MMA
インタビュー

【RIZIN】西谷大成「『朝倉未来1年チャレンジ』の生活支援が無くなって、戦い方も変わった」=6月24日(土)『RIZIN.43』

2023/06/21 12:06
 2023年6月24日(土)北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナで開催される『RIZIN.43』に「朝倉未来1年チャレンジ」1期生の西谷大成(トライフォース赤坂)が出場する。  DEEPでプロデビューし、6勝5敗。2022年からは3勝1敗で、RIZIN初出場を決めた。BreakingDownでも横田一則に判定勝ちするなど4連勝したことで、世間的にはBreakingDown出身選手ととらえられているが、MMAではすべてDEEPで戦い勝ち星を積み上げてきた。 「もともとBreakingDownじゃないんですけどね。皆さん何を勘違いされているのか分からないですけど」と苦笑するが、BreakingDownに出たことで「メンタルを鍛えられた」という。  北海道大会では、格闘技のキャリアでは大先輩の初代シュートボクシング世界スーパーライト級王者・鈴木博昭(BELLWOOD GYM)と「MMA」のフェザー級で対戦する。  朝倉が、「俺のなかでは今大会で一番勝負論がある」と期待を寄せる鈴木との試合について西谷は、「“厳しい戦いにはなる”と思いますけど、全然、“厳しい相手”だとは思っていないですね。ちょうど僕が勝てるんじゃないかなという、いい相手を選んでくれたなって感じです」と語る。  公開練習では、「相手が“怪物くん”ということで、映像も全部見させてもらって。打撃の強い、いい選手ですけど、いいところを出させずに勝とうかなという感じです。打撃でも場面・場面によっては勝てる。僕がやるのはキックボクシングじゃないんで。穴がある選手だと思うので、その穴を突いて潰していけば僕の勝ちが全然あると思う」と言い、MMAではプロ11戦と鈴木の倍のキャリアを戦ってきたことについても「MMAでは僕の方が試合をしているので、上回れるかなと思います」と勝利に自信をのぞかせた。  そんな西谷に「いつまで“朝倉未来の弟子”でいるんだろう。何を追っているんだ、お前自身を見せてみろよ」という鈴木に、西谷は朝倉未来を模倣して強くなったことを隠さず、フェザー級で朝倉の盾となる構えを見せていてる。  果たして西谷は“怪物くん”超えを果たせるか。 「1年チャレンジ」で選ばれたのは時の運だった ――高校でレスリングを半年だけやったと聞いていますが、それでも県の新人戦で1位になっている。格闘技のバックボーンというのはそれ以外無いのですか? 「ほぼ無いですね。地元が岡山なんですけど、格闘技施設がまずなくて。だから、地元の地下格闘技大会があったら出て、“大会が練習”みたいな感じでした」 ――その当時は指導者というのは? 「いませんでした。我流で殴り合ってみたいな感じだったので、こっちに来てからも、最初のほうは地下格闘技時代の感じで戦っていて、でもそれじゃあ『2分の1』になっちゃうんで。やっぱり考えないといけないなっていう時期がありましたね」 ――「2分の1になっちゃう」というのは、“行って来い”の戦い方では勝つか・負けるか半々の試合になってしまうと。 「そうなんです。倒すのは倒せるんですけど、それじゃあ、あんまり勝ち切れないなと思って、戦い方を変えましたね」 ──バックボーンが無いという意味では、綺麗な打撃で勝とうなどのこだわりが薄い分、MMAとして強くなれる要素もあったのでしょうか。 「そうですね。そういうこだわりはないから、まずは自分の得意なものから伸ばそうと。センスが無いから。センスが無いというのは自分で分かってるんで」 ──その「センスが無い」という西谷選手が、「1年チャレンジ」の3人から最初にRIZIN出場を果たしました。地元から一念発起して、「朝倉未来1年チャレンジ」に応募した。その募集もたまたま目にしたそうですね。 「いや、本当にたまたまっす。“俺、呼ばれているな”と思って応募して。時の運ですね、完全に。