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インタビュー

【柔術】日本人初、ホイス・グレイシー柔術黒帯をMAX増澤が取得「ホイスは言いました。『競技柔術もセルフディフェンスも、いずれもが本来“柔術”であり、それが私の父、エリオが伝えていたグレイシー柔術なんだ』と」

2023/11/08 16:11
 1993年11月12日に『UFC 1』が開催されてから30周年となる2023年10月、ホイス・グレイシー(ブラジル)が日本人に初の黒帯を授与した。  ホイスの「黒帯テスト」に合格したのは、MAX増澤こと増澤慶介。10月12日から15日にかけて、米国コロラド州デンバーにて開催されたホイス自らが行う「黒帯と受験者のみが入室できる密室での過酷なテスト」に合格し、日本人として初めてホイス・グレイシー柔術の黒帯となった。  ホイス・グレイシー柔術アカデミー東京の代表を務めるMAX増澤は、「この度は、私が黒帯を取得することができたことを非常に光栄に思います。私たちの道場は、格闘技としての強さを極めることを目的とするのではなく、ごく普通の老若男女が、誰でも安心・安全にかつ効果的に護身術の“グレイシー柔術”を学べる場です。その素晴らしさを広めるべく、さらに尽力して参ります」とコメントした。  MAX増澤の指導は、ホイス・グレイシー柔術アカデミー東京の会員が、「RG360」カリキュラムとして受講が可能。同カリキュラムは、ホイスの父であり、グレイシー柔術の始祖の一人であるエリオ・グレイシーの柔術テクニックと思想を再現し、柔術のあらゆる局面を360度全て包括する柔術カリキュラムとなる。  また、今回のMAX増澤黒帯取得を記念して、ホイス・グレイシー柔術アカデミー東京の会員以外でも受講ができる「日本人初、ホイス・グレイシー柔術黒帯によるセルフディフェンスセミナー」が、2023年11月26日(日)に開催される予定。  本誌では、ホイスから黒帯を授与された増澤に話を聞いた。 黒帯テストは、第1回UFC開催の地・コロラド州デンバーで行われた ──口外無用という「ホイスの黒帯テスト」に合格されたいま、増澤さんは「ホイスの黒帯」の意味をどう考えていますか。 「そうですね……1998年の春、かなりプロレス好きな一企業駐在員としてロサンゼルスに渡った25年前、日本人には“プロレスの敵”として認識されていたトーランスのグレイシー柔術アカデミーで私は、初めてホイス・グレイシーに会いました。その体験レッスンの日に、おそらく高田延彦戦(PRIDE GRANDPRIX 2000 開幕戦)向けの練習中のホイス・グレイシーのタカの目のような精悍なカッコよさと、その練習直後に挨拶し握手した時の優しい表情に即座に惹きつけられました。  あれから25年間、ホイス・グレイシーの名は記録には残るものの、まさに今のBREAKINGDOWN世代には、昔の存在となっています。しかしその25年の間も、初めてグレイシー柔術の洗礼を受けた日から、変わらずに護身術を最優先に、『身体が小さく力が弱いものでも、てこの原理とテクニックを駆使して自分より巨大で力の強い相手の暴力から身を守る』というコンセプトは、一度も失わずに柔術の道をまい進してきました。  コロナ禍の数年を経て、賃貸契約切れなどの偶然も含め道場一度は閉じるに至るなど取り巻く環境は大きく悪化し、その中での道場再生には競技化するBJJではなく、ライフスタイルとして長く継続可能な『グレイシー柔術』の回帰が最もふさわしいと考えました。  不思議なことに、これだけブラジリアン柔術が発展し認知されているにもかかわらず、日本で、特に東京ではグレイシー柔術を伝承する道場は、非常に限られています。2000年代にあれだけ注目を集め、ホイスもヒクソンも日本に何度も来日したのに。私がホイスと出逢ってから今年で25年です。そしてホイス・グレイシーが第一回UFCに登場し、世界中の格闘技の歴史を変えたあの日から、今月11月で30年です。  今回の黒帯テストが行われた例年のホイス・グレイシー柔術ネットワークギャザリングの開催地は、奇しくも米国コロラド州デンバーでした。第1回UFC開催の地です。  このような最高のおぜん立ての中で、黒帯テストを受ける機会をもらい、これを手に入れることに私は興奮し、何としてでも合格したい! という強い思いで今回のテストに臨みました。たかが黒帯テスト、では全くありません。これまでの自分の柔術人生と、今後の人生をかけたチャレンジだと認識していました。 『黒帯テスト』は、密室の中でホイスを筆頭に、ネットワークの黒帯と、テスト受験者のみが入室できる、いわば密室での儀式のようなものです。その内容は一切口外してはならない、という約束もあります。しいて一言だけいえば、黒帯テストは想像をはるかに超える過酷な内容でした。その結果、手に入れることが出来た黒帯の価値は、言葉に表しがたい大きなものです」 ──あらためて日本でホイスの黒帯としてどのような柔術を教えていきたいと考えていますか。 「2022年12月の来日時の会話の中で、いわゆる競技のBJJが浸透している(自分の道場で育んだ生徒たちを含めた)日本の柔術環境を考えると、ホイス・グレイシー柔術カリキュラムのクラスの内容に加えて、これまでのようなスパーリングを含んだ柔術の練習を取り入れないと、上級者の引き留めが困難である、という事情について相談をしたところ、ホイス・グレイシーは私に『Max、柔術とはセルフディフェンスなんだ』と、はっきりと言いました。  