押し込み。両差しにして崩しに行くが、そこで体を入れ替えたのはアンドラージ。  右のショートから入るバータルフーにアンドラージは右を返して首相撲ヒザ。右ヒジには、バータルフーも右を変えす。ともにサウスポー構に左小手に巻くバータルフーにヒジを突くアンドラージは左右カーフ。右前蹴りも。バータルフーは右の後ろ廻し蹴りをガード上に当てるとなおも右で差して押し込みゴング。両者ともに力を使った初回。アンドラージの右ヒジでバータルフーは額を腫らす。  2R、右ハイを打つバータルフー。テンカオのアンドラージ。ワンツースリーを打ち込む。さアンドラージの右カーフにサウスポー構えにするバータルフー。アンドラージは左カーフも。ダブルレッグに入るバータルフーを差し上げて回るアンドラージ。  左ローを2発。バータルフーはオーソに戻すと、アンドラージは距離を保ち、ジャブ&ロー。バータルフーは右を当てて組みに。ここは突き放すアンドラージは左カーフ、右ジャブ。バータルフーは左オーバーハンドを突く。  左目尻をカットしたアンドラージ、その目力が弱まったところにダブルレッグテイクダウンを奪うバータルフー! 左で差してハーフから潜るアンドラージに、バータルフーはダースチョークを狙い、4点ヒザを突いてゴング。  3R、バータルフーの前進に首相撲ヒザのアンドラージ。右回りで右ジャブをこつこつ突くが、被弾しても弱みを見せないバータルフーは詰める。そこに左ヒジを当てるアンドラージ。バータルフーは目尻をカットもダブルレッグテイクダウン! 立とうとするアンドラージを崩してバックに。  後方に引き込んだところに後転して抜けたアンドラージがバックにつくが、亀のバータルフーにアンドラージが両足をフックから解いてマットに着いた瞬間、バータルフーは後方からのアンドラージの腕を掴んだまま、アンドラージの股の間を後退して潜ってアンドラージを下に落としてトップに! 脇差し立とうとするアンドラージにダースチョーク狙いからトップで攻める。  背後からパウンドを突いてゴング。バータルフーも立ち上がりに時間がかかる。  4R、前に歩くバータルフーに首相撲ヒザのアンドラージ。ともにキツい動きのなか、ワンツーのアンドラージを詰めたバータルフーがコーナーに押し込みクラッチして引き出し、テイクダウン。さらにバック狙い。落とそうとしたアンドラージにニアマウント。左足をかけて自陣コーナー際でリアネイキドチョーク! アンドラージがすぐにタップした。  11年ぶりのモンゴル人王者の誕生に師匠のジャダンバ・ナラントンガラグと歓喜のハグ。  試合後、バータルフーは、「信じられない。アンドラージは本当に素晴らしい。今はすごく疲れた(座り込む)。(ナラントンガラグにベルトを捧げたが?)この機会を借りて、私の文化への感謝を伝えさせてくれ。伝説の人、彼は11年前ここで世界チャンピオンになった。私もチャンピオンになった。彼は私たちにとって大きな存在だ。この素晴らしい機会を与えてくれたONE Championshipに心から感謝したい。そして、私の同胞であるモンゴルの人々にも感謝を伝えたい。私たちはブルーの空に祝福された民だ。 (5万ドルボーナス獲得に立ち上がり)ありがとう。この機会をくれたチャトリ、本当にありがとう。言っておくけど、彼の攻撃はちょっと早すぎて見えなかったからこの左目にダメージ食らったんだ。こんなダメージは初めてだ」とアンドラージを称えたバータルフーは、最後に弓矢を天に突くポーズを見せてリングを降りた。 [nextpage] ▼第7試合 56.97kg契約 ムエタイ 3分3R〇アリーフ・ソー・デチャパン(タイ/マレーシア/Sor Dechapan)[判定3-0]×ラマダン・オンダッシュ(レバノン/Tiger Muay Thai)※体重超過※オンダッシュは56.97kgでストロー級のリミット56.7kgをオーバー。