キックボクシング
インタビュー

【KNOCK OUT】“番狂わせ連発男”がゴンナパーに挑む、下地奏人「本当の意味で勝つというのはKOじゃなく判定」その理由

2025/08/13 14:08
 2025年8月29日(金)東京・後楽園ホール『KNOCK OUT.56 New beginning』にて、スーパーファイトのKNOCK OUT-REDライト級3分3R延長1Rで、ゴンナパー・ウィラサクレック(タイ/ウィラサクレック・フェアテックスジム)と対戦する下地奏人(フリー)のインタビューが主催者を通じて届いた。  下地は2024年8月に髙橋亨汰を延長戦で破る番狂わせ、11月にカンボジアで行われたクンクメールとの対抗戦でも初回KO勝利を収めると、12月には「KNOCK OUT-REDスーパーフェザー級王座決定トーナメント」準決勝で、久井大夢を破ったロムイーサンに1Rで右ハイキックによるKO勝ちの番狂わせ。決勝では久井に判定負けで王座獲得はならず。2025年4月に試合が決まっていたが、網膜裂孔でドクターストップがかかっていた。戦績は12勝(4KO)2敗。  今回はフリーになっての復帰戦、約8カ月ぶりの試合で一階級上の現役王者と対戦する。またも番狂わせなるか。 『KOで勝つ』というのは―― ──4月の優翔戦がケガで欠場となり、試合出場は12月30日の横浜武道館大会以来となりました。ケガの状況はどんな感じだったんですか? 「3月下旬頃、練習中のケガで両目の網膜が裂孔を起こしてしまって、そこから2カ月ぐらいはウォーキングと軽い自重トレーニングぐらいしかできなかったですね。血圧が上がると眼圧が上がって目に負担がかかるので、『汗をかくような行為は絶対にしないで』と言われたので」 ──体は動くのに運動ができないというのは厳しいですね。 「難しかったですね。いつもと全く違ったので、違和感しかなかったです。その間はとにかく大学に行ってました。ちょうどレポートとかが多くなる時期だったので、そっちを進めてました」 ──勉強することで血圧が上がったりは…。 「それはなかったです(笑)。5月頃から少しずつ体を動かせるようになったんですけど、6月半ばまではスパーリングもできなくて。そこまでは、強度を上げたランニングとか、自重トレーニングも強度を上げてやったりしていました」 ──でも3カ月ぐらいトレーニングができないと、筋力も落ちたのでは? 「そうですね。スタミナも落ちてるなと感じましたし、久々にそれだけ休んだ分、衰えはありました。でもある意味、『リセット』みたいな感じにも捉えられたんですよ。『以前だったらこういうこともできたのに』と思っていたこととかもあったので、それを改めて取り入れたりとかはできました」 ──そして、今回の試合からフリーとして出場することになりました。 「はい。ジムは離れたんですけど、6月、7月あたりから出稽古という形でスパーに行かせていただくようになって、今も交流は途切れず続いています」 ──それはよかったですね。今は、メインの練習環境はどうなっているんですか? 「夜はボクシングだったり、他のジムにスパーリングしに行ったりとか、毎日いろんなところに出稽古に行っています。その練習前とか午前中とかは家とか大学の柔道場とかでミットをやったりしています」 ──ミットは誰が? 「2つ下の弟が持ってくれています」 ──そうなんですか! 「弟はアマチュアでキックをやっていて、高校では大学進学に向けて実績づくりのためにボクシングに行ったんです。それで沖縄県高校新人大会で優勝して、そこからはボクシングも習いつつ、この先どうしようかという感じなんです。自分が言うのも何ですけど、弟は沖縄で過去イチのセンスを持ってると思います。だから、怖いけど、弟のプロデビューも見てみたいなと思っています」 ──プロデビューとなると、ボクシングで? 「いえ、ボクシングは合わないと思うので、キックの方がいいかなと思っていて。本人はまだ迷ってるみたいで、きっかけがあればという感じですけど」 ──それは実現したら楽しみですね。では、今の下地選手は以前のように先生やトレーナーがいるという状況ではないんですね。 「そうですね。パンチに関してはボクシングジムの会長が教えてくれていますけど。環境が変わって、最初は不安もあったんですけど、だんだん形になってきていて、今はこの環境に慣れてきていますね。定着してきてるなと感じているので、できるところまでこの状態でチャレンジしてみたいと思っています」 ──そうなっての第1戦がゴンナパー・ウィラサクレック選手ということですね。しかし負傷欠場明け、新たな環境で挑むには、現役王者でメチャクチャ強い相手ですね。 「そうですね(笑)。