2024年11月9日(土)午前10時から、タイ・バンコク・ルンピニースタジアムにて『ONE 169: Malykhin vs. Kane』(U-NEXT配信)が開催された。
▼ONEヘビー級MMA世界選手権試合 5分5R×アナトリー・マリキン(ロシア)[判定1-2]〇オマール・ケイン(セネガル)※ケインが新王者に
ロシアケメロヴォ州出身のアナトリー・マリキンは、ONEミドル級、ライトヘビー級、ヘビー級とONE史上初の三階級制覇王者。MMA14戦全勝でフィニッシュ率100%を誇る。
2024年3月の前戦ライニアー・デ・リダー(11月10日のUFCに参戦)で1R TKO勝ちでミドル級王座を獲得。今回のヘビー級王座を防衛のために2階級落とすことになる。
挑戦者オマール・ケインはセネガル相撲王者。ONE6勝1敗で黒星は2021年のキリル・グリシェンコ戦の2R TKO負けのみ。その後、バトラズ・ガザエフ、ジャスール・ミルザムハメドフ、マーカス・アルメイダ、2024年7月に同じセネガルのブシェ・ケチャップを1R KOに下している。
マリキンの洗練されたボクシングと強力なレスリングのケイン。両者ともに一瞬で試合を終わらせるパワーを持っているヘビー級王座戦だ。
1R、109kgのマリキンは右ボデイ打ち、117kgのケインは左ミドルを当てる。右を打つマリキンに、ケインはダブルレッグで走り込んでテイクダウン!
立ち際にパウンドするケイン。マリキンは立ち上がり、バッククリンチのケインは、リフトしテイクダウンを狙うが、持ち上げられたマリキンのロープ掴みでハーブ・ディーンレフェリーが注意。
同じポジションで再開もコーナー背に正対したマリキン。押し込むケインは左差しから股をすくいに。腰を落として凌ぐマリキンを崩すと、またもマリキンがロープにひっかけ、イエローカード。ケインの左差しから再開もゴング。
2R、サウスポー構えのケイン。右と左が交錯し、組むケインに押し込むマリキンが左ヒザ。コーナー背にするキンは体を入れ替え、左を振る。マリキンの打ち返しに組むケイン。グローブ掴みのケインに注意。
再開、左前蹴りを見せるケイン、マリキンは右を振って組むが、体を入れ替え押し込むケイン。離れるマリキンにケインは左ハイ。右ジャブ。マリキンの右をかわしてダブルレッグも切って押し込むマリキンは細かい右ヒザもブレーク。
右ボデイ打ちのマリキン。ケインのシングルレッグの動きにスプロールする。マリキンが圧力をかけてゴング。
3R、左ァッパーのケインに右を当てるマリキン。さらに左右から右を当てるが、コーナー背にクリンチのケイン。ブレーク。右ストレートで圧力をかけるマリキンに、コーナー背にするケインは左を返す。ブレーク。
なおもじりじり圧力をかけるマリキンは右ボデイストレートから左フックと対角攻撃。マリキンの右に右を当て返すケインが押し戻す。中央で組む両者。左差しで押し込むマリキン。ブレーク。右から左のマリキンをかわすケイン。
4R、オーソに変えて右カーフのケイン、サウスポー構えになり左ハイをブロック上の右腕に当てる。左を差して押し込むマリキン。コーナー背にして凌ぐケイン。ブレーク。
サウスポー構えのケインは左右を振って、ダブルレッグへ。コーナー背にしてディフェンスのケインにブレーク。右ボデイから入るマリキンは、ケインをコーナーに詰めて右! さらに右を突き刺すが、ケインも右フック、左ミドル。
5R、サウスポー構えから右前手フックを当てたケイン。腰を落としたマリキンは立ち上がり。ケインのダブルレッグを差し上げ、コーナー背に押し合い。ブーイングも。スタンド再開。前に詰めるケインはダブルレッグもケインはコーナー背に凌ぐ。
ブレーク。喧嘩四つで前手争いで拳を持ち合い、詰めるマリキンは右を振って前に。またもコーナー背にして差し上げるケイン。ブレーク。じりじりと詰めるマリキンは右前蹴りもスピードに欠ける。ケインは左ミドルを突いたところでゴング。
判定は2-1でケインが勝利。新王者に輝いた。
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▼ONEフライ級ムエタイ世界王座戦(※変則)135.5ポンド(61.46kg)キャッチウェイト 3分5R〇ロッタン・ジットムアンノン(タイ)[判定3-0]×ジェイコブ・スミス(英国)※ロッタンが計量ミスで王座はく奪。ファイトマネーの20%の罰金。スミスが勝った場合のみ王座獲得。
