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インタビュー

【UFC】ヘビー級暫定王者アスピナル「新グローブはパッドが少ない。ナックルを硬くするために手をガソリンに浸した」×挑戦者ブレイズ「ヘビー級は異なる基準で評価されるべき」

2024/07/28 07:07
  2024年7月27日(日本時間28日)、英国マンチェスターのCo-op Liveにて『UFC 304: Edwards vs. Muhammad 2』(U-NEXT配信)が開催される。メインとコメインのダブルタイトルマッチはいずれも地元・英国の王者の防衛戦。 ▼コメイン UFC世界ヘビー級暫定王座戦 5分5Rトム・アスピナル(英国)14勝3敗(UFC7勝1敗)※UFC2連勝2KO 251lbs/113.85kgカーティス・ブレイズ(米国)18勝4敗(UFC13勝4敗)256lbs/116.12kg  コメインでは、正規王者のジョン・ジョーンズが欠場中のヘビー級で暫定王者のトム・アスピナル(英国)が防衛戦。2年前に同じ英国で戦い、UFC初黒星を喫したカーティス・ブレイズ(米国)との再戦に臨む。2022年7月の前戦では、アスピナルが右ローキックを放った際に右ヒザを負傷して、開始15秒でTKO負け。その後アスピナルは、2023年7月にマルチン・ティブラ、2023年11月にセルゲイ・パブロビッチをいずれも初回に右ストレートでKOに下し、暫定ベルトを巻いている。  レスラーのブレイズは、アスピナル戦で3連勝をマークも、2023年4月にパブロビッチに右アッパーを浴びて1R TKO負け。2024年3月の前戦でジャイルトン・アウメイダを2R TKOに下して再起を果たしている。再戦を制し、ヘビー級暫定のベルトを巻くのはアスピナルか、ブレイズか。両者の会見でのインタビユーを紹介したい。 トム・アスピナル(UFC世界ヘビー級暫定王者)「SNSをやめることを1カ月試してみて、どうなるか見てみるといい」 ──地元の新しいアリーナでの試合を前に、心境は? 「今のところ楽しんでいるよ。このスポーツを始めた頃、今からだいぶ前だけど、こういう瞬間を夢見ていたんだ。自分がいるべき場所にいると感じているよ。本当に楽しみにしている」 ──ジョン・ジョーンズが引退すると予想している人がいるけど、その場合は今回の試合をタイトルマッチの防衛戦と見なすべき? 「正直言って、今はそのことにはあまり集中していないんだ。暫定ベルトや防衛に関する政治的なことは俺のコントロールできることじゃないから、あまり気にしていない。ただカーティス・ブレイズを倒すことに集中している。それだけさ」 ──ガソリンに手を浸したことで、どれだけ手が硬くなったと感じる? 「石のように硬くなったよ。新しいグローブを見たんだが、以前よりもずっと小さくて、パッドも少ないんだ。だから、ナックルを硬くしなきゃと思った。唯一知っている方法がこれなんだ。手をガソリンに浸して石のように硬くするんだよ」 ──ガソリンに手を浸す明らかな健康リスクについて心配はない? 「どうだろう。ガソリンが手に染み込むのは、多分後で問題になるだろうとは思うけど、今のところは大丈夫。もしこの試合ですごいノックアウトをしたら、半分のファイターが拳をガソリンに浸すようになると思うよ」 ──もちろん、今週末以外のことはあまり考えないと思うけど、もし今週末に勝利したら、マディソン・スクエア・ガーデンで戦うことは意味があると思う? 「そうだね、ニューヨークもMSGも大好きだから、それは素晴らしいことだと思うよ」 ──あらためてカーティス・ブレイズの印象を。 「彼は長い間トップ5、トップ10にいて、タイトルマッチ以外のほとんど全てのことを成し遂げているから、心から尊敬している。彼を侮るつもりは全くない」 ──多くの人があなたのアスリート性とスピードがヘビー級での特長だと言うけど、カーティスはその点で君に匹敵する? 「いや、そうは思わない」 ──二人のグラップラーが対戦すると、逆に打撃戦になることが多いが? 「まず、俺はグラップラーだけど、長い間MMAをやってきた。カーティスもレスラーだけど、長い間MMAをやっている。つまり二人ともグラップリングの背景を持っているけど、これはMMAの試合だ。個々の要素で見るのではなく、MMA全体のスキルとして見ている。MMAは立ち技、グラップリング、グラウンド、ケージ際の攻防、グラウンドでのバック、トップと全てにおいて上手でないといけない。そして、2人ともグラップリングが上手いのはもちろん、MMAの全局面でトップレベルのファイターだ。とても興味深い試合になると思うよ」 ──ヘビー級ファイターはMMAのオールラウンダーとしての評価を得ていると思う? 「おそらく評価はされていないだろうね。スキルは確実に向上しているけど、MMAの全ての側面で本当に優れているのは、ヘビー級では7、8人くらいだと思う。