2025年8月29日(金)東京・後楽園ホール『KNOCK OUT.56 New beginning』(U-NEXT配信)にて、パウンド、サッカーキック、踏み付け、ヒジ打ちありの“究極打撃格闘技ルール”UNLIMITEDに初挑戦する松嶋こよみ(IDEA ASAKUSA)のインタビューが主催者を通じて届いた。
松嶋は散打とボクシングをバックボーンに持つ、MMA戦績7勝(3KO)2敗のジャン・チャオ(中国/中山拓武ジム/CFP)と対戦する。
こんなのやる人がいるんだと思ってた
──今回はUNLIMITEDルールで初参戦となりました。MMAの試合がなかなか組まれないという状況の中、でもまさかこのルールで、という感じだったのでは?
「そうですね。やっぱりMMAで試合をしたいという思いはすごくあったんですけど、とはいえ、待っている間どうしようかなという中でこういうお話をいただいて。キックボクサーだったりムエタイ・ファイターだったり、打撃の強い選手と戦えるということを考えると、自分のMMAにさらにいいアクセントになるなと思い、『いいお話だな』と思って試合を決めました」
──そこに至るのはどういうつながりだったんですか?
「以前から良太郎さんにセコンドについてもらっていて、team AKATSUKIにも練習に行っていたので、その流れでつないでいただいた感じですね」
──そのオファーが来るまで、UNLIMITEDの試合に関心はあったんですか?
「関心というほどではないんですけど、ONEだったりでムエタイがオープンフィンガーグローブ(OFG)でやるようになったりして、いずれはもっとMMAに近いものも出てくるんじゃないかなと思ってたんです。そこに、UNLIMITEDがさらにMMAに近くて過激なルールとして出てきて、『こんなのやる人がいるんだな』と思ってました(笑)。その頃は、まさか自分がやることになるとは思ってなかったですけど(笑)」
──UNLIMITEDも試合数を重ねてきて、選手や指導者の間でも「MMAに近い」「いや、そうじゃない」といろいろな意見があります。松嶋選手の実感で言うと?
「ラウンドの時間だったりブレイクの早さでいうと、『打撃にテイクダウンがついただけ』というイメージかなと思っています。シュートボクシングにグラウンドが加わった感じというか。とはいえ、MMAファイターの方が投げも組みもできるので、MMAに近いというよりは、『打撃寄りのMMA』という感じかなと思ってますね」
──KNOCK OUTというイベントについてはどうですか?
「僕はもともとキックボクシングの試合を見るのが大好きで、以前のKNOCK OUT、那須川天心選手とか、それこそMMA選手で言うと金原正徳さんが出ていた時代からよく見ていて、好きな団体でした。だからこういった大会に出られるのはすごくうれしいです」
──そして今回の試合は八角形リングで行われますが、そこは?
「たまに海外の大会でそういうところもありますが、そこはあまり気にはしていなくて。ケージじゃなくてリングなので、ロープの際のあたりは気をつけたいとは思っています」
──今回は中国のジャン・チャオ選手との対戦になりました。対戦相手候補は複数いたんですか?
「自分の希望としては、キックボクサーやムエタイの選手、打撃の強い選手と打撃で戦いたいと言っていたんですが、そこでは決まらず、こういう形になりました。ただ、あまり侮れない相手だなとは考えています」
──ジャン・チャオ選手の印象は?
「試合の映像をチラッと見た感じでは、フレームも大きいし、パワーも間違いなくありますよね。動きが固い分、パンチとかも力があるんじゃないかと考えています」
──一番警戒するのはそこですか?
「そうですね。まあ、スピードはそんなにないと思うんですけど、前手のジャブとかはけっこう鋭く打ってくるので、かち合う感じにはならないようにしたいなと思っています」
【写真】現在RIZINで活躍するダウトベック(右)と2024年1月に対戦している松嶋──どう勝ちたいと思っていますか?
「せっかくKNOCK OUTのUNLIMITEDというルールなので、ただただ普通に勝つというのではなくて、このルールでまだ誰も使ってないであろう技とかを見つけたいなと思っています。加えて、自分のMMAをさらによくしていけるようにというのを考えて試合に臨みたいです」
──松嶋選手の場合は、本道はあくまでMMAということですよね。
「ですね。『今からUNLIMITEDの選手になります!』ということではないというか。もちろん、またいい相手との試合が組まれるお話がいただけるようであれば、また出ることもあるでしょうけど、基本的にはMMAを自分の軸にしていくというのは変わらないので」
──参戦が発表された時は、どういう反響でしたか?
「身内からは『いい試合なんじゃないか』と言われることが多かったですね。試合が組まれなくて、次がいつになるか分からない現状があったので、『こういう話をもらえてよかったね』という声もありましたし、それこそ良太郎さんは『このルールでも絶対強いはずだから楽しみ』と言って僕を推薦してくれていたみたいなので、そういうのを裏切らないように頑張りたいですね。まあ、MMAじゃないというところで、SNSでは批判的なことを言われたりもしましたけど」
──まあ、ネットはいろんなことを言ってくる人がいますからね。ただ松嶋選手はMMAでも実績があるので、こういうルールに臨むにはリスクもあるかと思うんですが、そこはいかがですか?