ロッタンは2018年3月にスアキムを破り日本でも名が知られるようになり、同年6月にRISEに初来日。那須川天心とRISE世界フェザー級王座を争い、延長戦の末に敗れるも那須川を追い詰めて一躍人気選手となった。同年9月からONEに参戦し、2019年10月にボルター・ゴンサルベスを破りONEムエタイ世界フライ級王座に就いた。同王座は5度の防衛に成功。
2023年9月、スーパーレックとのキャッチウェイト戦(当初はロッタンが保持するONEフライ級ムエタイ世界王座を懸けたタイトルマッチで行われる予定だったが、スーパーレックが体重超過したためノンタイトル戦となった)で判定負け。2024年1月のONE日本大会で武尊との激突が発表されるも、左手の負傷で欠場。6月の再起戦ではデニス・ピューリックに判定勝ちした。また、9月のONE Friday Fightsではリング上で武尊と額を押し付け合ってのフェイスオフを展開している。戦績は271勝43敗10分。
スミスは初参戦となった2022年5月の『ONE 157』でロッタンと対戦も判定負け。2023年12月に『ONE Fight Night 17』でボルター・ゴンサルベスにヒザ蹴りでKO勝ちしてONE初勝利を収めたが、前戦は2024年4月にデニス・ピューリックに判定で敗れた。戦績は16勝7敗。
両者は2022年5月にONEフライ級ムエタイ世界グランプリの準々決勝で対決しており、その際はロッタンがユナニマス判定で勝っている。
ロッタンは1度目の計量でハイドレーションテストはパスしたが体重超過(約200グラム)、2度目の計量ではハイドレーションテストをパス出来ず、この試合は両者合意のうえで135.5LBS(61.46kg)でのキャッチウェイト戦に変更。ロッタンはONEフライ級ムエタイ世界タイトルをはく奪され、ファイトマネーの20%の罰金。試合はスミスが勝った場合のみ王座獲得となる変則王座戦となった。
入場から場内は大盛り上がり、ロッタンがリングインして両手を広げると割れんばかりの歓声が沸き起こる。リングサイドには武尊が陣取った。
1R、ローを蹴っていくロッタンはスミスがローを蹴ってくると一気に前へ出ての連打。離れるとスミスが右ローを蹴るが、前へ出るのはロッタンで右ロー、右ストレートを打つ。ロッタンは右へ動いて右フック、左へ動いて右ヒジ。スミスの左フックには右フックを合わせに行く。スミスの動き始めに前蹴りで止めるロッタン。
2R、ロッタンが前へ出るところにテンカオを合わせたスミスにロッタンはすかさずヒジを打つ。前蹴りで出鼻を挫くロッタンが左ミドルハイを腕に当てただけで大歓声。ロッタンは首相撲になるとオーバーアクションでヒザを蹴って印象付ける。
3R、スミスの右ストレートをもらったロッタンは連打で一気に前へ出るとヒジ、首相撲でスミスを倒す。ロッタンは飛びヒザ蹴り、スミスを前蹴りでコカす。ヒジを出すロッタンが前蹴りから左縦ヒジをヒットさせ、スミスが後退。ロッタンが一気に前へ出て連打を浴びせるとスミスは左目上から流血でドクターチェック。顔面が真っ赤に染まるスミスにロッタンはカモンゼスチャーで余裕を見せる。
4R、左ロー、左ミドル、前蹴りと蹴るロッタンはいきなり縦ヒジで突っ込む。右ヒジで入り込むロッタンにスミスはヒジを当てようとするが、腕を抑えたロッタンは頭を振って“当ててみろ”とばかりに挑発したが、これはバッティングを注意される。ロッタンが左ミドルで前へ。ロッタンはスミスの両手を抑えてヒジを打って行き、スミスが組んでくると組み倒す。
5R、ヒジを打つスミスにロッタンはカモンゼスチャーで煽ってヒジを返す。ロッタンはスミスの前蹴りをキャッチすると右ボディ。スミスはパンチやヒジを打って行くが組み付いてしまう。ロッタンは余裕を見せまくり、スミスが攻めてくるところへ右を打つ。クリンチが多いスミスはロッタンに遊ばれる展開となり、試合が終了すると“クソッ”とばかりに空蹴りして悔しさを現わす。そのスミスを抱きしめるロッタン。
判定は3-0でロッタンが勝利。スミスと会話を交わし、ハグした。勝利者インタビューでは「全ての勝利が大切なものだ。次の世代にもムエタイの素晴らしさを伝えていきたい。ベルトを失くして悲しいが、必ず獲り返す。あのベルトが一番欲しい。計量失敗に関しては謝りたい」と、武尊戦に関しては発言しなかった。ロッタンは試合後、リングサイドの武尊をリングに招き、フェイスオフした。