でもある意味チャンスなので、そこはうれしいです」 ──もう、ゴンナパー選手に関しては印象を聞くのも今さらという感じもしますが、6月に新王者となった重森陽太戦はどう見ましたか? 「フックが見えづらいんだろうなと思いました。2月の古村匡平戦も見たんですけど、経験がある分、タイミング重視の技術タイプの選手には強いんだろうなと思いますね。自分も技術はあると思ってるんですけど、スピードだったり、若手の勢いというのもあるので、そこで違う試合が見せられるかなと思っています」 ──しかし、あの重森選手があの倒され方をしたのは…。 「ビックリはしました。あれを見ると、いつもの試合よりワクワクというよりも『怖いな』という思いがなくはないですよね。でも、まだワクワクの方が勝っているし、勝つ自信もあるからこそ試合を望んだので」 ──最終的にはどう勝つイメージを持っているんですか? 「今のところは、パンチで倒すのかなと思っています。でも、年末のロムイーサン戦みたいに、他の技が入りそうだったら狙っていきたいなとも思っていて。イメージはパンチなんですけど、あまり固めず、いろんな技で倒せるようにしたいなと思っています」 ──「倒す」というところは決まっているんですね。 「はい。やっぱり倒して勝つのが一番なので」 ──ただ、ここで下地選手が倒して勝ったら、けっこうな事態ですよ。 「そうですかね? 思うんですけど、自分の中では倒すというのは、どっちかというと楽な勝ち方なんですよ」 ──えっ、そうなんですか? 「判定で完封して勝つ方が『運を使わずに実力で勝った』という実感があると思うんですよね。だからゴンナパー選手にも本当の意味で勝つというのは、KOじゃなく判定で勝った時なのかなと思ってはいるんです。だから『KOで勝つ』というのは、逃げてるのに近いニュアンスもあるのかなと。今回はとりあえずKOで勝って、ダイレクト・リマッチになったら判定で完封して、本当の意味で勝つというのを目指したいなと思っています」 ──今、サラッと言いましたが、ダイレクト・リマッチということはREDライト級のタイトルマッチということですよね? 「そうなりますよね(笑)。そこなんですよ! マジでそこなんです(笑)。スーパーフェザー級もやり残していて、そのタイトルも獲りたいんですよ。でもここで勝っちゃったら、流れ的にライト級も獲らなきゃいけなくなっちゃうので…そこは贅沢な悩みですね。自分の気持ちとしてはスーパーフェザー級を獲りにいきたいんですけど。今回、もちろん勝つつもりなので、そこはちゃんと考えないとと思っています」 ──まあ、同時2階級制覇の前例もありますからね。REDスーパーフェザー級には、軍司泰斗選手も参入してきそうですが。 「軍司選手にはぜひぜひフェザー級で行ってもらいたいんですけど(笑)、知名度もあるしオイシイ相手でもありますよね」 ──もしもゴンナパー選手、軍司選手に連勝するようなら、ある意味K-1王者みたいなものですよね(笑)。 「ああ、確かに(笑)。それこそ2人をパンチで倒したりしたら。そう考えると、それぞれ大変な相手ですけど、やりがいはメチャクチャありますね。そうするためにも、ここはいい形で勝たないとなと思います。今は、以前やっていなかったボクシングジムにも通い始めて、倒し切る力はこれからどんどん上がっていきそうな気がしてるんですよね。だからこれからさらにKNOCK OUTらしい試合が見せられると思います」 ──手応えがありそうですね。 「そうですね。自分の中でもパンチがいい方向に変わってきているなと感じているので、そこは自信になってきています。あとは試合で出すのが楽しみですね」 ──あと、今回は8角形リングでの試合になります。そこはどうイメージしていますか? 「やりやすいかなと思っています。そこはゴンナパー選手にとっても未知の部分だろうし、お互いにとって不確定要素じゃないですか。自分にとっては、そこが勝率を上げるカギの一つだと思っているので、8角形リングでやるというのはワクワクするし、うれしいですね」 ──新体制第1弾だし、強い相手で勝てばその先も開けそうだし、8角形リングだし…と、楽しみな部分もかなり大きいですね。 「そうですね。そう考えると、他の試合とは違うなと思います。年末の試合よりも大きいかなと」 ──では最後に、今回の試合で一番注目してほしいポイントはどこでしょう? 「新しい体制になって、また新しく強くなった下地奏人に注目してほしいです。そして、KOで勝てる姿を見せて、沖縄で格闘技をやっている人たちに『可能性の星』として見てもらえればと思っています」
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