2023年12月9日(日本時間10日)、米国ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXにて『UFC Fight Night: Song vs. Gutierrez』が開催された。
プレリミナリーでは、UFC5連勝を目指す平良達郎(THEパラエストラ沖縄)が登場。MMA9勝2敗の米国のカルロス・ヘルナンデスと対戦し、1Rに寝技で圧倒。バック・マウントを奪取すると、続く2Rに右ストレートを効かせて右から左フックでダウンを奪うと、パウンドアウト。
2R 0分55秒 TKO勝ちで、MMA戦績を15戦15勝・UFC5連勝とし、2014年5月に水垣偉弥氏が記録した日本人最多連勝記録に並んだ。
鮮烈KO勝利に、プレリミナリーファイトにもかかわらず、元UFC世界ライト級王者のチャールズ・オリベイラが「Taira is real deal(平良は本物だ)」と投稿。さらに元UFC世界バンタム級王者のアルジャメイン・スターリングも「平良は本物だ。彼が戦いに臨むときはいつも、私はポッドキャストで彼への賛辞を語ってきた。この子はどんどん良くなっていきます」と賞賛した。
試合後、ケージの中で元UFCファイターのポール・フェルダーのインタビューを受けた平良は、「柔術のスキルとかを……アイム・ハッピー、サンキュー! ずっとランキングの選手とやりたいと思っていて、次こそランキングの選手を探して誰でもいいのでやりたいです。『Where is Mokaev !?』」と、同じくUFC5連勝中のムハンマド・モカエフを指名している。
そのモカエフも、すぐにSNSで反応。「もし(アレックス)ペレスがダメになったら、平良よ、代わりに出られるように準備しておけよ。ランキングが下の相手とやりたがらない他のトップ10ファイターと違って、俺はチャンスをやるぜ、必ず受けてくれよ」と返答した。
平良がオクタゴンでコールアウトしたモカエフとは、どんな選手なのか。
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「英国の平良達郎」は将来のフライ級王者候補
平良達郎と同じフライ級で同じ23歳。UFC5勝無敗で、プロ・アマ通じて34連勝中(プロMMA11戦11勝)という驚異のプロスペクトで、日本では“英国の平良達郎”と呼ばれている。
ダゲスタン出身で、12歳の時に英国へ移住した。レスリングで英国選手権で2度優勝し、2021年にはU-23レスリング世界選手権出場。アブダビコンバット英国選手権65kg級で2度優勝という強豪グラップラー。
2023年3月大会では、初参戦のジャフェル・フィーリョにヒザ十字を極められながらも耐えてのリアネイキドチョークで逆転一本勝ち。リハビリで回復させて7カ月ぶりの試合となった10月の試合では、当時ランキング10位のティム・エリオット戦を3R肩固めで極めて、MMA11戦無敗・UFC5連勝をマークした。
本誌『ゴング格闘技』(NO.329)で、水垣偉弥氏は、そのモカエフについて、「テイクダウン能力が高く、立たれても離れずそのままもう一度寝かして相手を逃さないスタイルの持ち主。極めの強さもありとにかく組まれたら最後という戦い方ができる選手で、将来のフライ級王者候補の筆頭」と、チャンピオン候補と評する。
現在フライ級ランキング9位に位置するモカエフを照準に定めた平良は、今回の試合に向け、米国コロラドのエレベーションファイトチームで、UFC世界バンタム級4位のコーリー・サンドヘイゲンらと4週間のファイトキャンプを行ってきた。
MMAのなかで巧みな打撃とテイクダウンをミックスするサンドヘーゲンやコーチらとの練習を経て平良は、角度をつけて打ち込んだ打撃でダウンを奪うなど、立ち技の進化を見せた。
そして寝技においても平良はモカエフと渡り合うことが期待される。しかし、モカエフには抜きん出て強いレスリング力がある。
現時点で平良はモカエフをどうとらえているのか。本誌の取材に、「前戦は肩固めで勝利しましたね。強いことは強いけど、びっくりするほど強くはないという印象です。最後に勝ち切る力はすごいと思いますけれど、試合を観ていても結構粗いところはある」と、自信を語っている。
互いが望むUFC5連勝対決に機運が高まるが、モカエフが語っている通り、2024年3月2日(日本時間3日)の『UFC FIGHT NIGHT』サウジアラビア大会で、現フライ級7位のアレックス・ペレス(24勝7敗)との対戦が決まっている。
モカエフは「ペレスがダメになったら、平良が代わりに出られるように準備しておけ」と告げたが、モカエフがペレスを下した場合、6位のマネル・ケイプら上位陣との対戦も視野に入って来る。
果たして“無敗対決”は実現するか。平良は今後について「2月か3月に試合をしたいです。皆さん応援、ありがとうございます! 勝ったよ!」と語っている。