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▼ONEストロー級キックボクシング世界タイトルマッチ 3分5R〇ジャッキー・ブンタン(米国)[判定3-0]×アニッサ・メクセン(アルジェリア/フランス)※ブンタンが初代王座に就く。
ブンタンは2021年2月にONE初参戦。パワフルな左右フックを武器にワンダーガール、エカテリーナ・ヴァンダリーバらに3連勝し、4戦目でストロー級ムエタイ世界王者スミラ・サンデルに挑戦したが判定で敗れた。その後は3連勝をマークしている。戦績は26勝6敗。
メクセンはこれまでISKA世界K-1ルールバンタム級王座、WAKO世界K-1ルール同級王座、GLORYスーパーバンタム級王座(2度)、WPMF世界フライ級王座など合計18本ものベルトを獲得し、戦績は驚異の103勝(33KO)6敗という女子キックボクシングの生ける伝説(現在36歳)。サバットでもフランス王者、ヨーロッパ王者、世界王者になっている。ONEとは2020年8月に契約し、2021年9月に念願の初登場。クリスティーナ・モラレスを2RでKOして3連勝を飾ったが、2023年12月の暫定アトム級キックボクシング世界王座決定戦でペッディージャーに敗れた。今回は一階級上げてのONE王座獲りに臨む。
12月20日(金)タイ・ルンピニースタジアムで行われる『ONE Friday Fights 92』にてONEアトム級キックボクシング3分3Rでメクセンとの対戦が決まっている、元K-1 WORLD GP女子フライ級王者のKANAが武尊と共にリングサイドで目を光らせる中、試合開始。
1R、メクセンはジャブから左右ロー、ブンタンは左右フックで左フックを当てる。左右ミドルを蹴るメクセンにパンチで切り込むブンタンだがヒットは奪えない。これが初のキックボクシングルールでの試合となるブンタンは蹴り足をキャッチしてしまい注意を受ける。蹴られながらも右ボディを返すブンタン。
2Rもメクセンに蹴られながらも右フックから入っていくブンタン。軽快なステップを踏み、ブンタンが入ってくるところにジャブを合わせるメクセン。ブンタンが切り込んできたところでつかんでヒザを蹴ってしまうメクセンに注意が与えられた。
メクセンの左ミドルに左フックを合わせたブンタンだが、メクセンはステップで離れる。ブンタンが来たところにジャブ、ブンタンが下がるとワンツー。メクセンの右ミドルにワンツーを合わせたブンタンへ、メクセンもすぐに前へ出て打ち返すが空振り。
3R、ジャブと左右ローのメクセンはブンタンが入ってくるところにジャブを合わせるが、ブンタンは右フックを強振。もらうとクリンチで連打を許さないメクセン。ブンタンの一発に対し、パンチと蹴りを多数返すメクセンだが、ブンタンは距離を詰めると左右ボディの連打。メクセンも前へ出て右ストレートを打ち、ブンタンがそれに左右の連打を返す。
4R、ここまで大きな動きがない中、左右フックを振って前へ出るブンタンに、メクセンは左右ロー。ブンタンが打ってくるとワンツーを返す。ブンタンの強打をもらうとクリンチして追撃を許さないメクセンだが消極的と捉えられる可能性も。ブンタンが空振りすると倍以上の手数を出して印象付けるメクセン。
5Rも軽快なステップが止まらないメクセンは、ブンタンが入ってくるところにジャブと右ストレートを当てに行く。離れると左ミドル。メクセンのジャブをサイドキックで止めたブンタンだが、これがローブローとなって試合は中断。再開後、ジャブ&ローのメクセンにブンタンは左右フックで前へ出るが、メクセンの右ストレートに離される。ジャブと右ミドル、右ストレートをしっかり当てていくメクセンへ果敢にアタックを続けるブンタン。メクセンがカウンターの右をヒットさせたところで試合終了。
大きな山場を迎えることなく試合は終了。判定は3-0で前へ出て攻撃の姿勢=アグレッシブを発揮したブンタンが勝利。初代王座に就いた。ブンタンは「作戦が上手くいった。まだ信じられない。本当に嬉しい。みんなに感謝しています」と時折声を詰まらせながら勝利者インタビューに答えた。
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▼ONEフライ級 5分3R〇アドリアーノ・モラエス(ブラジル)[2R 4分14秒 ギロチンチョーク]×ダニー・キンガッド(フィリピン)
フライ級王者デメトリアス・ジョンソン(DJ)が引退し、ONEフライ級MMA世界王座は空位に。今回の1位モラエスと3位キンガッドの試合、12月7日の2位・若松佑弥の試合は、次の世界王座戦出場につながる可能性がある。