いまだったら倍率高くて選ばれてないですから」  朝倉は西谷が「1年チャレンジ」からRIZIN出場を決めたことを自身のYouTubeで「運命を感じる」と語る。 「感慨深いよね。3年前か、三崎(優太=青汁王子)さんと俺たちが『1年チャレンジ』を始めて、いろんな人を募集して、西谷くんは、書類選考もギリギリ通過して、東京に来た3人のなかで一番センスのなかった西谷くんが、一番最初にRIZINに出場するというのも、感慨深い。人間、努力を続けたら何があるか分からない。  それに結構いろいろ運命を感じますね。俺と同じ歳(25歳)で同じ時期に出場(※2018年8月にRIZIN初参戦)だったり、ほんとうに『1年チャレンジ』とかやってよかったなって。ちゃんと練習相手になるくらい強くなったし、二期生もだんだん強くなってきているから、これ三期生、四期生と続けていきたいよね」  朝倉にとって、チャレンジ生を強くすることは、自身の練習相手を育成することでもあった。西谷は当時を「未来さん、昔はいまよりずっと厳しかったです。あの人にやられて倒れてるのに“どうしたの?”って。未来さんもいまは優しくなってしまって。愛がある殴りをしてきますから。昔は愛が無かった(苦笑)」 [nextpage] 未来さんは相手の嫌な動きをするのがすごく得意。僕もそれを真似した ──建設業に携わりながら、「1年チャレンジ」の応募を見たときに行動を起こして、500人のなかから補欠のような形で入った。住む場所が確保されて、仕事はその間、どうしていたのですか。 「当時は、ここのインストラクターをやってました。今はやってないんですけど。コロナもあって、三崎(優太)さんから1年を超えて7カ月くらい支援していただき、そこから先も未来さんが1年ほど支援してくれました」 ──そういったサポートがあった期間は勝ち負けを繰り返す、苦しい戦いも続きましたね。 「どこか甘えもあって、当時の試合は、まあ盛り上げようとはしてるんだけど、やっぱ勝ちがついてこないみたいな感じだったんです。それじゃあやっぱり自分で飯を食っていけない。盛り上げるだけじゃ。ただの二流選手になっちゃう。自分が勝つことを考え出すと、今みたいな戦い方になってくると思うんです。  だから生活支援が無くなって、戦い方ももちろん変わりましたし。練習状況も変わりました。支援してもらっているときは、無理やりでもやらなきゃいけない、やらなきゃいけないと思って、疲れてやっても意味ないときにもただ走るようにやってたんです。それで疲労が抜けないまま練習して、しっかり休んで、次の日に備えようとできなかった。いまはすごく格闘技について考える時間も増えましたね。やっぱり3年くらい続けないと人間って身につかない。昔は分かっているようでMMAの動きに連動していなかったです」 ──DEEPでは、オーソドック構えの選手を相手にサウスポー構えで戦うこともありますね。この動きは? 「本当は左右、決めてなかったんです。どっちでも良くて。もともとサウスポーでやってたんですけど、一度オーソに変えて、いまはサウスポーに戻すことが多いですね」 ――それは誰かのアドバイスもあったのですか。 「未来さんとかから言われたんです。『攻め一点集中になっちゃうときがある』と指摘され、1回戻してみようと思って」 ――しかし、今回の鈴木博昭選手はサウスポーに構えます。 「そうですね。自分はどちらも。サウスポーも使いながら、攻めのときはオーソも行きたいなと。MMAなので何でも使っていかないとなとは思っていますね」 ――DEEPでの鷹辰戦ではオーソから右を効かせて、デビュー当初から得意とするダースチョークで一本勝ち。星野戦で右のカウンターでダウンを奪われバックコントロールされた反省を活かしたのか、TATSUMI戦、高野優樹戦ではオーソの相手にサウスポーに構えて、きっちり打撃でも組みでも競り勝っての判定勝ちでした。自身の中で何か気付きがありましたか。 「自分がしたい動きとサウスポーがけっこう噛み合ってきたというのがあって。相手をコントロールしながら戦うという。それはやっぱり、練習でいつも未来さんが目の前にいるので、その距離感であったりとか、相手にとって何が嫌なのかとかを学びとって。  