他のファイターはただノックアウトできるだけで、他の面ではそれほど優れていないんだ。ヘビー級のMMAは他の階級とは少し違うルールがあるようなものだ。ヘビー級以外の階級では、全てのスキルが必要だけど、ヘビー級では一発当てればそれで十分という選手もまだいるんだ」 ──11月1日に新しいルール変更が発表され、12-6エルボーが許可されることについては? 「何か聞いたことはあるけど、正直あまり気にしていなかった。でも、良いことだと思うよ。個人的にはグラウンドでのヒザ蹴りも許可すべきだと思う」 ──ジョン・ジョーンズは、マット・ハミル戦の反則負けを、勝利に覆すよう訴えかけているが、そうすべき? 「そうだと思うよ。ただ、10年前のことだから分からないね。でもジョン・ジョーンズだろ、彼には彼のルールがあるから、可能なのかも」 ──あなたは2分10秒というUFC史上最短の平均試合時間を持っているが、最短記録は維持したい? 「素晴らしいことだけど、別にその記録を目指してやっているわけじゃないんだ。いつも試合に臨むときは、みんなが思っていることとは逆に、5ラウンドの激闘を想定している。相手からはいつも『ヤツを深い海底に引き込むつもりだ。今まで経験したことのないほど苦しい試合をさせる』と言われるんだけど、それを実行できるほど強いファイターはいなかった。これは自慢じゃなくて事実。みんなが言うんだ、ぜひ、未体験の深い海底に連れて行ってほしい。誰かが自分を3ラウンド目、4ラウンド目、5ラウンド目まで付き合ってくれるなら、そうして欲しいよ」 ──カーティス陣営は、グラウンドでヒジで切り裂くことがゲームプランだと言っている。あなたの柔術が過小評価されているのでは? 「彼らが過小評価しているとは思わない。たぶん口だけだろう。トークはトーク、ファイトはファイトだからね」 ──UFC Embeddedのファイトウィークに地元のアザートンが大きく取り上げられているのを見ると、現実感が湧いてくるのでは? 「アザートンの仲間として、本当に嬉しいことだよ。人々もそれを喜んでいるし、町ではあまり大きなことが起こらないからね。ポジティブな光を当てられるなら、それは素晴らしいことだ」 ──また壁画を期待している? 「そうだね。ただ、腕がすごく小さく描かれていたんだ。自分の腕は結構たくましいと思うんだけど、あの壁画を見たときは『なんでだろう』って感じた。それに、なぜ自分がローマ人の格好をしているのかもまだ理解できない。もちろん、自分の顔が故郷の大きな壁に描かれるのは光栄なことだけど、なぜグラディエーターの格好なのかは理解できないな」 ──試合に向けてソーシャルメディアのデトックスをしていたが、感想は? 「良かったよ。まだ電話とかは使っているけど、一日中スクロールすることはなくなった。重圧や不安を感じている人には、まず最初にソーシャルメディアをやめることを勧めるよ。1カ月試してみて、どうなるか見てみるといい。アプリを削除して戻れないようにするんだ。自分は中毒になっていたからね。毎日何百人もの意見を読むことがなくなって、人生がずっと良くなった。  毎回ソーシャルメディアを開くと、何かにタグ付けされていて、コメントを読む。それが間違いなんだ。大きな間違いだよ。でもそれは他の中毒と同じようなものだから、本当に対処する方法はアプリを削除すること。ソーシャルメディアがない方が精神的にずっと良い状態だよ。俺のSNSを運営しているチャーリーというソーシャルメディア担当がいて、必要なことは俺の代わりに彼が投稿してくれている。多くの人の意見を読み過ぎないほうが、人生はずっと良くなる」 ──過去の対戦相手と比べて、カーティスをランクするなら? 「間違いなくナンバーワン。過去最強の難敵だ」 ──あなたのジムはヘビー級のスーパーチームと呼べるくらい多くのファイターが集まっている? 「それは父の手柄だ。でも、それは自然に起こったことなんだ。最初から、『毎日20人のヘビー級ファイターを集める』なんて考えていなかった。ただ、自分がトレーニングするために大きなファイターが必要だったから、地元の重量級ファイターと一緒にトレーニングを始めたんだ。そしたら、もっと多くの選手が来るようになって、スパーリングのために他の選手たちも呼んだ。そして、彼らが気に入ってくれたんだ。それで気がついたら、毎日20人の国際色豊かなヘビー級ファイターがいる状態になっていた。本当に信じられないよ。トレーニング環境はこれ以上ないほど良いし、前回の試合から大きくレベルアップしているよ」 ──前回のカーティス戦後、一緒にビールを飲んだんだよね? そのときも、決着をつけることになると思っていた? 「その通りだ。カーティスは良い奴だよ。自分の知る限り、彼も同じように思っているんじゃないかな。でも、試合ではぶっ飛ばしてやろうと思っているし、彼も同じことを考えているはずだ」 ──デイナ・ホワイトは常にジョン・ジョーンズがパウンド・フォー・パウンドで最高だと言っていることについては? 