モラエスが王者だった2017年、キンガッドを1R リアネイキドチョークで下しているが、その後キンガッドは6連勝。2019年10月にDJに判定負けし、シェ・ウェイ、エコ・ロニ・サプトラに判定勝ちも、カイラット・アクメトフ、2024年1月の前戦で若松佑弥に判定負けしている。
モラエスは、キンガッド戦後、黒星はジェヘ・ユスターキオとDJの2人に敗れたのみ。2022年3月に若松に3R 一本勝ち後、DJに2度敗れたモラエスにとってベルトを奪還は悲願。キンガッドを返り討ちし、王座戦に名乗りを挙げるか。
1R、ともにオーソドックス構え。中央を取るキンガッドに、モラエスはすぐにダブルレッグテイクダウン。フックガードのキンガッドは両脇を差してシングルレッグで立ち上がり。そのままロープまで押し込み右差しボディロックテイクダウン。
フルガードのモラエス。腰を切り腕十字も、そこに鉄槌のキンガッド! モラエスはフックガードからパスガード狙いのキンガッドにZガードも左足を外に出すキンガッド。ブリッジのモラエスはシングルレッグで片ヒザ立ちまで戻して立ち上がり。その際で頭を抱えて崩すキンガッド。
しかし下からモラエスはダブルレッグでレッスルアップし、ロープ外に。中央で再開。下のキンガッドはニーシールドも、モラエスは肩固め狙いつつパスへ。戻したキンガッドは下からヒザ十字狙いでゴング。
2R、右ローから先に組んだキンガッドに、足を取りに行くモラエス。そこに蹴りはキンガッド。モラエスは左ジャブ、左インロー。キンガッドも左ボディから右を振る。
右前蹴りから組みの動作にモラエスはスタンドに戻す。ワンツーのキンガッドは右ロー。ともに跳びヒザもモラエスのヒザがローブローに。中断、再開。
キンガッドの踏み込んでの左をかい潜ってダブルレッグテイクダウンを決めたモラエス。右足を外にする。ハーフからフルガードに戻したキンガッド。
ヒザで突き放すが、ついていくモラエスにキンガッドは下からキムラ狙い。モラエスは鉄槌、キンガッドはキムラを後方に回そうとするが、その動きを利してまたいで上四方に跳んだモラエス。
キムラを解いて身体を起こしてきたキンガッドに、モラエスはアームインギロチンチョーク! ボディトライアングルで足を組んで引き込み、キンガッドがタップした。
試合後、「チャンピオンイズバック!」と咆哮したモラエスは「父になったばかりなんだ。この勝利を娘に捧げたい。自分の力を証明したかった」と語った。
公式インタビューではモラエスはリース・マクラーレンとの試合を望んでいるが、同じくキンガッドに勝利している2位の若松が、12月に連勝すれば無視は出来ないだろう。2025年の日本大会はどうなるのか、注目のフライ級王座戦線だ。
試合後インタビューの終わりに、5万ドルコールは無し。モラエスはボーナスは無いのか、と両手を広げてみせた。
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▼キャッチウェイト(63.16kg)ムエタイ 3分3R〇ゴントーラニー・ソー・ソンマイ(タイ)[判定3-0]×ダギール・カリロフ(ロシア)
ゴントーラニーは2018年にラジャダムナンスタジアム認定スーパーバンタム級王座、2022年に同ライト級王座に就いているサウスポー。サオトーとサオエークにも勝利し、2021年4月にギンサンレックに敗れるも2022年3月の再戦ではTKO勝ちで制している。2023年2月の『ONE Friday Fights 6』に初参戦すると、ギンサンレックを左フックでKOして返り討ちにし、その後はシャーゾット・カブトフ、内藤大樹、パルサ・アミニプール、シャリフ・マゾリエフ、そして日本でもお馴染みのジャオスアヤイを破り破竹の6連勝。しかし2024年6月、スーパーレックに判定で敗れて連勝がストップ。69勝16敗。
カリロフはタイでムエタイを学び、現在はエカテリンブルクのサミンプライ・ムエタイ・ジムで練習を積む。ONE初登場は2021年2月のロッタン戦で、対戦相手の欠場による1週間前オファーのスクランブル参戦だったが、ロッタンを相手にスプリット判定まで持ち込んでいる。その後はデニス・ピューリックに判定負け、チョーファーに初回TKO勝ち、ブラック・パンサーを初回KO。2023年7月にはスーパーレックと対戦してTKOで敗れるも、11月にはヨードレックペットにスプリット判定ながらも勝利を収めている。前戦は6月にナックロップに初回KO負けを喫した。
