2024年12月7日(日本時間8日)の『UFC 310』(米国ラスベガス・Tモバイルアリーナ)のコ・メインで、UFC世界フライ級王者・アレッシャンドリ・パントージャ(ブラジル・ATT)に挑戦する朝倉海(日本/JTT)が10月17日、同大会を生配信するU-NEXTにて会見。
異例のUFCデビュー戦にして王座挑戦に向かう心境を語った。
達郎君はすごいなと、若いのにめちゃめちゃ強い
──2024年12月7日(日本時間8日)の『UFC 310』(米国ラスベガス・Tモバイルアリーナ)のコ・メインで、フライ級王者・アレッシャンドリ・パントージャ(ブラジル・ATT)に挑戦することが発表されました。いかがでしょうか。
「ようやくUFCのデビュー戦が決定して、対戦自体は結構何カ月か前から決まっていたんですけど、やっと発表することが出来て嬉しいですし、あらためてすごい気合が入ってます。SNSでも『ほんとうにUFCと契約したのか? 大丈夫か?』と心配されていたので、こうして発表されて信じてもらえたんじゃないかな、と思います(笑)」
──UFCアジア太平洋地域統括責任者のケビン・チャン氏からのメッセージでは「日本の黄金期に入っている」と期待をかけられました。
「すでに日本人選手が活躍していますし、僕がUFCでチャンピオンになることで、またUFCをまた日本に持ってこれる可能性もすごくあると思いますので、絶対に勝ってUFCを日本に持ってきたいと思います」
──UFCファイターとして初めて公の場に出る気持ちは?
「今日が初めてなんですね。自分のYouTubeとかでは発信してるんですけど、メディアの前で話すのは初めてなんで、本当にこの瞬間を待ってました、僕。あと2週間くらい発表が遅れたら、このへん(口もと)まで来ていたんでギリギリでした(笑)。SNSの反響もすごくて日本人がタイトルに挑戦するのは9年ぶり(※2015年4月の『UFC 186』で堀口恭司が世界フライ級王者デメトリアス・ジョンソンに挑戦)で久しぶりだと思います。あと、日本人で今までチャンピオンになっている人がいないっていうところで、僕に賭けてくれてる人も多いと思うので、そこに応えられるような結果を残したいですし、パフォーマンスでも世界中に衝撃を与えられるような戦いを見せたいなと思っています」
──初めてUFCからオファーされた時は、どんな気持ちでしたか。
「その契約の件も本当にいろいろあったので、決まった瞬間とかはその辺ははっきり覚えてないんですけど、いろんなたくさんの人の協力があって、それこそRIZINの榊原(信行)社長もそうですし、本当にたくさんの人がサポートしてくれたおかげで、この契約を取ることができたので、まずはみんなへの感謝が大きかったです」
──6月にUFCとの契約を発表してから、この4カ月間はどう感じていましたか。
「この4カ月の中でも対戦相手が変更になったり、変更というより決まりそうで決まらなかったり。戦う予定の大会も2、3回変わったりとか、そこで結構、常に試合をするつもりで準備をしていたので、気持ちを保つのが難しかったりもしたんですけど、その分、常に追い込めたので、いい準備ができました」
──デビュー戦で発表されたのが、UFC年内最後のペイパービューイベントです。託された思いはいかがでしょうか。
「嬉しいですね。結果的に年内最後のみんなが注目する大会のタイトルマッチができるということで、こんなチャンスはなかなかないな、ということで、勝つのはもちろん、試合内容にすごくこだわって、めちゃくちゃインパクトを与える予定です」
──日本で活躍してUFCへ。そもそもUFCで戦いたいと思ったきっかけは?
「数年前から僕の中で、このUFCのチャンピオンになることが格闘家としての目標であって、それもずっと言い続けていたと思うんですけど、UFCが世界トップの団体なのは、みんな認めていると思うので、やるからには世界一になりたいと思っていたので、その場所で僕はトップを取りたいなと思っています」
──RIZINではバンタム級王者で、UFCでは一階級下のフライ級での参戦になります。コンディションは?
「フライ級でやるって決めてから何カ月か経っているので、しっかり体重の調整もできていますし、でも久しぶりの階級なのでちょっと不安はありますけど、格闘技に詳しい栄養士の方にも協力してもらったりとか、そのプラン通りに進んでいるので問題ないかなと思っています」
『最初はフライで』とお願いされた。ゆくゆくバンタムにも行く
──UFCにはバンタムで戦いたい・フライ級で戦いたいといった希望は伝えた?