未来さん、相手の嫌な動きをするのがすごい得意なんで。僕もけっこう相手の嫌なところを見るのが得意だったので、そういう部分をちょっと真似できたらなと思って、けっこう練習しました。未来さんがやるような技を真似してみたり、やって行くうちに自分がしたい動きと間合い、構えが噛み合って、相手を封じ込められるようになってきましたね」 ――実力者の高野選手を相手にヒザ蹴りも含めた左の打撃でコントロールしたのは、ある種、未来選手のコピーのようでした。同時に、西谷選手らしい近い距離での打ち合いも制した。それは朝倉選手がいう「リストの強さ」がなせることなのでしょうか。 「(リストが)強いらしいんですね。まだ倒し切れてはなかったんですけど(苦笑)」  朝倉は、西谷の手首の強さについて「もともと打撃のリスト(手首)が無茶苦茶硬いんだよね。パンチが重くて手首が強いから、彼はマススパーが下手で、練習中も相手も強いと勘違いして、俺にボコボコにされてきたんだけど、まあ“そっちがそのつもりなら”とこっちもなるじゃん。でもその練習にも食らいついてきたから、打撃も良くなっているし、結構顔面にもらうところはヒヤヒヤするんだけど、威力はあるから当たったら相手も効くと思う」と評価する。 ――そして、組みの強さは、未来選手が「俺でも結構テイクダウンを切るのがキツいくらい強い。鈴木(博昭)選手は絶対テイクダウンを取られると思う。ガードを固める相手に西谷君が打撃を(上下に)散らしてタックルも入るとなると、相手はテイクダウンを切れない」と断言するほど、向上しています。前戦では、大学レスリングも経験した高野選手の組みを切って、逆にテイクダウンを奪った。ただ、DEEPでは新宿FACE大会以外は、ほぼケージで戦っていますよね。西谷選手のケージレスリングを見ると、リングでどうなりそうですか。 「そうですね……やっぱりリングだと押し込みにくいですよね。練習場所もケージなので、そこは懸念点としてもちろんありますけど……ちょっと考慮しながら戦います。正直、鈴木選手には“やることやれれば”マジで勝てると思ってます」 ――トライフォース赤坂のケージには、強豪選手も出稽古に来ていますね。よく組むのは? 「一番多いのはもちろん未来さん、それに(白川)陸斗さんです。出稽古組だと上迫博仁さんですね。BRAVEの選手たちとの練習でレスリング、グラップリングも鍛えられましたし、寝技ももちろん柔術ですごく鍛えました。それに、前回の試合から特に立ち技を強化し出して、今回もだいぶ仕上げたつもりでいます」 ――立ち技を仕上げたというのは、小倉將裕トレーナーが持つミット打ちを強化したと。ところで朝倉海選手が招聘したエリー・トレーナーにも持ってもらったりもしたのですか。 「理想形はやっぱりエリーの教えるような動きなんですけど……今の僕にはまだちょっと早いかなと。不器用なタイプなんで、1個できればそこは極わめられるんですけど、けっこう時間がかかっちゃうタイプなので、エリーのコンビネーションの種類は、海さんに合っているんだと思います」 ――そうして、いまは自分の得意な部分を連動させるなかで、結果もついてきた。これまでDEEPで切磋琢磨してきて2連勝でRIZIN参戦というのはある種、“飛び級”での出場になると思います。そんななかでDEEPでもタイトルにからめるような戦いをという思いもありますか。 「それはもちろん僕が勝っていけば。DEEPのチャンピオンたちがRIZINでトップ選手になっているわけで、こうしてRIZINで戦うチャンスを得られた以上、ここで勝たないとDEEPのチャンピオンとやらせてもらうことはまずないと思うし。勝つことでどっちの道にも繋がると思っています。まずはここからですからね。  始めたのが遅かった自分が『1年チャレンジ』を経て、こうして来れた。あのとき、たまたま選んでもらってここにいるので、恩返ししたいなと思っています。まだまだ強くなりますからね。これからを見てください。お願いします!」
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