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インタビュー

【修斗】師・松根良太と同じ21歳での戴冠なるか、修斗フライ級世界王座挑戦、平良達郎「挑戦者だけど“負けられない戦い”」=7月4日(日)大阪

2021/07/02 07:07
 2021年3月に前田吉朗をわずか1分01秒、チョークで撃破。8戦8勝無敗とした“スーパーノヴァ”平良達郎(Theパラエストラ沖縄)が7月4日、プロ修斗・大阪大会で、福田龍彌(MIBURO)の持つ修斗フライ級世界王座に挑戦する。  勝てば師である松根良太と同じ、21歳での戴冠となる。5月の連休にはパラエストラ千葉ネットワークで合宿を行い、前田戦の大勝に浮かれることなく身を引き締めた。  平良は、修斗に新たな伝説を刻むことができるか。大会がまだ6月20日に予定されていた(※7月4日に延期)5月中旬に、先輩である扇久保博正、岡田遼と練習していた平良に、話を聞いた。 実力は薄く薄くしかついてこない ──ゴールデンウイークを使い、パラエストラ千葉ネットワークへ練習に来ていたそうですね。 「合宿的に来ていました。自分の実力を知れた感じで、すごいまだまだ足りない部分があるなって分かったのでよかったです」 ──昨年1月でしたか、そのときも千葉ネットワークへ来ていましたが、出稽古はそれ以来? 「練習に来るのはあれから1年くらい空いてると思います」 ──この1年で様々な変化がありましたね。 「試合ではすごくいい結果を残せて、タイトルマッチまで行けたんですけど、沖縄である程度練習とかでも実力がついてきたなって思っていたので、こっちへ練習に来て、総合的に足りない部分だったり弱さだったりが分かって、タイトルマッチの前にすごくいい練習になりました」 ──沖縄でやっていては気づけない部分に気づくことができたと。「足りないところだらけです(苦笑)」 ──扇久保博正選手は、昨年は「同じ修斗フライ級のランカーとは練習したくない」ということで、平良選手とは手合わせしなかったそうですが、今年は実現しましたか? 「一昨日マンツーマンでやってもらって強かったです(苦笑)。5分5Rやって、ずっと削られて首を絞められてっていう感じです(苦笑)。強いっす」 ──合宿最終日は岡田遼選手とのマンツーマンでしたが、感想は? 「似たような感想になるんですけど、終始コントロールされて、やっぱりキツいです、強い選手と5分3Rとかスパーリングをやるのは。改めて思いました」 ──以前沖縄での練習を見せてもらいましたが、動きのよさを存分に見せていたので、今日は全く様子が違いました。 「やっぱりトップ選手とこうやってできるのはすごいありがたいなって思いました。沖縄ではできないので。でも……沖縄でも伸びると思いますけど、もうそろそろかなって自分では思ってます。今は大学生なので、この最後の1年間を沖縄で頑張って、それから先はちょっと分からないですけど、ここ(千葉)に来る機会も増やしたいですし、松根会長と相談しながら、もっと強くなる道を選びたいと思います」 ──タイトルマッチも決まり勝負の年ですが、大学生活も最後の1年なのですね。 「大学もすごい大変で、コロナなので課題が出ていて課題をやらないといけないし、練習して疲れてるし……最後の1年だから頑張りたいんですけど、辞めちゃうかもしれないです」 ──そういう思いを聞くと、「もっと強くなる道を選びたい」という先ほどの言葉もより重みを持って響いてきます。 「やっぱりこれで稼ぎたいので、強くならないとなって本当に思います」 ──前回は千葉ネットワークへの出稽古を経験して意識が変わったと言われていましたが、今回はいかがですか。 「やることが多いなぁっていう感じです。ここでやった選手と次の相手でタイプが違うんですけど、次の試合とは別に、いちファイターとして、もっと強くならなければいけない部分があるなって思います」 ──それはどういった部分ですか? 「ディフェンス能力がそこまでないので、やられる練習というかそういうのが足りてない気がして、もっともっとやられて逃げる技術や、そこから攻め返す気持ちと技術だったり、そういうものが全然足りないと思ったので、もっとトップ選手に食らいつけるようになりたいです」 ──沖縄の練習ではそこまで攻め込まれることがないでしょうか。「攻め込まれることもあるんですけど暴れたら何とか立てたりするので、でもこっちでは一つひとつしっかり潰されて、そこで逃げれなくて体力が奪われたりするので、やっぱりこういう練習を何回も重ねていかないと強くなれないなって思いました。今回はそういう練習ができたので、改めてありがたいなと思います」 ──今回の出稽古でたくさんの方と練習をしたと思いますが、中でも印象に残ったのはやはり扇久保選手と岡田選手でしょうか。 