56.97kg契約となり、オンダッシュはファイトマネーの30%を対戦相手に渡す。 アリーフは2023年4月のONE Friday Fightsから参戦し、4連勝(2KO)を飾ったが2024年4月にジャン・ペイメンに判定負け。続く7月のエリス・バルボーサ戦も判定2-1で敗れたが、8月にマフディーの兄ザカリア・ジャマリをKOして再起した。11月にはボルター・ゴンサルベスに判定勝ち、2025年2月にシャミル・アドコフを初回TKO、6月にマフディー・ジャマリに判定勝ちで4連勝中。177cmの長身でまだ21歳。ONE戦績は8勝(5KO)2敗。 オンダッシュは4歳からムエタイを学び、中国・アジア諸国のアマチュア大会で活躍。アマチュアでアラブ・ジュニアムエタイ選手権2016~2018年三連覇など108勝3敗5分の戦績を持ち、SNS上で“天才ムエタイ少年”や“怪物”や“神童”と紹介され、プロデビュー後も3連勝したが、2023年6月のK-1で黒田斗真に判定で敗れた。ONE FFには2024年1月から参戦し、ムエタイルールで4戦全勝(2KO)。ハイペースでの打ち合いを好む、運動神経抜群の19歳。  1R、ともにオーソドックス構えで慎重な出足。アリーフが右ミドルを蹴ると、オンダッシュは蹴り足キャッチから右フック、さらに軸足を蹴り、足を放すと左右フックで前に出る。オンダッシュは強い右カーフを多用する。右バックヒジ、跳び二段蹴りのアリーフに左フックをかすめるオンダッシュ。  アリーフが強い右ミドルをヒットさせ、右の打ち下しを当てるが、オンダッシュはその蹴り足を掴んで右ストレートで飛び込む! さらに左フックを強振するが、そこにアリーフはカウンターのテンカオ。オンダッシュの蹴り足キャッチ多用に、アリーフは足を捕まれるとすぐにストレートを打つ。  コーナーを出るアリーフは右ハイ。それをスウェイでかわしたオンダッシュは左右フックを強振し、左ボディも打つ。  2R、オーソから左ミドルのダブルを当てるアリーフ。さらに右ミドル。オンダッシュがその蹴り足をつかむとバックヒジを狙う。右ミドルを当てるアリーフ。さらに右ミドルをオンダッシュは脇でつかむが、そこからの右はアリーフは片足立ちで防ぐ。  アリーフのミドルをキャッチするオンダッシュだが、アリーフは片足でバランスを保ち、オンダッシュのパンチはもらわず足をつかまれたままストレートを繰り出す。右ローを当てるオンダッシュに、右ミドルを蹴り返すアリーフ。詰めるオンダッシュはボディ打ちも、右に回るアリーフは、右ハイ。かわすオンダッシュは詰めて右ロー。アリーフは下がりながら右の蹴りを当てる。これにオンダッシュはカモンゼスチャー。  3R、顔面前蹴りを見せたアリーフは二段ヒザでオンダッシュをダウンさせると、立ち上がったオンダッシュは怒涛の詰め、左フックでアリーフを崩すがクリンチ。  右ローで詰めるオンダッシュ。左右フックからボディ打ちを混ぜて詰めるオンダッシュだが、間合いを保ち右回りのアリーフ。両手を掴んでの押さえ、下がりながらの右ミドルを打って右回り。  逃げてばかりだと笑うオンダッシュ。しかしオンダッシュが詰めるとまたも二段ヒザ。ここに左オーバーハンドを合わせているオンダッシュだが尻餅を一瞬着く。オンダッシュはすぐに立ち上がるとコーナーに詰めてラッシュも、アリーフがさばいてゴング。  判定3-0でアリーフが勝利。チャトリ代表からプラジャンチャイ挑戦がアナウンスされた。 [nextpage] ▼第6試合 ONEフェザー級(-70.3kg)ムエタイ 3分3R─シャドウ・シンハ・マウイン(タイ/Singha Mawynn)[試合中止]─エンゾ・カルトゥーム(フランス/アルジェリア) エンゾはハイドレーションテストをパス出来ず、体調不良のため試合を棄権。シャドウは計量とハイドレーションテストの両方をパスしていたため、ファイトマネーを受け取った。 [nextpage] ▼第5試合 ONEフライ級(-61.2kg)サブミッショングラップリング世界王者決定戦〇ジエゴ・ヘイス(ブラジル)[判定3-0]×米倉大貴(TEAM AL LEONE) “ベイビーシャーク”ジエゴ・ヘイスは、ブラジル・マナウス出身のブラジリアン柔術黒帯、サブミッショングラップラー。童顔に爆発的なスピードと極めの精度から、その愛称は世界中に知られる。所属は Melqui Galvão Jiu-Jitsu。指導者メルキ・ガウバンのもと、少年期から一貫して育成を受けてきた。  10歳で柔術を始め、2015年にイエローベルトとしてガウバンの門を叩く。以降すべての帯位を同門で昇格し、2020年12月には茶帯からわずか7か月で黒帯を授与された。昇格後すぐに国際大会で頭角を現し、アブダビ・ワールドプロやAJPグランドスラム(マイアミ、リオデジャネイロ)で優勝を重ねた。  2022年にはADCC南米予選を制し、本戦66kg級で初優勝。2024年大会でも同階級を制して2連覇を達成し、サブミッショングラップリングの世界で確固たる地位を築いた。IBJJF世界選手権では2022年と2023年に銅メダル、ブラジル選手権では金メダルを獲得。パン選手権やヨーロピアン選手権などでも表彰台に上がり、柔術とグラップリング双方で常にトップを維持している。  2024年にはFLOグラップリング主催のWho’s Number One(WNO)でフェザー級王者となり、BJJ Starsなど主要大会でも勝利を重ねた。同年、世界最大の格闘技団体 ONE Championship と契約し、2025年3月の「ONE Fight Night 29」で石黒翔也と対戦。キムラロックによるサブミッションで勝利を収め、デビュー戦から世界レベルの実力を証明した。ムンジアルとパン柔術はどちらも準優勝に。  柔術を通じて確立された競技への情熱と明確な目的意識は、今なお彼を進化させ続けている。ジエゴ “ベイビーシャーク” ヘイスは、現代グラップリングを象徴する存在として世界中から注目を集めている。23歳。  米倉大貴は、いま世界の舞台で存在感を強めるアジア屈指のグラップラーだ。  徳島県藍住町で生まれ育ち、17歳のときに自宅近くの道場でブラジリアン柔術と出会った。クラスを見学したその日に入門を決め、以来、柔術を中心に人生が動き出した。  高校時代は、学校・アルバイト・練習の生活を続けながら、翌年のヨーロピアン選手権出場を目標に寝技を磨いた。高校卒業後はサラリーマンとして働いたが、柔術で生きる夢を諦めきれず、20歳で上京。練習環境を求めて柔術道場に所属し、清掃スタッフとして働きながら世界レベルの選手たちと汗を流し、その後インストラクターとしてのキャリアも積んでいった。  2021年に黒帯を授与されると、全日本(ノーギ/道着)、UWW世界選手権優勝、IBJJFパンパシフィック(無差別級)優勝、AIGA Global Qualifier優勝など、国内外で数々のタイトルを獲得。2024年にはADCCアジア・オセアニアトライアル準優勝、各地のADCC大会優勝など、国際戦線でも急速に存在感を示している。  米倉の武器は、世界レベルのヒールフックを中心とした足関節技、そして勝利への強烈な執着心だ。「足関節は自分の一番の強み」と語る通り、多くの試合を脚絡みの攻防で制してきた。  言葉も分からないまま初めて海外へ一人で遠征した経験は、彼の精神的な強さを形成した大きな要因となった。建設業、ホテル清掃、引っ越し業、飲食店など、多くの仕事を経験しながらも、唯一続けてきたのが柔術。その歩みは、努力と覚悟そのものだ。  そして今、米倉は世界最大の舞台ONEチャンピオンシップで、フライ級サブミッション・グラップリングの世界王座を狙う。29歳。  