計量でカリロフは体重超過。139.25LBS(63.16kg)のキャッチウェイト戦に変更となり、カリロフはファイトマネーの20%の罰金となった。
1R、前に出るのはサウスポーのゴントーラニー、左ミドルを蹴り、カリロフの右にジャブからの左ロー。左ローを蹴ってカリロフが右を返してくるとすかさず左のカウンターを打ち込む。左ミドルと左ストレートを主軸にしつつ、左ローも多く蹴るゴントーラニー。カリロフはフェイントを入れながら右を狙っていくが、ゴントーラニーの蹴りに下がらされる。距離をしっかりとって左の蹴りを当てていくゴントーラニーにカリロフはなかなか入れない。
2R、カリロフはジャブを突きながら前へ出て左ローを蹴るが、ゴントーラニーが高低をつけた左ミドルを蹴ると下がってしまう。そこへゴントーラニーは左ロー。面白いように左ミドルと左ローを当てるゴントーラニー、カリロフは左右フックを強振するも空振り、そこへゴントーラニーの左フック。カリロフのパンチは空を切る場面が目立ち、逆にゴントーラニーは的確に当てていきカリロフは慌てたように身体を丸める。
3R、ゴントーラニーの左ストレートからの左ローにバランスを崩すカリロフ。ゴントーラニーの攻撃に身体を丸めたり、背中を見せるなど消極的な動きが目立つ。ゴントーラニーの左ミドルが快音を発して決まり、場内からは大歓声。左ミドルから左ヒジのゴントーラニーは余裕を感じさせる。左ローからワンツー、そしてヒジとつなげるゴントーラニー。左ミドルでカリロフの身体が大きく動く。カリロフは為す術なく試合終了のゴングを聞いた。
判定は3-0でゴントーラニーの圧勝となった。
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▼ONEライト級 5分3R〇ケイド・ルオトロ(米国)[1R 1分04秒 ダースチョーク]×アフメド・ムジタバ(パキスタン)
ADCC2022優勝、ONEライト級サブミッション・グラップリング世界王者ケイド・ルオトロがMMA2戦目。
2024年6月に初めてプロMMAマッチに出場し、ブレイク・クーパーにリアネイキドチョークで一本勝ち。その後、グラップリングの大規模大会「クレイグ・ジョーンズ・インビテーショナル(CJI)」80kg以下級でアンドリュー・タケット、リーヴァイ・ジョーンズレアリーらを破り優勝。100万ドル(約1億5千万円)を手にしている。
対するパキスタンのアフメド・ムジタバはAKA所属でMMA10勝4敗。うち3試合はノックアウト、5試合はサブミッションで一本勝ちで三角絞め、リアネイキドチョーク、腕十字を極めている。
1R、ルオトロのセコンドにはエリック・パーソン、タイ。ルオトロ。ともにオーソドックス構え。ローから左ハイを突くルオトロ。右オーバーハンドを見せるムジタバ。
さらに右前蹴りのムジタバに、ルオトロはレベルチェンジの目線のフェイントからの右オーバーハンド! ダウンしたムジタバにルオトロはパウンド連打。シングルレッグのムジタバに拳を落として剥がすと、ダースチョーク! タップを奪った。
試合後、ルオトロは「倒せるとは思っていなかったけど、好きなムーブなんだ。柔術でもMMAでも戦いたい。僕もタイ(ルオトロ)も強い相手と戦って極めたいんだ」と語った。
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▼ONEストロー級キックボクシング 3分3R〇サムエー・ガイヤーンハーダオ(タイ)[判定3-0]×ジャン・ペイメン(中国)
2018年1月にONE最初のムエタイの試合を戦ったサムエーは、ONEフライ級ムエタイ世界王者にもなったが、2019年5月にジョナサン・ハガティに判定負け後、10月にストロー級転向。12月にはワン・ジュングァンに判定勝ちし、新設されたONEキックボクシング世界ストロー級王者となった。さらに2020年2月、ロッキー・オグデンを破りムエタイ世界同級王座も獲得して二冠王に。2020年10月にはジョシュ・トナーに2RでTKO勝ちし、初防衛に成功するも、2021年7月にプラジャンチャイに敗れて王座を失った。2023年6月の再戦でもプラジャンチャイにKO負け。前戦は9月にアクラム・ハミディを初回KO。戦績は374勝49敗9分。41歳。
