2025年2月8日(土)日本時間朝10時からタイ・バンコクで開催される『ONE Fight Night 28』(U-NEXT配信)のMMA81kg契約試合で、中国強豪のジャン・リーポンと対戦する手塚裕之(ハイブリッドレスリング山田道場/TGFC)が試合前の公式インタビューに応じた。本誌取材の言葉と合わせて紹介したい。
▼キャッチウェイト81kg契約 5分3R手塚裕之(日本)ジャン・リーポン(中国)
“ジャパニーズ・ビースト”こと手塚裕之はMMA14勝5敗。2019年にPANCRASEウェルター級王座を獲得すると、同年10月にONEデビュー。ONEでは、6勝(5フィニッシュ)2敗の戦績を持つ。
2021年11月のアギラン・ターニ戦から、エドソン・マルケスをともに3R TKO後、ジン・テホとアブラーオ・アモリムの両者を1R 腕十字に極め、2024年4月にはヴァミール・ダ・シウバを2R ノースサウスチョークでフィニュシュと、5試合連続フィニュシュをマークしたが、2024年9月の前戦でMMA9勝1敗のイシ・フィティケフに判定負けで連勝が5でストップした。34歳。
対するジャン・リーポン(中国)はUFCで2勝2敗、ONEで3勝2敗の強豪で、MMA34勝(25フィニュシュ)13敗2分の強打者。2014年のTUF Chinaライト級(70.3kg)決勝でサイ・ワンにスプリット判定勝ちで優勝し、UFCと契約。デビュー戦でブレンダン・オレイリーに判定勝ちも、クリス・ウェイド、ケイジャン・ジョンソンに判定負けでリリース。その後、Kunlun Fightで連勝を重ね、2021年のエドゥアルド・フォラヤン戦の判定勝ちでONEデビュー。以降、ルスラン・エミベック・ウフール、ティモフィ・ナシューヒンを初回KOに下すなど、強い体幹から放たれる打撃で強豪を下している。
前戦は2024年5月のモーリス・アベビ戦で体重超過のアベビを相手に174ポンドのキャッチウェイトで対戦。激しいスクランブル戦の末に判定負けを喫している。手塚と同じ34歳。ONEライト級(※77.1kg)から、今回は手塚と81kgのキャッチウェイトで戦う(※ちなみにONEの戻し体重は契約体重の5%まで)。
被弾しても、さらに強いものを当ててやるぞっていう気持ちで立ち向かいたい
──現在のコンディションは?
「今回は契約体重がいつもより3kg位軽くて。今回ウェルター級なんですが、相手が元々ライト級の選手なので、それに合わせて絞りました。すると、結構スピードが上がって身体も軽くて逆に良い感じな感覚です」
──178.5ポンド(81g)のキャッチウェイト戦は初になりますか。
「ONEに来てからは初めてですね。ウェルター(83.9kg)だと頑張って食べて増量な感じでしたが、今回は食事管理で無駄なものを少し省いた程度で。そこまで減量したつもりはないですが、しっかり絞れて動きのキレが良いです」
──手塚選手のXを拝見していると、年末年始に恒例の極寒の滝行やられてましたが、あれは地元ですか。
「あれは(栃木県)日光の本当に携帯の電波も届かないような山奥で。名前もわかんない滝があって。あまり人に知られている場所ではないです。山に釣りに行くので、それであの滝を見つけて、たまに友人らと遊びに行っています。そこで今回、冬恒例の身体を清めてきた感じですね」
──極寒の滝行にはどうな効果がありますか?
「実際、身体に良いかどうか良く分からないんですけど。身体にストレスにもなると思いますし、寒い時にわざわざ冷たい所に入るって、勿論自分でもやりたくないです。でも、やりたくないことをやるっていうのが、自分に規律を与えるというか、やった後は精神的にスッキリするというか、気持ちが強くなれる気がして続けています。やりたくないけどそれをやることで、己に負けない心を作るイメージですね。あと、あれは1回やると(滝に入ると)身体が暖かくなるんです。本当に不思議なんですけど。入る前よりも身体が暖かくなろうとするのが、人間の体の面白さを感じます」
──体温調節機能が働くのでしょうね。手塚選手の“極寒の滝行”の話しを伺うと、アンソニー・ジョシュア(ボクシングヘビー級元3団体統一王者)の“朝夜のコールドシャワー”の話を思い出しました。彼も手塚選手と同じ理由でやっているそうです。トップアスリートの行動は似通うのですね。
「なるほど。確かに、喜んで朝から冷水浴びたり、冬に滝壺に入る人は普通いないと思います」
──2024年9月の前戦を振り返っていただきますが、会場は標高の高いデンバーでの試合でした。
「これまでも海外で試合しているとはいえ、アジア圏と北米の違いを感じましたね。食事面も含めてコンディショニングの難しさがありました」
──アジアのように米を主食にとはいきませんでしたか。
「米もあるのですが、中華料理だと油ものが多いので、ベトナム料理ばかり食べていましたね。一応、米由来ということでフォーばかり食べてました(苦笑)」
──イシ・フィティケフとの試合を5カ月くらい経って、どう振り返りますか?
「本当に勉強になった試合でした。自分の中では打撃の面でも寝技の面でも自信があったのですが、序盤の打撃で、うまく距離が掴めなく打撃で押されてしまって。そこからリカバリーできる場面もあったのですが、気持ちが焦って攻め急いでしまいました。丁寧に出来なかったり、自分の中でミスがミスを呼んで、どんどん悪い方向に行ってしまって負けてました。全く勝てない相手じゃないと今でも思っていますけど。
最初にペースを持っていかれたことで、スタミナを消費しました。スタミナが切れるのはやっぱりペースを握られている方なんで。
ただ、負けたのは本当に自分のせいだなというか。 相手はもちろん強かったですけど、ただ本当に自分のミスで負けたという感覚が強くて。それも踏まえて練習は積んできました。負ける前までの直近3試合は、ほとんど1ラウンドが2ラウンドの一本勝ちで。ラクに勝ち過ぎていたのかなっていうのがありますね。それでタフファイトになった時、その状況に慣れてなかったというか、慢心もあったのかもしれないですね」
──試合に向けてのイメージの修正などは、今回の試合で生かされそうですか?