「リスクについてはあまり考えなかったですね。オファーをいただいてから今まで、『こういうリスクがあるな』というのは出てきてなくて。もちろん実戦ではあるんですけど、いい影響しかないんじゃないかと、自分の中では捉えてるんですね。負ける可能性もありますけど、それを気にしていたらどの試合もリスクになってしまうので、そのへんを考えると、そういうリスクはなく、挑めるんじゃないかと思っています」
──ところで、今回から所属が「IDEA ASAKUSA」に変わりましたよね。これは松嶋選手が代表になるということですよね?
「そうですね。以前の代表が亡くなって、ジムを潰すか今後どうしていくかというのを考えて、自分がやっていくということに決めました。ちょうど、自分でジムをやっていこうと決めた頃にこの試合のオファーをいただいたんですね。ジムを宣伝するにしても、やっぱり自分が試合をしないと、こういう風に話を聞かれることもないので、ありがたいなと思いますね」
──ジムとして一発目の試合としても、いい結果を出したいところですね。
「本当に。ジムの人たちも応援ができるというのが、一つになれる機会でもあるので、自分が戦うことで、みんながついてきてもらえるように頑張るしかないので、やっていこうと思っています」
──では最後に、今回の試合で一番注目してほしいポイントはどこでしょう?
「UNLIMITEDルールは、まだそこまで怖さとかが伝わっていない気がするので、僕の試合を見て他の選手たちが『これはやりたくないな』と思うような試合をできたらなと思っています。『誰だよ、こんな危ないルールを作ったのは!』と思われるような試合ですね」
──あまりにヤバくてUNLIMITEDがやれなくなってしまうような。
「はい、最後の試合になるかもしれません(笑)」
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対戦相手のジャン・チャオ「君子、重からざれば則ち威あらず」
──初来日ですが、日本の格闘技、そしてKNOCK OUTについては何か認識はありますか?
「はい、今回が初めての訪日になります。私の中で日本を代表する格闘技と言えば、やはり相撲と空手です。KNOCK OUTに対する認識は、よりオープンなルールで観る者を引き付けているイベントだということです。試合はとてもエキサイティングで迫力満点ですね」
──今回はUNLIMITEDルールでの試合ですが、これまでのUNLIMITEDルールの試合を見て、このルールでの戦いをどうイメージしていますか?
「改めてルールを確認しましたが、非常にオープンなルールだと感じています。他のイベントと比べて打撃のルールに制限が少なく、より実戦に近い感覚を味わえるのかなと。とても良いと思いますよ」
──また今回は八角形リングでの試合です。通常のリングやケージとどう違うとイメージしていますか?
「八角形リングで試合をするのは今回が初めてです。中国ではケージで戦っているので、それに比べると選手にとってはより広い視野を得られるのではないでしょうか」
──対戦相手の松嶋こよみ選手の印象と警戒すべきと思う点はどこですか?
「松嶋選手はレスリングと柔術系のスタイルだと思います。試合では彼のテイクダウンに気をつけなくてはならないですね」
──試合ではどのように戦い、どのように勝ちたいと思っていますか?
「やはり得意のパンチとキックで攻めていきたいです。私のパンチとキックはとても重いので、そこは優位に立っていると思います。最後はKOで試合を制したいです」
──これまでの試合で、得意なスタイル、得意技はどういうものですか?
「私のファイトスタイルは流動的です。相手が足を止めている時はスタンドの打撃で勝負し、相手がステップを多用するようであればグランドに持ち込んで勝負します」
──これまでの格闘技キャリアを教えてください。
「ベースとなっているのは散打ですね。それから2017年にボクシングを始め、翌年からボクシングの試合に出場しました。2019年には総合格闘技に転向し、以後はずっと総合格闘技の試合に参戦しています。これまでの経験から言えることは、勇気を持って恐れないことが大切だと考えています。この競技は勇敢な者が行うスポーツであり、精神力が非常に重要になります。そして恐れずに戦うことで自分の弱点を発見して、より高いレベルに自分を導いていけると信じています」
──これまで、中国以外での試合経験はありますか?
「世界的なパンデミックの時期にプロの試合に出場するようになったので、海外での試合は今回が初めてになります」
──日本で戦うにあたって、何か目標などはありますか?
「KNOCK OUTのファンの皆さんの記憶に残るよう、見事に試合を制することです」
──松嶋選手にメッセージをお願いします。
「中国の「君子、重からざれば則ち威あらず」(訳者注:「重々しい雰囲気がなければ威厳がない」という意味)という論語の言葉をメッセージとして送ります。いろいろな解釈がありますが、格闘技においては『攻撃をする時に充分な重さがないと、威力も半減する』と捉えています。松嶋選手、私の強力で重いパンチを迎え撃つ準備をしておいてください」
──今回の試合で一番注目してほしいポイントはどこでしょう?
「ファンの皆さん、私たちのバチバチの殴り合いにぜひ注目してください。2人の試合で会場全体を熱狂させ、気分を最高潮にさせてみせますよ」