“中国の天心”の異名を持つペイメンは、中国「EMLegend」等で活躍し、23勝18KOをマークするなど“最強中学生”として話題となり、2022年3月にONEデビュー。サムエーが持つONEストロー級ムエタイ世界タイトルマッチにも挑戦経験があるトナーと対戦し、2RでKO。7月大会ではアスランベック・ジクレーブを判定3-0で破り、10月にONE世界ストロー級キックボクシング王座決定戦に臨んだが、ジョナサン・ディベラに判定で敗れ戴冠ならず。2023年3月の再起戦で勝利するも、11月にはルイ・ボテーリョに判定で敗れた。2024年4月にアリーフに判定勝ちで再起。戦績は18勝(6KO)3敗1分。21歳。
1R、いきなり仕掛けていくのはペイメン。高いミドルを蹴って入り込み、サムエーをロープに詰めてボディを打つ。サムエーは序盤は相手の出方を見ていたが、サウスポーから左ミドルを蹴るとノーモーションの左ストレート。ペイメンは右の強いインロー、サムエーが左ローや左ミドルを蹴ってくるとそのインローを返していったが、次第にサムエーの左ミドルをもらいっぱなしになり、入り込もうとするところに左のテンカオを合わせられるように。サムエーの攻撃が決まるたびに、場内からは歓声が沸き起こる。
2R、左ミドルを蹴るサムエーにペイメンは距離を詰めて左フック、右ボディ、左フックとコンビネーションを繰り出す。サムエーは左ストレートをヒットさせるが、ペイメンの左右ボディを軸とした回転の速いフックを浴びる。左ストレート、左テンカオを打つサムエーはガードが低く、ペイメンの距離を詰めた左右フックをもらってしまう。それでも的確に左ストレート、左テンカオを当てて行き、一方的な展開とはしない。このままペイメンのラウンドになるかと思われたが、サムエーの左テンカオと左ストレートにペイメンが下がった。
3R、再び前に出るペイメンにサムエーは前蹴り、左ミドル、左ロー、左ハイとペイメンのパンチに対抗。左右フックを回転させるペイメンだが、サムエーの左ストレートと左テンカオがタイミングよく決まる。スピードが落ちてきたペイメンだが前へ出てパンチを繰り出し、手数は多い。サムエーはよく見て左ストレートを的確に当てていく。残り10秒になると、場内からはサムエーの勝利を確信した歓声が沸き起こり、終了のゴングが鳴るとサムr-はコーナーに昇って勝利をアピール。
判定3-0で、サムエーがいぶし銀のテクニックで若いペイメンを退けた。「序盤は相手の勢いに押されそうになったけれどヒザで挽回できた。ベルトをもう一度手にして自分の強さを証明したい」と、勝利者インタビューに答えた。
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▼ヘビー級 5分3R〇“ブシェシャ”マーカス・アルメイダ(ブラジル)[1R 3分15秒 リアネイキドチョーク]×アミル・アリアックバリ(イラン)
“ブシェシャ”ことアルメイダは、柔術世界選手権で13度金メダルを獲得しているグラップリングの強豪。対するアリアックバリは、グレコローマンで2010年レスリング世界選手権96kg級金メダル。勝者が次期王座挑戦者になる可能性も高いヘビー級戦。
アルメイダは2021年9月のアンデウソン・シウバ戦から2022年8月のキリル・グリシェンコ戦まで4試合を一本・TKOのフィニッシュ勝利も、2023年8月、今回メインを戦うケインに判定負けを喫し、MMA初黒星。
元RIZINのアリアックバリはONE参戦時こそカン・ジウォン、アナトリー・マリキン相手に厳しいスタートを切ったものの、その後はマウロ・チリリ、ブランドン・ベラ、ダスティン・ジョインソン、2024年3月のアルジャン・ブラー戦で4連勝。こちらもブラー戦の実質TKO(失格)を合わせて4試合をフィニッシュしている。
パワフルなグレコローマンのレスリングで、アルメイダのテイクダウンを差し上げて切るか。アルメイダは近年タフな打ち合いからのテイクダウン&サブミッションを極めており、スタンドで立ち会い、アプローチにも注目だ。
1R、ともにオーソドックス構え。アルメイダは右前蹴りで牽制。アリアックバリは左ジャブ、ボディストレートもまだ両者遠い。
アルメイダは低いダブルレッグテイクダウン。ロープ外に手を出すアリアックバリは左小手で投げて崩すが、アルメイダは投げ切られずトップを奪取。右で差して頭をアゴにつけてパス狙い。右ヒザを越えられているアリアックバリは左ヒザを前に入れているが、背中を見せて立とうとしたところをアルメイダはすぐにバックに!