「はい、岡田さんと扇久保さんです。修斗のチャンピンになるのにもっと強くないとなって思います。今じゃまだ修斗のベルトにふさわしい実力がないので、試合までの期間で強くなれるところまで強くなって試合に挑みたいと思います(※取材は5月中旬)」 ──「ファイターとして強くならなければいけない」と言われましたが、まずは目の前のフライ級王座戦ですね。 「まず対戦相手の福田さんの対策をして、試合とは別にMMAファイターとして強くならないと今後勝てないので、もっと強くなるために練習しないとなって思います」 ──逆に言えば、まだ伸びしろの部分が多くあるということではないでしょうか。 「伸びしろがあるってずっと思っていると時が過ぎちゃいそうなので、それで終わらないよう頑張りたいです」 ──ですが実際に伸びている実感はあるのではないですか? 「長い目で見たら20歳の時より21歳の方が強くなってると思うんですけど、まだ日本のトップ選手と比べたら弱いので、もっと1年で伸びないといけないなと思います」 ──では、そんな中で挑む王者・福田龍彌選手の印象をお願いします。 「サウスポーでストライカーっていう印象で、蹴りもパンチもどっちもバランスよく強いので、そこは注意しながら全局面で戦って、5分5Rの中でどこかでフィニッシュできるような試合がしたいです」 ──デビュー戦以降、前田吉朗戦まで対サウスポーがなかったそうですが、前回の対策を積んだことでサウスポーに対する慣れはできました? 「結構サウスポーの人との練習機会も増えて、この前の試合でもいろいろ試したかったんですけど、そこはあんまりできなかったので、次のタイトルマッチで1Rとか様子を見ながら、打撃の緊張感だったりを自分で養いたいと思います」 ──前田戦は短期決着でしたが、サウスポー対策の成果で、違和感や抵抗を感じることがなかったのでスムーズに攻めを進められたのかと思いました。 「なんか向き合った感じで負ける気があんまりしなくて、それで結構思いっきり行けた感じがあります」 ──「向き合った感じで負ける気がしない」、そういったものは普段の試合でもいつも感じたりするのでしょうか。 「うーん……分かるっすね。ケージとかリングに入って相手しか見えなくなって集中できてるなっていうのが分かって、そういう時はいい動きができる感じがします」 ──本番に強いタイプなのでしょうか? 「練習でボロボロにされちゃうので、本番で強いタイプだと思います(笑)」 ──格闘技以前にやっていた野球の時はどうでした? 「野球の時は緊張しちゃってエラーをするタイプでした(苦笑)。格闘技は本番に強いタイプなのかもしれないです。野球の時は緊張して、ピンチの時とかは、自分の方にボール飛んで来ないでほしいなって思ったりしていました」 ──でも格闘技は先ほどあったようにリングやケージに入ればドギマギすることなく腹が据わると。 「はい。野球はやっぱりチームプレーなので、自分がチャンスの時に打てなかったりしたらみんな落ち込んじゃうので、そこのプレッシャーに耐えれなかったっていうのがあります」 ──では、今は自分のもの・自分の戦いという解釈、割り切りなのでしょうか。 「今はそうですね。自分が負けちゃったら悲しむ人がいるんですけど、負けたら自分の責任なので、そこのメンタルの違いは大きいかもしれないです。野球の時は周りのことを考えちゃっていました」 ──平良選手は普段からそうやって周りに気を遣うタイプなのですか? 「仲いい人とそうでない人でちょっと分かれるんですけど、もしかしたら気を遣うタイプかもしれないです。そうやってたまに言われます。野球の時は周りに気を遣うのと、エラーしてコーチに怒られるのが嫌だなっていうのがありました」 [nextpage] 「まだ若いから負けてもいい」とも思ってない ──昨年のインタビューで打撃の距離感は練習と試合で違うということを言われていて、でもその違いの調整は試合が始まり割と早い段階でできるものですか? 「打撃の距離感はやっぱり違うんですけど、相手も自分の打撃を練習の時よりは警戒してくれるので、逆にやりやすさを感じたりもします」 ──なるほど。福田選手はストライカーなので、その空間把握がどれだけ早くできるかが試合の鍵となりそうですね。 「どんな感じなのかっていうのを、1回感じてみたいです」 ──ですが、そういった調整・把握は試合の中でも早い段階でできると。 「まだ8戦しかしてなくて経験してないことがたくさんあるのでどうか分からないですけど、これまでは」 ──2020年1月に対戦したチーム・ラカイのジャレッド ライアン アルマザン(2R 0分19秒で平良がKO勝ち)選手は、やり辛そうな相手でしたが、苦にした様子を見せませんでした。 