現在、フィストバンプから始まる“殴らない、蹴らない”という紳士協定があり、アスファルトではない、マット敷きの安全なフロアで、レフェリーあるいはインストラクターの監視の下、時間制限の中で行われる“柔術”が大いに発展しているのがBJJの現状であり、認識となっています。そしてグレイシー柔術が推進してきた“ストリートセルフディフェンス”は“柔術”でなく“護身術”として切り分けて考えられる傾向があります。ホイスは明確にそのポイントシステムや判定に基づく『競技柔術』には賛同できないと明言していますが、打撃を含まないグラップリングの練習そのものは一切否定していません。 しかしホイスは、『そのいずれもが本来“柔術”であり、それが私の父、エリオが伝えていたグレイシー柔術なんだ』と明確に定義づけしました。つまり競技として発展した『コンペティション柔術』と『セルフディフェンス』の2つを切り離し、前者だけを称して“柔術”と定義づけることを容認できないという立場です。  確かに私も、ホイスに対し、2022年5月から採用し実施し始めた『ホイス・グレイシー柔術RG360』カリキュラムに基づき、クラスで、セルフディフェンスの練習だけを提供すているが、どうも上級者の満足度を高められない──というような言い方を当たり前のようにしていました。10年以上経験を積んだいわば一般人をはるかに超えた技術と精神力を持つ者には、路上で襲い掛かる不安に立ち向かうだけの精神力と体力は十分に備わっており、結局、長くついてきてくれて技術を身につけ、いわば強くなった生徒たちの視点を、そうでないごく普通の人の視点よりも重視していた自分に気が付きました。  その時に、自分自身で明確にホイスが目指す方向性、ホイス・グレイシー柔術ネットワークが進むべき方向とそのカリキュラム『ホイス・グレイシー柔術RG360』の本当の意味と価値が分かったのです。  常にホイスはこう言います。『私の父の教えた柔術を守っていこう』と。エリオ・グレイシーの伝えた柔術のテクニックとコンセプトは、セルフディフェンス(ホイスの言う意味の)の技術だけではなく、健康に生きるための食事方法(グレイシーダイエット)や、精神的な指針となる目標(7-5-3コードと呼ばれる、日本の武士道に基づくモットー)を含めた健康な人生を生きるための方法であるということです。  護身術を大切にする、というコンセプトは、以前の自分の道場(2022年10月の名称変更まで運営)マックス柔術アカデミー&ヨガスタジオでも常に明言しておりましたが、昨年5月に日本で唯一のホイス・グレイシー柔術ネットワーク道場を運営する立場になって以降、競技としての柔術、グラップリングのみのBJJとの差別化を意識し、よりストリートセルフディフェンスのテクニックを、グランドマスター、エリオ・グレイシーの教えに則り正しく伝えようと心がけてきました(カリキュラムの原典はエリオの遺した本です)。  2022年5月からRG360カリキュラムを紐解きながら自ら試行錯誤して研究してきたセルフディフェンスとしてのテクニック、今回の黒帯テストに向けた生徒との日本での特訓、そして何よりも直前のロサンゼルスでのホイス長男のコンリー・グレイシー(Bellator参戦中)との特訓とデンバー入りしてからの数多のホイス・グレイシー柔術ネットワーク黒帯たちとの直前の特訓から、非常に多くの知識と経験の上乗せが出来ました。  また、黒帯テストの中身は一切話すことは禁じられているのですが、テストの際にホイス・グレイシー自身と手を合わせることが出来、その経験はまさに自分のそこまでの『セルフディフェンス』の理解と経験を1段階持ち上げてくれる極めて重要な経験でした。  今回授与してもらったホイス・グレイシー柔術の黒帯は、それを象徴する表面的な変化だと考えます。これからはこれらの経験を踏まえ、ホイス・グレイシー柔術が大切にするセルフディフェンスのコンセプトとテクニックを、自分の解釈でゆがめることなく正しく伝える役割を担っていくことを心に誓いました」 ※ホイス・グレイシーとはブラジル出身の男性柔術家・総合格闘家。第一回UFC(Ultimate Fighting Championship)大会で優勝し、一躍脚光を浴びた伝説の格闘家。日本ではプロレスラーの桜庭和志や柔道家の吉田秀彦とも対戦し、話題を集めた。※グレイシー柔術とは力の弱い者がテコの力を生み出すテクニックを駆使して屈強な敵による攻撃から身を守る「護身術」として、明治時代の日本人柔道家、前田光世の指導を受けたグレイシー一族によってブラジルで発展した格闘術。 ※「RG360」ホイス・グレイシーが、父でありグレイシー柔術の始祖の一人であるエリオ・グレイシーの柔術テクニックと思想を再現し、柔術のあらゆる局面を360度全て包括する柔術カリキュラム ◆ホイス・グレイシー柔術アカデミー東京(運営会社:マックスアンドブラザーズ株式会社)代表 増澤慶介〒130-0021 東京都墨田区緑4丁目43-1 野尻ビル1階電話: 080-3450-9585
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