先に詰めて組む米倉の引き込みをさばき、ダブルレッグテイクダウンのヘイス。素早いパス狙いに足を戻す米倉。しかしヘイスは右に飛び込み、右腕で枕から左脇差しクラッチからニースライスパス。マウント。肩固め狙いも米倉は右手を側頭部に当てている。  外したヘイスに、シッティングガードの米倉は足をからめようとするが、足首をつかんでさせないヘイスが上四方狙い。ヘイスはインバーテッドで足を戻す。  激しいパス狙いのヘイス。その都度足を効かせる米倉は、ヘイスの足を手繰ろうとする。レッスルアップからトップに移行した米倉は足関節狙いからトップを狙うが、そこにギロチンチョークを合わせるヘイス。首を抜く米倉は、上から外ヒール狙い。そこにトーホールドを仕掛けるヘイス。最後も米倉がストレートフットロックを狙うもゴング。  判定3-0でジエゴ・ヘイスが勝利し、ONEフライ級サブミッション・グラップリング世界王座についた。 [nextpage] ▼第4試合 ONEアトム級(-52.2kg)ムエタイ 3分3R〇ペッディージャー・ルッカオポーロントン(タイ/Team Mehdi Zatout/ONEアトム級キックボクシング世界王者)[TKO 1R 2分46秒]※3ノックダウン×マルティナ・ドミンチャク(ポーランド/Legion Glogow)  ペッディージャーは7歳でムエタイを始め、「男の子を打ち負かす少女」として有名になり、10歳で100戦以上を戦い、そのうち70回以上は男子選手との戦いであった。有名になりすぎてテレビで試合が放送されるようになると、タイの法律によって男子選手との試合は禁止に。  2016年2月には『ムエタイオープン』に初来日し、小林愛三と対戦して判定負け。2017年11月にはシュートボクシングに再来日するとMIOに判定負けを喫している。ムエタイで順調に勝ち星を重ねる中、アマチュアボクシングのタイ代表として選ばれ2018年AIBA女子ユース世界選手権48kg級銀メダルになるなど活躍。2022年8月にはプロボクシングデビューも飾っている。  ムエタイでの獲得タイトルは、WPMF世界ミニフライ級王座、WMC世界-45kg級王座、2021THAI FIGHTクイーンズカップ-51kg級優勝など。ONEには2023年3月から参戦し、4連続TKO勝ちを収めると2023年12月には世界最強女王と目されていたアニッサ・メクセンを判定3-0で破りONE女子アトム級(-52.2kg)キックボクシング世界暫定王座に就いた。2024年3月、正規王者ジャネット・トッドを破り王座統一。2025年3月の日本大会でKANAの挑戦を退け2度目の防衛に成功した。ムエタイルールは2023年10月以来となる。  ドミンチャクは2024年2月の『ONE Fight Night』からONEに参戦すると、2戦目でエカテリーナ・ヴァンダリーヴァに敗れるもワンダーガール、ユー・ヨウ・プイ、シンシア・フローレスに勝利して3勝1敗。  リングサイドには4月のONE日本大会で、ペッディージャーとの再戦が噂されるKANAの姿がある。マルティナ・キエルチェンスカは結婚してマルティナ・ドミンチャクとして出場。  1R、ペッディージャーは前足を上げ下げしながら近付いていき、ワンツーを打つとドミンチャクもワンツーを合わせに来る。ドミンチャクの顔面前蹴りはキャッチして足払いでコカす。  ペッディージャーは左右フックでドミンチャクにロープを背負わせると、インからの右ストレートでダウンを奪う。詰めるペッディージャーが右ストレートと右ヒジ、そしてドミンチャクの前足をキャッチし、放すと同時に左フックで2度目のダウンを追加。  前蹴りを出すドミンチャクだがペッディージャーはキャッチして崩し、右ストレートで追い詰めてガードの上から右ハイキック。ドミンチャクが崩れ落ち、ペッディージャーのTKO圧勝となった。 [nextpage] ▼第3試合 ONEライト級(-77.1kg)サブミッション・グラップリング×マルセロ・ガルシア(ブラジル)[7分03秒 ヒザ十字]〇ラクラン・ジャイルズ(豪州) “マルセリーニョ”ことマルセロ・ガウッシアはブラジリアン柔術、そしてグラップリング界のレジェンド、約15年ぶりの試合復帰となる。  4度のADCC世界王者、5度のIBJJF世界王者であり、BJJの“GOAT”として広く知られているガウッシアは、2011年のADCC世界選手権でほぼ完璧なサブミッション・レートで金メダルを獲得し、頂点に立つと、米国ニューヨークにアカデミーをオープン。コロナ禍に伴い、ハワイに移住し、現在、41歳の彼は家族と過ごし、ニューヨークとハワイにあるワールドクラスのアカデミーを成長させることに力を注いできた。  そして子供達の成長とともに、試合復帰への意欲が湧いてきたという。しかし2023年初頭、食事中に違和感を感じたガウッシアは、念のため検査を受けた結果、胃がんと診断され、手術へ。治療の末に寛解し、試合復帰。25年1月にONEに参戦し、4分49秒 ノースサウスチョークで今成正和を極めている。  ジャイルズは「ジャイアントキラー」の異名を取る豪州のグラップラー。  ジェット・リーの映画に憧れて武術の世界に入り、当初はカンフーを学んでいたが、UFC1でホイス・グレイシーの試合を目にしたことで人生が一変。ブラジリアン柔術こそ最強の護身術だと確信し、10代半ばでBJJアカデミーの門を叩いた。  タイロン・クロスのもとで白帯から紫帯まで成長し、大きな膝の怪我を乗り越えたあと、ジョン・サイモンの指導を受けて2012年に黒帯を授与される。その後も競技者として結果を残し続け、 ADCC世界選手権 アブソルート級 銅メダル(2019)、IBJJFノーギ世界選手権 銅メダルなど、世界トップレベルの実績を重ねてきた。  特に2019年ADCCでは、77kgの選手でありながらヘビー級クラスの強豪たちと渡り合い、ケイナン・ドゥアルチ、パトリック・ガウジオ、マハメド・アリといった巨漢たちを次々とヒールフックで沈めてアブソルート3位に入賞。この“ジャイアントキラー”としての快進撃は、グラップリング史に残る名場面となった。  競技実績に加え、ジャイルズは理学療法士としても高い評価を得ている。ラ・トローブ大学で理学療法学の学士号を取得し、2016年には同大学で理学療法の博士号(PhD)も取得。膝蓋大腿部痛のリハビリテーションに関する研究を行いながら、Absolute MMAのヘッドコーチとして選手育成にも力を注いできた。  彼のレッグロックシステムは競技シーンに大きな影響を与え、多くのグラップラーが参考にする“現代型足関節ゲーム”の土台となっている。弟子の一人には、世界的スターであるクレイグ・ジョーンズもおり、2016年に黒帯を授与したのもジャイルズだ。  今回は、伝説的存在マルセロ・ガルシアとのサブミッション・グラップリング戦が決定。柔術の“古典的マスター”と“モダンレッグロックの象徴”が激突する、世代とスタイルを超えたドリームマッチとなる。  1R、引き込むジャイルズ。ガウッシアの右足を自身の肩口に乗せてフットバー。Kガードでヒザを上から押さえるが、足を抜いたガウッシア。  トップから攻めるガウッシア。ニーシールドからシッティングのジャイルスの肩に頭をつけて背中をマットに着けつけさせる。その右腕を腕固めに狙うジャイルズ。立ち上がったガウッシアにデラヒーバも狙う。作らせないガウッシアはトップ攻め。パスさせないジャイルズはKカードから3度目のアタックでガウッシアの右足を肩にかついで自身の足を被せて横回転でヒザ十字、RNCのグリップで絞めてマイキーロックならぬ、ラクラン・ジャイルズいわく“ラッキーロック”でタップを奪った。  試合後、ジャイルズは「ハッピー。