倉田永輝「これが人生の分岐点」
──今回は岩尾力選手の欠場に伴う急なオファーでしたが、話を聞いた時にはどう思いましたか?
「試合1カ月前で急な話だったんですけど、まさかこのタイミングでタイトルマッチが来るとは思ってなかったので、ラッキーだなと。『持ってるな』と思って、すぐ二つ返事で『やらせてほしい』と答えました」
──1ヵ月前から急にタイトルマッチに向けて仕上げることになったわけですが、コンディションなどの状況はどうだったんですか?
「それまでもいつもと変わらず日々鍛錬していて、次は格上とやる覚悟ができていたので。璃明武選手もその内の一人だと思っていたので、急に決まったからと言ってどうこうということはありませんでした」
──ただ、タイトルマッチが決まっていたのもあって、すぐに璃明武選手ということはないと。
「そうですね。あと2~3人、強いヤツを倒さないとたどり着けないと思っていたんですけど、どっちにしろ格上とやる覚悟だったので、変わらずという感じでした」
──もともと決まっていた同級のタイトルマッチ、「璃明武vs岩尾力」についてはどう思っていたんですか?
「岩尾選手は交通事故の前から強いのは知っていて、長期欠場から復活して連勝していくのを見ていて、璃明武選手とのタイトルマッチが決まった形ですけど、僕は璃明武選手が勝つのかなと思っていました」
──そうなんですね。その理由は?
「璃明武選手と永坂吏羅君の試合(2023年7月)だったり、岩尾選手と内田晶選手の試合を見ていて、璃明武選手の技術が岩尾選手の勢いを上回るんじゃないかと感じてました。自分がやるとしたら、璃明武選手の方が勝機は全然あると思っています」
──改めて、璃明武選手の印象は?
「本当にうまい選手で、研究力とかも長けてると思いますし、格闘技に対して頭がいい選手という印象があります。雑に入ったところに合わされないようにしないといけないなと思いますし、ヒザ蹴りや左ジャブなどの細かい技術がうまいなと思ってます」
──逆に倉田選手の方は昨年12月の龍翔戦がKO勝ち、その前の“狂拳”迅戦(2023年7月)と合わせて連勝中で、昨年、一昨年は5勝(3KO)1敗。会見では宮田充プロデューサーから「勢いを買って決めた」という言葉がありました。自分では、この好調の理由は何だと思っていますか?
「まず格闘技に対する向き合い方、考え方が変わりました。それまではちょっとテキトーだった部分があったんですけど、選手生命ってそんなに長いわけじゃないので、集中してやるようになりましたし、あと、階級を上げて減量から解放されたというのも一つですね。バンタム級の時は『これが適正体重だ』と自分に言い聞かせていた部分があったんですけど、いざ上げてみると、スーパー・バンタム級はパワーも残ってるし動きやすい感じがして、今は絶好調で動けているというのがありますね」
──なるほど。
「2021年3月の池田幸司戦で計量オーバーしてKO負けして、次の西林翔平戦(同年9月)でも負けて、一度は引退しようと考えたんです。でも「やめて何をしようかな」と考えた時に、何もなくて。最後に一回、格闘技を本気でやってみようと考えた時に、愛瑠斗戦(2022年2月)…この時も急なオファーだったんですけど、この試合でKO勝ちすることができて、『本気でやってればいけるんじゃないか』と思うようになって今に至るという感じですね」
──階級の部分に関して、実感していることは?
「以前は、試合の直前は全く動けなかったんですよね。減量のための練習という感じで。でも今はギリギリまで試合に向けて練習できてますし、試合の時もリング上でしっかりパワーが残ってる感じがして調子いいですね」
──今大会では同じKRESTから谷川聖哉選手も出場します。谷川選手は大減量しての出場なので、対照的ですね(笑)。
「そうなんですよね(笑)。ただ、僕はもともとけっこうデカくて、今もスーパー・バンタム級の中では減量が楽な方ではないと思うので、やっぱりバンタム級はちょっと間違ってましたね。プロデビューしたのが18歳で、まだ成長期で体も大きくなってきていたこともあって」
──KRESTにはそれこそチャンピオン経験者も多いですが、練習環境はどうですか?
「代表が替わったりとか、環境的に変わってきている部分もあるんですけど、偉大な先輩たちの中でちゃんと名前を残せるように、一人の選手としてしっかりやっていきたいなと思っています。強い選手が多いので、よく言えばその中で揉まれるわけですけど、ついていけなければ置いていかれるので、そうならないようにしっかり食いついていきたいなとは常々思ってます」
──環境という意味では階級も上げて、自分のやり方が整ってきたところでのタイトルマッチということで、急ではありますが、いい流れではあるわけですね。
「そうですね。自分としてはこのタイミングでやれて本当にうれしいし、ラッキーだなと思ってますね」
──どう勝ってベルトを奪いたいですか?
「僕は今22歳で、世間一般で見たら大学4年生の年なんですよね。ここで勝つか負けるかで格闘技人生が大きく変わると思っているので、絶対KO決着で決めたいと思っています。負けることは考えてないですけど、ダウンを奪われて判定負け、みたいなのが一番しょうもないと思うので、やるかやられるか、失うものはないので、ガンガンいきたいと思っています」
──その意味で璃明武選手は、ガンガンいけるし、ガンガンこられる相手なのでは?
「そう思います。璃明武選手もたぶん僕のことをちょっとナメてるじゃないけど、『ここらへんでちょっとKO勝ちで防衛したい』と狙ってると思うので、面白い試合にはなるんじゃないかと思ってます」
──初のタイトルマッチ、そしておそらく当日のメインになると思います。初体験が重なりますが、それについては?
「今は楽しみが強いですね。ずっと見てた舞台で、目指していたところだったので、ラッキーで辿り着いた舞台ではありますけど、ようやく格闘家になれた気分です。ここから格闘技の第2章というか、自分の格闘技人生の始まりだなと」
──自分がベルトを巻いているところを想像したりはしますか?
「しますね。今日も勝つ夢を見ましたし。試合が決まって1週間ぐらいはよく眠れなかったんですけど、練習して自信もついてきて、精神的に落ち着いてきたので、今はすごくいい状態です」
──勝ってベルトを掴むために、最終的に必要なものとは?
「僕は璃明武選手より技術で上回っているわけじゃないので、自分のやってきたことを信じて、気持ちで勝ちたいと思っています」
──では最後に、改めてこの試合に向けての“決意”を教えていただけますか?
「僕はデビューして4年、これが人生の分岐点で、ここで勝つと負けるとでは今後の格闘技人生が大きく変わってくると思うので、ここに全てを懸けて、1勝を絶対にもぎ取りたいと思っています」