2024年12月30日(月)神奈川・横浜武道館『K.O CLIMAX 2024』(U-NEXT配信)のメインイベントにて、KNOCK OUT-BLACKウェルター級王座決定トーナメント決勝戦3分3R延長1Rで中島玲(フリー)と対戦する渡部太基(TEAM TEPPEN)のインタビューが主催者を通じて届いた。
渡部は藤原ジム所属として2006年3月に全日本キックでプロデビュー。Krush、M-1、REBELS、RISEなど様々なリングで活躍し、2011年1月にトーナメントで優勝して初代WPMF日本ウェルター級王者となり、2016年1月にはKrush同級王座を奪取。2024年で引退することを表明し、2月に漁鬼に判定負け、4月はCAZ JANJIRAにKO勝ち、6月は小川悠太に延長戦の末に判定負け。10月の1回戦では西川康平と倒し倒されの激闘を演じ、初回KO勝ちで決勝へ。戦績は26勝(15KO)31敗2分。
自分の格闘技人生を全うする
──まず10月大会の準決勝、西川康平戦を今振り返ると?
「1Rで倒し切れてよかったですね。正直、先に2回ダウンを取って、終わると思ったんですよ。そこで『行くぞ』と思ったら、まさかの自分がダウンするという(笑)。でもダメージはなくて、2回目はスリップだったんですけど、『やべえ、2対2だ!』と思ったし、2Rに行ったらダウン回数がチャラになっちゃうじゃないですか。だからここで行かないとと思って、どうにか倒そうという気持ちでしたね。
──先にダウンを取った時の感触として、確実に効かせているという実感はあった?
「最初のダウンは『あ、倒れた』という感じだったんですけど、2回目はけっこう手応えがあったんですよ。だから『終わったな』と思ったんですけど、西川選手が立ってきたから『おお、やるか』という感じでした(笑)。
──結果的に、後楽園でのラストマッチを勝利で終われましたが。
「そこは単純にうれしいですね。僕はデビュー戦が後楽園で、負けてスタートしてるんですよ。だからそういう意味でも『最後は勝ちたいな』という思いが強かったし、ましてトーナメントで、負けたら全てを失うみたいな状況でプレッシャーもありましたけど、『やってやろう』という感じでした」
──もう一つの準決勝、漁鬼vs中島玲は、当日は自分の試合のひとつ前でしたね。
「はい。通路でスタンバイしている状況だったんですけど、すごくお客さんが沸いていたので、『いい試合してるのかな』と思いました。あとで見ると、ホントに向こうもいい試合してましたね(笑)。倒し倒されで」
──改めて中島選手の強さを感じた?
「そうですね。先にダウンを食らったじゃないですか。けっこうすごいひっくり返り方をしていたので、効いてるのかなと思ったんですけど、そこから盛り返して、打たれ強いというか……気持ちが強いのかなと思いました。普通の選手だったらシュンとして、そのままやられちゃうような場面だと思うので」
──まあ、その状況は渡部選手も同じだったわけですが(笑)。そういう点でも、最高の相手なのでは?
「本当にそう思います。いろんな選手がいますけど、トーナメントに選ばれたのはみんな激闘派で、そこから勝ち上がったこの2人が決勝で横浜武道館のメインというのは、なかなか感慨深いなと思います」
──当日はワンデー・トーナメントが2つあるし、他にも豪華なカードが並ぶ中でのメインです。その決定に至るまでには準決勝2試合の盛り上がりが大きかったし、「この試合なら間違いない」ということも大きいと思います。
「そう思ってもらえたことはすごくうれしいですね。この大きな大会のメインを任されたというのは、責任重大ですから。やっぱりメインが締まらないとダメだと思うので、そこを任されたというのは、ファイターとしてすごくうれしいです」
──ラストマッチがメインに来る選手って、そもそも少ないと思います。しかも、トーナメントを勝ち上がっての決勝戦なわけで。
「そうなんですよね。このタイミングは偶然ではあるんですけど、これも必然なんだなと思いますね」
──後楽園ホールで負けて始まったプロキックボクサーとしてのキャリアが、横浜武道館のメインで終わろうとしているわけですよね。あとは勝ってベルトを巻くだけと。
「そんな完璧な話があるかよって思いますけどね(笑)。完璧すぎだろって。まあ、そうさせますけど」
──その完璧なストーリーが完璧に完結するのは、渡部選手の力によるわけで。
「やるだけですね。舞台は本当に整ったので」
──先ほど、後楽園ラストマッチの時はプレッシャーがあったということでしたが、今回はどうですか?
「まあプレッシャーはもちろんありますけど、さんざんやってきたことだし、大事なところでいっぱい負けてもきたので、「負けたらどうしよう」とかあんまり考えちゃうと“らしさ”が出ないなと思って。最後だし、気楽にというわけではないけど、楽しんで最後を迎えたいなという気持ちが一番大きいですね」
──そのための日々がまさに今だと思うんですが、どういう気持ちで過ごしていますか?
「あんまり深くは考えないようにしてるんですよ。しみじみ「最後かぁ……」とか思うと、張り切りすぎてしまうので。練習の中でも『ラストだから頑張ろう』という思いはもちろんあるんですけど、いつもと違うことをやるのはちょっと違うかなと思うので。なるべくいつも通りに生活するようにはしていますね」
──必要以上には気負わないという感じですか。
「そうですね。『最後だからやんなきゃ』と思ってましたけど、それは逆効果だなと、動いてて思ったので」
──『KNOCK OUT』で復帰してからも、うまくいかなかった試合、“らしさ”が出なかった試合もありました。でもその中で、前回も“らしさ”全開でしたし、今度の試合もそうできそうな相手との舞台です。最後にそれができてきたというのは、自分ではどういう部分がよかったと思いますか?
「やっぱり相手ありきですからね。テクニックでくる選手とは噛み合わなかったりもするので、本気で倒しにきてくれる相手とはいい試合ができますよね。自分はいつもガンガン出ていくので、それに乗ってきてくれたからハマったというのはありますよね」
──そういう選手が集まった今回のトーナメントはまさに最高の花道だったんですが、渡部選手次第では、10月の後楽園で終わっていたかもしれないわけで。
「本当にそうなんですよ! そう思うと、『勝ってよかったな』と思います(笑)。後楽園の前は『負けたら終わりか……』と思っていたので、そっちの方がプレッシャーが大きかったですからね。
──それも、乗り越えた今だから言えるわけで(笑)。
「本当に(笑)。マジで『どうしよう……』ってなってましたから」
──今回は、最後に全力を尽くすのみという感じですか。
「はい、『今できることをやる』というだけですね。もちろん絶対勝ちたいですけど、勝負なので勝ちか負けかしかないので、そこはやってみないと分からないですから。それが『勝ち』になるように全力を尽くします。
──通常のラストマッチ、引退試合前のインタビューだと、「現役生活を振り返っていかがでしたか?」みたいな質問をするところですが、それはまたの機会にした方がよさそうですね(笑)。
「今は振り返ってシンミリしてる場合じゃないですからね(笑)。とりあえず試合しなきゃなので」
──あとは当日を最高の状態で迎えるだけですね。コンディションなどの面ではどうですか?
「今のコンディションはよくも悪くも、普通です。一番怖いのは、寒いので風邪を引くことですね。子供もいっぱいいるので、保育園とかからいろいろもらってこないように(笑)」
──では最後に、今回の試合で一番注目してほしいポイントはどこでしょう?
「今までやってきた生き様を見せたいですよね。自分の格闘技人生を全うする、そういう試合を見せたいと思います」