つまり最高だ。僕にとってはマルセリーニョは史上最高だ。今でもそう思う。彼は信じられないほどすごい。だから運が良かったと思う。(Kガードからヒザ十字固めの動きは?)実はあれはマイキー・ロックに少し似てるけど、ヒザ十字固めじゃなかったんだ。マイキー・ロックに似た回転式足関節技で、胸を横切るように切り込んで。僕は自分の名前で呼ぶよ、ごめん、マイキー。ちょっと違うんだ。(どう呼ぶ?)ラッキー・ロックかな。  これが最後の試合だ。歳を取ったから(39歳)。勝っても負けてもこれが最後だと分かっていた。引退してコーチングと家庭に専念しているけど、この試合の話が来た時は出てこざるを得なかった。本当に素晴らしいキャリアだった。誰かに教訓があるとすれば、ゼロから這い上がることだ。34歳で、17~18年のトレーニングを経てようやくADCCメダルを手にした。そのことを忘れないでほしい。絶え間ない成長の連続だった。感謝したい人たちが何人かいる。妻は最大のサポーターだ。チームメイト、豪州からわざわざ観戦に来てくれた大勢の友人たち。本当に感謝している。もう一つ付け加えるなら、ただワークすること。このスポーツをマルセロのようにしていきたい。トラッシュトークは一切ない。彼は素晴らしい人間だ。本当に。クリーンでもある。彼の全てが柔術における完璧な偶像だと思う。マルセロ、この試合をさせてくれてありがとう」と、この試合で引退すると語った。 [nextpage] ▼第2試合 67.76kg契約 ムエタイ 3分3R〇ドミトリー・コフトゥン(タジキスタン/ロシア)[判定3-0]×鈴木真治(フジマキックムエタイジム)※鈴木が67.76kgでバンタム級リミットの65.8kgをオーバーしたため67.76kg契約となり、鈴木はファイトマネーの20%を対戦相手に渡す。  鈴木は2005年に藤原ジムからプロデビューし、40戦以上のキャリアを持つ大ベテラン選手。様々な団体に出場してトップ選手と拳を交え、2018年11月に開催されたシュートボクシング世界トーナメントS-cupでは決勝進出を果たしている(決勝は棄権)。ヒジ打ちやローキックを駆使する粘り強いファイトが持ち味。  2022年から2023年4月にかけて行われた「ROAD TO ONE ムエタイ」ウェルター級トーナメントで優勝。2023年9月の『ONE Friday Fights 32』でスーブラックに2R、左アッパーでKO負けを喫したが、2024年3月の『ONE 169』でハン・ズーハオに左フックでダウンを奪い判定勝ちした。2025年2月には隻腕ファイターのジェイク・ピーコックにTKO負け。  当初、鈴木はリアム・ハリソン(英国)とのONEキックボクシングルールでのベテラン対決が決まっていたが、ハリソンが負傷欠場。代わってノンタチャイ・ジットムアンノン(タイ)とONEバンタム級(-65.8kg)ムエタイ3分3Rで対戦することが11月27日に発表されたが、ノンタチャイも体調不良のため欠場することに。  さらに代わって、ドミトリー・コフトゥンが鈴木とバンタム級ムエタイ3分3Rで対戦することとなった。  コフトゥンは幼い頃からスポーツや武術に取り組み、極真空手では緑帯を取得。14歳でムエタイを始め、16歳でプロデビュー。2024年8月、ONEに参戦するとフェラーリ・フェアテックスに判定勝ち。2戦目ではノンタチャイ・ジットムアンノンにKOで敗れるが、スーブラック・トー・プラン49、ソー・リン・ウーに連勝。2025年9月、ランキング入りを懸けてバンタム級4位だったランボーレックに挑んだが、TKOで敗れた。  両者とも再浮上を目指し、2026年へ向けて勢いをつけるための勝利を狙う。  1R、サウスポーのコフトゥンが前蹴り、ジャブ。鈴木は右インロー。コフトゥンのジャブに鈴木は左フックを合わせにいき、右ローを蹴って左ローにつなぐ。