「どっちでもいいですと、いい条件がもらえる方で戦いたいと伝えました。『最初はフライで』とお願いされたので。ゆくゆくバンタムにも行くと思いますし、どっちの階級でもトップを取るつもりでいます」
──条件というのは、初戦の対戦相手だったり、金銭面だったりでしょうか?
「どっちもですかね。いかにUFCで僕が有名になっていけるか。そのへんも考えた上で、先にフライ級のタイトルを獲りに行くのが一番いいかなと思いました」
──UFCでのファイターたちの戦いはどう映っていましたか。
「一番強い選手が集まる場なので、レベルが高いなと思いますね」
──先週、平良達郎選手とブランドン・ロイバル選手が大変な戦いをしました。「年間ベストバウト」とも称される戦いでしたが、ご覧になりましたか?
「そうですね。ちょうどその日、BreakingDownオーディション(審査員として)で参加していて、めちゃくちゃ見たかったのに(リアルタイムでは)見れなくて。オーディション中こうして(隠して)スマホを置いて見ようかなと思ったぐらい見たかったんですけど、我慢して。夜の9時半とかにオーディションが終わって、帰ってすぐU-NEXTで見たんですけど、すごい戦いでしたね。ロイバルはさすがの経験値だし、ゲームの作り方だったり、本当に素晴らしいなと思いましたし、達郎選手、達郎君もすごいなと思いました。若いのにめちゃめちゃ強いなと思いました」
──格闘技の本場ラスベガスで、満員のT-モバイルアリーナでのデビュー戦となりますけれども、どんな戦いのイメージをお持ちでしょうか。
「KOで勝つことしか考えてないですね。どれだけインパクトを残せるか、だと思うんで。必ず、UFCでも今まで衝撃的な記憶に残るKOシーンってあると思うんすけど、そこ(ハイライトリール)に載るような衝撃的なKOを見せたいなという風に思っています」
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減量はプラン通り。バンタムに近いコンディションで戦える
──減量に関して、今の体重はどのくらいですか。
「今は64kgです」
──今までのバンタム級での通常体重は?
「68kgくらいでしたね」
──今回の試合にあたり、どのような感じで体重を落としていますか?
「練習量を増やすのと、あとは食事も少しずつ抑えているという感じですね」
──10月に試合が決まるかもしれないとYouTubeで仰っていましたが、10月に向けてある程度体重を下げていた?
「そうですね。でもマックスで64kg切るくらいまでしか落としていなかったですね。(8月に)タイに修行に行ってたんですけど、その前ぐらいにもしかしたら10月になるかもしれないっていうので、準備を始めて。タイにいる途中ぐらいから12月で決まりそうだ、っていう話だったんで、その時はちょっと減量して63kgぐらいまで落としたのがマックスで、12月で決まった瞬間にまた戻した感じですね」
──フライ級仕様の朝倉海はどんな感じになりそうでしょうか。
「どうなんでしょうね。でも普段、僕あんまり減量してなかったんで、減量もいつも2週間とかで、最後水抜きをするぐらいだったんで、実際試合当日の体重はそこまで変わらないのかなって思います。若干、筋肉量だったりとかは落ちると思うんですけど、体重自体はそこまで変わらないので、(バンタムに)近いコンディションでできるのかなと思います」
──5分5R戦うことになりますが、スタミナは?
「ずっとその予定で準備しているので全然大丈夫です。毎日5分7ラウンドやったりとか。5分の中で相手が途中でフレッシュな状態で入ってくる練習だったりとかもしていますので、そこは全然大丈夫です」
1発王座挑戦への批判は「そういう声も出てくるだろうなと想像はしていた」「僕がやってきたことは間違ってなかった」
──これまでも練習してきたラスベガスでの大会で、試合前はどこでどういう調整をしていく予定でしょうか。
「11月の末ごろに日本を出発して、ラスベガスの多分、UFC PI(UFCパフォーマンスインスティチュート)で調整する予定です」
──日本からどのメンバーを引き連れていくのか、また向こうのどんなスパーリングパートナーを呼ぶのか。
「すでに呼んでいるトレーニングパートナーもいるんですけど、日本にトータル3人くらい呼ぶ予定で、そのメンバーにも来てもらうのと、あとはアメリカでも手伝ってもらえる予定の人もいます」
──パントージャの所属するアメリカントップチーム(ATT)には堀口恭司選手もいるので、情報が入ると思いますが、4年前に堀口選手と戦ったときと一番違うところは?