両足を巻いてリアネイキドチョークを極めた。
試合後、アルメイダは「前回はフィニッシュ出来なかったからフィニッシュできて良かった。背中が見えたらバックから極める自信はあった。戻ってきたよ。プーケットのみんな、アメリカントップチームのみんなありがとう。(メインの)マリキンは本物のチャンピオン。リベンジもしたいし、どちらが勝っても準備する」と語り、5万ドルのボーナスを獲得した。
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▼ONEフェザー級ムエタイ 3分3R×エディ・アバソロ(米国)[判定0-3]〇ハメド・ユネス・ラバー(アルジェリア)
アバソロは2022年11月にONE初参戦。リアム・ノーランに判定負けを喫したが、2戦目はニコラス・ラーセンにKO勝ち。3戦目ではシッティチャイに判定負けもパンチとヒジで激しく打ち合い、ヒジのカウンターでシッティチャイを相手に何度もピンチの場面を作って見せた。前戦は2月にルーク・リッシに判定2-1で惜敗。サーマートに憧れているという。14勝6敗。
188cmの長身ラバーは2023年12月のONE初参戦でセーマペッチと対戦。左フックでダウンを奪われるも即座に右ストレートでダウンを奪い返し、さらに飛びヒザ蹴りからの左右フック5連打でダウンさせたが、完全に倒れていたセーマペッチの顔面にヒザを突き刺した。結果はラバーのKO勝ちとなったが、最後のヒザが物議を醸し、2024年2月にダイレクトリマッチ。初回KO負けでセーマペッチにリベンジを許した。14勝1敗。
1R、ラバーの左右ミドルにアバソロは右ロー。前に出るのはアバソロだが左右ミドルと右カーフをもらう。アバソロはラバーの蹴り足をキャッチして流してのバックスピンエルボーを狙う。アバソロが右ヒジを打ち、ラバーは右ストレートを合わせると返しの左フックでダウンを奪う。ミドルとカーフを蹴り分け、飛びヒザも繰り出すラバーは接近するとヒジの連打。
2R、じりじりと前に出るラバーに右カーフを蹴るアバソロ。左ミドルから左ボディのラバーは、接近すると左右のヒジ。左右フックから左ボディとラバーは上下に打ち分ける。そのボディにアバソロは左フックを合わせに行く。しかし攻め疲れかラバーの動きが鈍り、アバソロがボディを攻めに行くが、コーナーに詰められたラバーがアバソロの右ボディフックに合わせたバックスピンエルボーでダウンを追加した。
3R、サウスポーから左ボディストレートを打って行くアバソロにラバーは右ヒジで応戦。オーソでも徹底的にボディストレートを打って行くアバソロにラバーはまたもバックスピンエルボー、ヒザも蹴る。アバソロの徹底したボディ攻めにコーナーへ下がるラバーだが、ヒジと長いリーチでのワンツーを打つ。左右フックを思い切り振り回すラバーに、アバソロがロープに追いつめての右フックでダウンを奪い返す。
あわや逆転かというシーンだったがラバーは立ち上がり、詰めていったアバソロだがタイムアップ。判定3-0で2度のダウンを奪ったラバーが勝利を手にした。
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▼ONEアトム級 5分3R〇三浦彩佳(日本)[1R2分20秒 アヤカロック] ※スカーフホールドアメリカーナ×マカレナ・アラゴン(アルゼンチン)
三浦にとって2024年は波乱の年だ。2023年11月にストロー級の強豪メン・ボーから一本勝ちを奪い、2024年1月の日本大会では階級をアトム級に落として平田樹を撃破。
2連勝と波に乗ったが、その後のジヒン・ラズワン戦がまさかの連続キャンセル。4月に負傷欠場したラズワンと10月にようやく対戦するチャンスを得た三浦だったが、ラズワンが前日計量を失敗、試合は中止となった。
今回、連続キャンセルから1カ月後に参戦のチャンスを手にした三浦。自身のXで「すぐに闘える喜び。感謝。今年4回目のファイトキャンプ。常に闘う身体を作れている。最高の状態でお会いできるのを楽しみにしています! 勝つぞ。あと少し追い込みやり切ります」と投稿。
今回ONE初参戦のアラゴンについては、情報がないこともあり、三浦は「アラゴンの印象は特にありません。(警戒する点も)情報があまり無いので何とも言えないです」とコメント。
相手のアラゴンは柔道ベースでプロMMA3戦全勝の新鋭。自身のインスタグラムで公開している過去の試合映像には、首投げから袈裟固め、パウンドを落としながらVクロスアームロックを極める場面がある。