コフトゥンは左ストレートからそのまま左ヒジ。さらに組んでのヒザ。鈴木は左ローを狙い撃ちにし、右インローも蹴る。  コフトゥンは左ヒジ。鈴木の左カーフと右インカーフがいい形で決まるが、コフトゥンは左ストレート、左ヒジをしっかり当てに来る。コフトゥンの右フックに右フックを返した鈴木だが、コフトゥンの前蹴りで大きく下がらされた。  2R、鈴木のワンツーに左ヒジを返すコフトゥンは、左ボディを打ってまた左ヒジ。コフトゥンの左フックに鈴木が右フックを返してのけ反らせる。前に出る鈴木は左カーフ、右インカーフを蹴り、コフトゥンは下がってジャブと左ロー。  鈴木が前に出ると下がり、前に出ると一気に攻めるコフトゥン。鈴木はアイポークを受けて試合が中断。再開後、鈴木の左ローに左ストレートを合わせるコフトゥン。  3R、コフトゥンは左ミドル連打から右フック、鈴木が右ボディを返そうとするとコフトゥンはバックステップでかわす。ワンツーと左ロー、右インローで前に出る鈴木をジャブで迎え撃つコフトゥン。鈴木は前に出るにはコフトゥンの前手の動きが邪魔だ。さらに左ヒジを打つコフトゥン。ローを蹴っていく鈴木にコフトゥンはジャブ、左ストレート。鈴木も左右フックで勝負に出たが試合終了。  判定3-0でコフトゥンの完勝となった。 [nextpage] ▼第1試合 ONEフライ級(-61.2kg)MMA 5分3R×ジェレミー・ミアド(フィリピン/Marrok Force)[2R 4分53秒 TKO]※レフェリーストップ〇アバズベク・ホルミルザエフ(ウズベキスタン/Raqobat)  ウズベキスタンのホルミルザエフは14勝2敗(7KO・6一本勝ち)。ONE本戦デビュー戦。Friday Fightsで24年9月にキルギスのベクトゥル・ジェニシュベク・ウフールに判定負けしたが、以降5連勝中。 25年7月に和田竜光に強烈な前蹴りを効かせて判定勝ち。ストロー級から前戦はハイドレーションテストをパスできずフライ級で南アフリカのウィリー・ファン・ローエンに1R 腕十字で一本勝ち。今回もストローではなくフライ級で戦う。25歳。  フィリピンのミアドは32歳で11勝8敗。ONE7勝8敗。2月の前戦でギルバート・ナカタニに勝利し、4連敗をストップした。  1R、いきなり右フックで襲い掛かったミアドが右ストレートで襲い掛かり、続く右フックでダウンを奪う。さらにヒザ蹴りで追い打ち。ホルミルザエフがボディロックで組み付きテイクダウン。サイドのホルミルザエフにミアドは2度立ち上がり、離れることに成功。  ホルミルザエフは後ろ蹴りでミアドを突き放す。右フックで前に出るミアドにダブルレッグで組み付いたホルミルザエフは、ボディロックに変えてテイクダウンを奪う。  ガードになるミアドにヒジ、パウンドのホルミルザエフはヒザも顔面へ。ミアドはコーナーを背に立ち上がるが、ホルミルザエフがまたもボディロックから小外がけを合わせてテイクダウン。パウンドの連打からヒザを顔面へ連打、バックマウントからパウンドの連打で1Rを終えた。  2R、打撃で仕掛けるミアドにホルミルザエフはカカト落とし。ボディロックでミアドをコーナーへ押し込み、離れ際にバックハンドブロー、さらにバックキックも放つ。ダブルレッグでテイクダウンにいったホルミルザエフだが、上になったのはミアド。足関節を狙うため立ち上がったミアドにホルミルザエフは蹴り上げ。  それでもレッグロックを狙うミアドだったが、ホルミルザエフが上になってサイドからマウント、そして肩固めをセット。ホルミルザエフはパウンド、顔面へのヒザ、またバックマウントからパウンドと鉄槌を連打。かなり長い時間の連打が続き、ようやくストップ。ホルミルザエフのTKO勝ちで6連勝をマークした。
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