「いや、もう変わりすぎて、何だろうな比べられないですね。打撃にしてもレスリングにしても寝技にしても、もう別人くらい強くなってるんで。やっぱり海外のコーチ(エリーケーリッシュ&ビリー・ビゲロウ)が日本に来てくれたことがすごく僕の中で大きくて。1回、怪我して1年半離脱して、久しぶりに(2023年5月)元谷(友貴)選手と試合をしたんですけど、その試合から僕全然違うと思うんですけど、本当にあの頃と全然違うぐらい成長してるんで、その分析は意味がないのかなっていう風に思います」
──今回のことは決まったことで、朝倉選手が何かUFCに意見を言えることはないと思うんですけど、平良選手がコツコツ勝って世界王座を目指していたところで、海選手が一発で挑戦することを歓迎をしない声もありますが、どう思いますか?
「そういう声も出てくるだろうなとはもちろん想像はしていましたけど、結局UFC側が決めたことで、UFCが評価することなんで。僕がUFC以外のRIZINで今までやってきたことだったり、YouTubeで活動してきたことだったり、その全てがUFCの社長に届いたわけなんで、それは僕がやってきたことは間違ってなかったんだなと思っています」
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鶴屋怜の「逃げるなよ」には「彼もすごいポテンシャルがある、頑張ればタイトルに挑戦する位置に行ける」
──鶴屋怜選手が昨日のXで「朝倉海がUFCのフライ級でタイトルマッチやる事になりました。朝倉海は知名度もあるし、選手のマッチメイクの仕方としては賢いし流石。ただ、勝っても負けてもこの階級からすぐ逃げるなよ! フライ級日本人最強は俺だ」と投稿していました。今後チャンピオンとして日本人の挑戦を受けるのもアリですか?
「そうですね。まあ……知名度を上げるのに必死なんだろうなと思いましたし、彼もすごいポテンシャルがあると思うので、頑張ればタイトルに挑戦する位置に行けるんじゃないですかね」
──11月4日のDEEPに出るマンド・グディエレス選手は海選手と一緒に練習していた選手でしょうか。
「彼とはタイのトレーニングキャンプで一緒に練習してたんですけど、本当は(日本に)来てもらう予定だったんですけど、ビザを取るのに結構時間がかかってしまっていて、まだ来れてないという状況です。たぶん来週の始めぐらいには来れるのかなと思います」
──今、日本ではどういった人たちと一緒に練習していますか?
「海外から練習に来てくれているのと、あとは神龍(誠)君とかが来てくれてます」
──海外の選手の名前は?
「まだちょっ言とえないですね」
「パントージャの一番の強さはハートの部分」「打ち合ってくれるし、僕にとってはすごく都合のいい相手」
(C)Zuffa LLC/UFC
──あらためてパントージャ選手のどういったところを警戒していますか?
「やっぱ全部上手いですよね。打撃も寝技もレスリングも、とにかく寝技の極めが強いですね。1Rだとしても、どの局面だとしても、本当に全力で極めに来るタイプなので、そこでのフィニッシュも多いですし。あとは競った試合のときでも勝ちきる精神力というか、彼の一番の強さはハートの部分だと思います」
──ロイバルと2度戦った試合をどう見ましたか。
「でも、技術が飛び抜けてすごいとは思わないですし、打ち合ってくれるし、僕にとってはすごく都合のいい相手だなと思っています」
──1R、2Rあたりのフィニッシュもあり得る?
「全然あると思いますよ。何パターンか、本当にKOできるイメージがあるんで、たぶん倒せると思います」
──パントージャのリアネイキドチョークや右フックとかでのフィニッシュ能力については?
「フィニッシュ能力は高いですね。特にバックキープやバックのチョークがすごい上手いですよね。でもパントージャとの試合は3カ月ヶ月前とか結構前から決まっていたので、ずっとその対策をしていますし、パントージャに似ている選手ともずっと練習をしてきたし、グラッグリングで(柔術家の)石黒翔也さんともずっと対策をしてきて、彼の技術もすごいので、そこでいろんなエスケープの仕方だったり、対応の仕方をめちゃくちゃ学んでるんで、結構自信はあります」
──ラスベガスに日本から応援も来ると思いますが、相手選手の応援の方が多いと思いますが?