三浦も柔道出身で、同じムーブを得意とすることから、この映像の印象を尋ねると「まだまだ完成度が低いと感じました」と言い、「どんな局面になっても私が勝ちます」と強い自信を見せている。
『マカレナ』で入場のアラゴン。三浦のセコンドには山本アーセンと堀江登志幸トレーナー。
1R、三浦はいきなり相手に跳び込んでダブルレッグも、左で差して投げたのはアラゴン。組み続けている三浦はそこから立って得意の首投げ! 前に返されずにトップはアラゴン。
左腕でなおも首を巻き続ける三浦はアラゴンの左腕を両足で挟んでリバースアヤカロックから、首投げでアラゴンを前転させて、袈裟固めから、左足を組み直してタップを奪った。
「ナメんな!」と叫んだ三浦は、インタビュアーのミッチ・チルソンと涙のハグ。
試合後、「相手は私より柔道で実績のある選手ですが、MMAの戦績は私の方があるし、ONEでアヤカロックを極めている。今日もアヤカロックを極めると決めていたので、アメリカーナは私の技だと言うことができたと思います」と語ると、チルソンから5万ドル(約760万円)ボーナスのコール。
顔をくしゃくしゃにした三浦は「ありがとう。嬉しい、ずっと満足いく試合が出来なくて、試合も何回もキャンセルされて、ファイトキャンプを重ねて、今日5万ドルいただけて嬉しいです。今日、長南亮代表が来れなかったのですが、ありがとうございます。彼氏のアーセンと堀江さん、時間を使ってくれてありがとう。5万ドルをみんなのために使いたいと思います」と語った。
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▼ONEストロー級ムエタイ 3分3R〇アリーフ・ソー・デチャパン(タイ/マレーシア)[判定3-0]×ボルター・ゴンサルベス(ブラジル)
アリーフは2023年4月のONE Friday Fightsから参戦し、4連勝(2KO)を飾ったが2024年4月にジャン・ペイメンに判定負け。続く7月のエリス・バルボーサ戦も判定2-1で敗れたが、8月にザカリア・ジャマリをKOして再起した。177cmの長身でまだ20歳。戦績は58勝9敗。
ゴンサルベスは2016年頃からタイを主戦場とし、MAXMUAYTHAIやエクストリームムエタイで活躍。2017年にP-1トーナメントで優勝すると、2018年3月にはWPMF世界ライト級王座を獲得。2018年6月にはエクストリームムエタイ-60kg王座も獲得した。
2019年10月にONE初参戦を果たすといきなりロッタンのONEムエタイ世界フライ級王座に挑戦したがスプリット判定負け、2020年12月にはMOMOTAROにTKO負けと連敗。2022年のONEムエタイ・フライ級ワールドGP準決勝でスーパーレックに初回KO負けし、その後も連敗とONE戦績1勝5敗と崖っぷちだ。今回は階級を下げて臨む。戦績は66勝(32KO)9敗。
1R、身長差は16cm。まずは右ローの蹴り合いからスタート。右の相打ちではゴンサルベスが有利となり、アリーフが下がる。前へ出るゴンサルベスが右カーフを蹴っていくが、そこへアリーフは右のカウンターと右ボディストレート。アリーフはワンツーから右ミドル、首相撲で組むとヒザ&ヒジ。一度離れると再びパンチから首相撲に持ち込むと頭を下げさせ、強烈なヒザ連打でゴンサルベスは腰を大きく落としてダウン寸前に。
2R、いきなり後ろ蹴りを放つ余裕を見せるアリーフ。このラウンドもワンツーからの右ミドルを主軸に飛びヒザ蹴りも放つ。ゴンサルベスはアリーフの蹴り足をキャッチすると右ストレートでアリーフを転倒させ、前へ出ていくがアリーフが左右ストレートの連打で迎え撃つ。
右カーフを狙うゴンサルベスにアリーフは飛びヒザ蹴り、テンカオにヒジ。左のテンカオを連続と突き刺すアリーフはヒジも繰り出しながら首相撲からのヒザ。このヒザでほぼ圧倒の形となるアリーフ。ゴンサルベスは左右フックで応戦するが、テンカオをもらい、組まれてもヒザと徹底したヒザ攻撃。
3Rもゴンサルベスは右カーフを蹴り、左右フックにつなぐ。ゴンサルベスの右カーフに明らかに効いた様子を見せてしまったアリーフだが、サウスポーになって左ヒザと左右ストレートで対抗。アリーフがバックハンドブローを空振りし、ヒザを着いたところでゴンサルベスがヒザを蹴ってしまいイエローカードに。
再開後、右カーフを蹴るゴンサルベスにアリーフは前へ出て捕まえに行く。左ヒザを蹴るアリーフに、その左足を右カーフで蹴るゴンサルベス。左フック、右ストレートで倒しに行くゴンサルベスにアリーフはロープを背負ってピンチとなったが試合終了。
3Rはあわや逆転かというピンチを迎えたアリーフだったが、判定3-0で勝利した。