「フィリピンの相手は思ったよりカーフキックとかも来なくてやりやすかったです」 ──以前はプレッシャーに弱かったのが、格闘技に来て強くなったのは面白いですね。 「若干プレッシャーに強くなったのかなって。野球は気持ちで負けてました(笑)」 ──格闘技をやっていく中でそうした精神的強さを身につけていったのでしょうか。 「最初アマチュアの頃はものすごい緊張して力んで、すごい疲れたりとかあったんですけど、だんだん慣れてきて、慣れてきてっていう感じです」 ──以前は修斗のベルトを獲ってRIZIN、UFCを目指したいとのことでしたが、今の気持ちはいかがですか? 「今はRIZIN、UFCに行きたいっていう気持ちもあるんですけど、まず修斗のベルトしか考えていなくて、それで勝ってなるようになればいいかなって感じです」 ──先輩たちの姿を見ていて一戦一戦が大事だと話をしていました。今回王座奪取がなれば、奇しくも師である松根良太代表が果たした21歳4カ月24日と全く同じ形での戴冠となります(※緊急事態宣言の延長で大会が7月4日に延期)。 「できれば一緒の方がロマンチックでいいんですけど、2、3日は誤差があるんじゃないかと思うので、ちょっと自分でも数えてみます」 ──あまりそういうことを気にしない現実的なタイプなのですか(苦笑)? 「現実的なタイプではないんですけど、一緒っていうのが信じられなくて」 ──でも、松根代表の戴冠から18年経って、弟子が同じ年齢でチャンピオンになったらドラマチックだと思います。平良選手本人の意気込みとしてはいかがでしょうか。 「アマチュア修斗の時から先輩の仲宗根武蔵さんとかがプロで戦ってるのを見ていて、『こんな強い人でも負けちゃうんだ』って思ったりして、『プロの世界は厳しいんだな』と思っていました。でも自分は幸いにも勝ち続けられているので、もうここまで来たらちょっと早いんですけど、チャンピオンベルトまで辿り着きたいなって思います」 ──身をもって知る強い人でも負けてしまう厳しい世界ですが、そんな中でも平良選手は無敗で来ています。 「運がいいっていうのもあるんですけど、なんだかんだで勝てていて、そこは自分でもビックリしています。こんなに早くタイトル戦ができるとは思ってなかったので」 ──当然無敗は崩したくないですよね。 「記録を崩したくないっていうのもありますし、まだ若いから負けてもいい、とも思ってないので、もっと早く実力が追いついてくるように頑張ります」 ──これでいいとも、若いから負けていいとも思っていないと。 「もちろんです。このまま行ったらどこかでボコボコにされちゃうので」 ──では、今必死に実力を伸ばしていると。 「実力は薄く薄くしかついてこないと思うので頑張ります」 ──浮かれたところがなく、しっかり地に足をつけて先を見越していますね。では、チャンピオンシップへ向け改めての意気込みを最後にお願いします。 「本当に負けたら今までの成績とかも全部崩れる、無くなっちゃうと思っていますし、挑戦者ですけど負けられない戦いだと思っているので、死んでも勝つぐらいの気持ちで、試合を迎えたいと思います」 ──負けられない戦いですが、かといって守るような気持ちはないですよね。 「はい、もう攻めて攻めて、キツい試合をして勝つぐらいの気持ちで行こうかなって思ってます。たぶん1Rでスコーンとは勝てないと思うので、逆に削り合いみたいな展開になればなって思います」 平良達郎/Taira Tatsuro 2000年1月27日、沖縄県那覇市出身。高校時代にTheパラエストラ沖縄に入門し、2017年9月に全日本アマチュア修斗で優勝。アマ修斗10戦10勝でプロ昇格を果たす。2018年、プロ修斗新人王&MVPを獲得。20年にチーム・ラカイのジャレッド・ライアン・アルマザン、清水清隆を破り、21年3月には前田吉朗に初回一本勝ち。プロ8戦無敗、修斗世界フライ級ランキング1位。7月4日、王者・福田龍彌に挑む。Theパラエストラ沖縄所属。 text by Hasegawa Ryo, photos by Sakamoto Isamu 平良の挑戦を受ける第7代修斗世界フライ級王者・福田龍彌 福田龍彌は中学でのムエタイ経験後、PUREBRED京都入門。2020年7月、地元・関西で前田吉朗にカーフキックを効かせ、3RにパウンドでKOし暫定王者に。2021年1月、前王者・扇久保の返上を受け正規王者に認定された。再びの関西大会で最強の挑戦者を迎え撃つ。 【写真】2020年7月、前田吉朗を3R 4分57秒、TKOに下した福田龍彌(C)SUSUMU NAGAO /SUSTAIN  大会の模様は、2021年7月4日(日)13時から20時まで、ABEMA「格闘チャンネル」にて配信される。
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