「リング、ケージに入ったらそんなに気にしないですね。倒すことしか考えていないのであんまり関係ないというか。僕からすると今まで日本でRIZINでメインイベントをやることが多くて、僕がたくさんのお客さんを呼んで試合をしていたんですけど、そっちの方が遥かにプレッシャーがかかるので、気持ち的にはすごい楽な気持ちで臨めるかなと思います」
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朝倉未来に「僕の活躍で火をつけて復帰してほしい」「セコンドについてほしい」「来年UFCを日本で」
──今回パントージャ選手との対戦が決まった時にお兄さんの朝倉未来さんから何か言われたことはありますか。
「ちょっとだいぶ前なんで覚えてないですけど、『まあ、行けるっしょ』みたいな感じでしたが、でも最初は驚いていましたね。『マジいきなりタイトルなの?』って珍しく驚いてました。なかなか驚かない兄貴を久しぶりに驚かすことができた(笑)」
──今回のUFC挑戦に関しては、未来選手もかなり動いて、色々お願いして回ってくれたみたいですね?
「そうですね。表では言わない性格だと思いますけど、陰で(RIZINとの)契約のことだったり、榊原(信行)さんを説得してくれたり、すごく感謝していますね」
──海選手がUFCに挑戦するにあたって、お兄さんの夢も一緒に背負って戦う部分はありますか?
「それもありますし、と言うよりは、僕はまた(未来に)復帰してほしいなと思っている派なんで、僕の活躍によって、また兄貴のやる気に火がついてくれたらいいなと思っています」
──JTTにはエリー&ビリーのチームがありますが、セコンドに、あるいはチームとして朝倉未来さんがつく可能性は?
「いま話しているところですね、それは。来てくれるような気がしていますけど、『BreakingDown14』が日本時間の12月8日にある(さいたまスーパーアリーナのコミュニティアリーナ)ので、まあ厳しい戦いになると思いますけど、何とか説得して連れてきたいと思っています」
──やはり来てほしい?
「もちろんですね。兄貴のセコンドの指示はすごいですし、やっぱいてくれることの安心感がすごいあるので来てほしいですね」
──何試合契約になるでしょうか?
「決まってるんですけど、たぶん言っちゃいけないと思うんですよね。すみません。後で怒られるのは嫌なので(笑)」
──来年あたりUFC日本大会を持ち込みたいということですが、今後のビジョンは?
「まだそういうのは全然決まってはいないんですけど、僕がチャンピオンになればそういう交渉する力が出てくるかなって思いますし、僕がUFCチャンピオンになれば、日本でUFCをやったとしても本当に盛り上がると思うので、今回しっかり勝って、僕の目標は来年にUFCを日本に持ってきたいな、という風に思っています」
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ケビン・チャンUFCアジア太平洋地域統括責任者「私たちはこれから歴史を目撃することになる」
「朝倉サン、ようこそUFCへ。長くUFCとともに過ごしていますが、UFC初戦でタイトルに挑むファイターというのは今まで見たことがありません。それは朝倉選手がMMAというスポーツにもたらすもの、そしてそこに与えたインプクトの大きさを示しています。朝倉海選手のUFC参戦にこれ以上ないほどワクワクしています。“ガンバッテネ”。
今年、UFCはアジアに戻ってきます。おけるUFCは、11月23日に開催される『UFCファイトナイト・マカオ』はもちろん、引き続き、2025年以降についてもアジア圏でイベント開催の機会を模索しています。もちろんそこには日本も含まれています。朝倉海選手のような地元のスーパースターがいることで、どの国であっても究極的にその国のスポーツ人を押し上げるのは言うまでもなく、そうした選手たちの登竜門として私たちは『ROAD TO UFC』トーナメントを設立しました。来年には『シーズン4』を迎えます。そこからすでに中村倫也選手や鶴屋怜、風間敏臣選手といった有望株が誕生し、デビューして本物の可能性を見せています。選手末には惜しくも敗れてしまったものの、平良達郎選手が記憶に残る激闘を披露し、『ファイト・オブ・ザ・イヤー』候補の声があがるなど、フライ級1位のコンテンダー(ブランドン・ロイバル)を相手に本当に素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。
10年以上の時を経て、日本は再びこのスポーツの世界的リーダーとしての地位を確立しようとしています。日本に2度目のMMA黄金期が到来しようとしています。それを率いるのはワールドクラスの次世代日本人ファイターたちです。私たちはこれから歴史を目撃することになるでしょう。『UFC 310』は12月7日(日本時間8日)、ラスベガスのTモバイルアリーナにて開催されます。お会いできるのを楽しみにしています。ありがとうございました」