「そうですね。今回は相手もタフな選手ですし、最初からタフファイトになることを想定しています。簡単に極められるとも思ってないですし。泥沼に引きずり込み合うような試合になるとイメージしています。心構え的に相手のことを全然ナメてない状態です。
あとは自分の怖さを序盤から出していきたいですね。自分からぐんぐんプレッシャーをかけていく本来のスタイルも取り戻して。特に打撃面においても。前回の試合で、綺麗に戦おうとし過ぎた感じが自分の中でありました。それまで3試合連続で余裕のある勝ち方をしたから綺麗に勝とう、勝てるもんだと思い込んでいたのかもしれない。
ただ僕の本来のスタイルというか、自分の原点は“ジャパニーズビースト”っていうニックネームの様に獰猛にガツガツと行くようなスタイルなので。獰猛に相手に怖さを与えてガツガツ削っていくっていう本来のスタイルを1ラウンド始まってからドンドン出していければと思っています」
──対戦相手のジャン・リーポン選手の印象は?
「本当に経験も多いですし試合数も多い。 オールラウンダーという印象です。最近はストライキングでKOも重ねていますし、以前は一本勝ちが多くて、34勝で25フィニッシュと高確率のフィニッシャーです。KOも極めもできるバランスの取れた戦いで気持ちも強い。判定で負けても頑張って粘るし、最後まで諦めない。ONEの中でもトップレベルの強さを持つ選手だと評価しています」
──ルスラン・エミベック戦などを見ると、体幹の強さを感じました。ステップを踏まず足を止めて左前手から右手で打ち合ってダウンを奪っていますし。
「ハンドスピードも速いですし、体も見た感じでは強そうですし、思いっきりがいい。気持ちも強いですよね。自分もタファイトになる覚悟はできてます」
──言える範囲で、どの様な試合展開を想定していますか?
「まず最初の打撃戦でどっちが先に主導権を握るかですよね。僕が主導権を握ったら相手は寝技もできるのでタックルに来ると思いますし」
──グラウンドでの展開はいかがですか? 実際には組んでみないとなのですが。
「実は去年一緒に練習したことあるんです。昨年のアメリカでの合宿中にB-TEAMで偶然見かけて。彼とは過去同じ大会に2度出たことがあって。彼はその大会で2度ともKOボーナスをもらっていたんですよ。それが凄い印象深くて。それで練習しようってなり何回か組みました。その時の感触は、彼は本当にバランスが良く、寝技もしっかり基礎ができてポジショニングとか上手くて強かったです。MMAグラップリングというか。極められない相手じゃないとは思いました。打撃はやってないので分かりませんが。ただ、そのグラップリングでやった感覚もあまり試合に持ち込みたくなくて。やっぱりMMAは全然別物なので」
──なるほど、ただリーポン選手がその経験から手塚選手の組みを警戒していたら打撃戦を仕掛ける可能性は高くなりますね。
「そうですね。1発を持っている選手なので、それをもらったら危ないとは感じています。だからといって自分が1発も貰わずに勝てると思っていないので、多少被弾しても、さらに強いものを当ててやるぞっていう気持ちで立ち向かいたい。どれだけダメージとか傷つけられても、さらに倒しに行ってやろうっていう気持ちでいます。そのリスクは覚悟の上で」
──これまでの話の流れで言うと、今回は打撃中心に準備しましたか?
「そうですね。ただ、どちらも準備しました。打撃についてはベイノア選手とも練習して、ストレッサー起一選手もそうですが、二瓶卓郎さんのところにも行って。最近、新しい自分のスタイルが構築されてきた感じがありますね。伝統派空手を週1の頻度で2年ぐらい習ってきたのですが、自分のベースとなっているボクシングとムエタイの技術が上手く絡んで回るようになってきました。前戦を終えてから、最近は仕上がっているのを感じます。打撃でも倒せる様になってきたので、久々にKOしたい」
──その上でグラウンド展開でも極めるイメージを持っていると。
「そうですね。MMAは“当てて終わり”じゃないので。当てた後に続くように。グラウンドに行ったらもちろん組むんですけど、その前の打撃もしっかり攻める姿勢でいきます。グラウンドで簡単に勝てるから、打撃戦は上手くいなしてグラウンドに持ち込めればいいや、とは思わない。被弾する覚悟もなく綺麗に戦おうとしたら自分のテイクダウンが相手に読まれ易くなる。自分から怖い打撃を仕掛けることによって、相手は自分のテイクダウンが見辛くなるはず。打撃をしっかりやって相手を錯乱させたいです」
──では、2025年の展望を教えてください。
「まずは次戦、無傷で試合を勝つことができたら、3月のさいたまスーパーアリーナ大会も出たいと思っています。去年もそうでしたが、5年ぐらい日本で試合ができてないので。3月と言わずに他に今年また日本大会があるのであれば、試合はしたいです。そこでウェルター級のタイトル戦に絡んでいけたらと思っています。ONEに来て5年、戦績も7勝2敗なので。そろそろタイトルに絡みたいですね」
──最後にファンへのメッセージをお願いします。
「ジャパニーズビーストらしい試合をお見せいたしますので、U-NEXTで応援のほどよろしくお願いいたします」