「パウンド・フォー・パウンドなんて馬鹿げたテーマだ。全く意味がない。そんなことを言い出したら止まらなくなるけど、どうしてみんなが同じサイズならばって想像するのか分からないね。デメトリアス・ジョンソンのスタイルをブロック・レスナーのスタイルと比較して、もし同じサイズならばどうだとか、全く違う属性を持っているのに比較できるわけがないんだ。まるで自分のブルドッグが本当に長い首を持っていたらキリン相手に勝てるとか言っているようなもんだよ。全くのナンセンスだ」 ──今回の試合はどれくらい精神的な要素が関わっている? カーティスとの最初の試合の結末も含めて。 「全ての試合は精神的なものだよ。個人的な意見では、全ての試合は精神的な要素が50%くらい占めている。でも、初対決はもう過去のことだ。今や我々は2年前とは違う選手。MMAは本当に早く進化するからね。今回は自分にとって新しい試合だ」 ──ところであなたはムハンマド・モカエフの最初のブラジリアン柔術コーチだった。彼がフライ級でランキングを上り詰めるのを見てどう感じた? 「ああ、彼がそんなこと言ったのかい? インタビューで言ったんだって? 分かったよ。子供向けのクラスを教えていて、彼はそのクラスに来ていたんだ。モハメドがこの国に来た時から彼を知っているよ。今は彼のトレーニングに関与していないけど、よく話すし、友達だ。間違いなくフライ級で王者になると思っている」 ──マネル・ケイプとの試合についてどう思う? 「正直に言うと、マネル・ケイプに対して何も悪いことを言うつもりはないけど、フライ級のMMAはあまり見ないんだ。だからあまり知らないし、正確な評価はできないね。ムハメドは友達だし、興味があるから見るけど、他のフライ級の試合は早送りしているんだ」 ──待望のマンチェスターでの試合を控え、プレッシャーは? 「どの試合でもプレッシャーを感じる。数百万人の前でノックアウトされるのは本当に嫌だ。だから、マンチェスターであろうと他の場所であろうと、プレッシャーは感じるから、今のところは普段と変わらない。でも、試合当日の朝5時、控え室で壁が揺れるほどの歓声が聞こえる時には、違った気持ちになるかもしれない」 [nextpage] カーティス・ブレイズ(ヘビー級4位)「JJがパウンド・フォー・パウンドというなら、もっと試合をしないと」 ──この試合は「暫定」タイトルでなく、正規タイトルとして認められるべきだと思う? 「これがリアルなベルトかどうかといえば、俺の考えでは本物のベルトだよ。ジョーンズ対ミオシッチは単なる引退試合だと思っている。失礼かもしれないけど、彼らはどちらもあと1、2試合で引退するだろうからね。だから、これは彼らにとって最後の大金を稼ぐ試合で、それで終わりだということさ」 ──デイナ・ホワイトは、ジョン・ジョーンズについて熱心に話しています。 「デイナは世界で最も偉大なプロモーターの一人だからね。彼はどうやって盛り上げるかを知っている。それが彼の仕事であり、彼はその分野で最高の一人なんだ。だから驚かないし、実際には期待しているよ。最後の一滴まで、ジョン・ジョーンズで稼ぎたいんだろうし、みんなに見てもらいたいんだろう」 ──ジョーンズがパウンド・フォー・パウンドという意見については? 「それならもっと試合をしないといけない。これはスキルの観点だけの話じゃないからね。試合をしていなければパウンド・フォー・パウンドにはなれないよ」 ──あなたとアスピナルの初対決は、あなたが勝っているとジョーンズは言っていたが? 「俺もそう感じていた。みんなもその試合を何度も見たことがあるだろうけど、40回くらい見ても飽きないね。本当にリズムをつかみ始めていたから、勝っていると感じていたんだ」 ──今回のアスピナル対策は? 「もっとパンチや打撃を使うことに慣れるために、少し小さい相手とトレーニングすることを増やしたよ。それが唯一の調整だと思う」 ──ある時期、あなたはMMAに100%、真剣に取り組めていないと言っていた。真剣に取り組むようになったきっかけは? 「デンバーに移った時だね。それまでは基本的にジムでトレーニングをしていて、スパーリング相手もいなかった。運動神経とレスリングのスキルだけで、UFCと契約した。でも、ガヌーとのUFCデビュー戦の後、自分が成長するためにデンバーに移ってエレベーション・ファイトチームに参加した。それがキャリアで最高の決断だったと思っている」 ──ヘビー級ファイターのMMAスキルについて、もっと評価されるべき? 「ほとんどのファンはハイライトしか見ていないと思う。セットアップの方法、ジャブを使ったり、スタンスを変えたり、インサイドローを使って相手を惑わせたりするのを見ていない。ただ、顔面にパンチが入って相手が倒れるのを見ているだけだ。デンバーの試合で友人のドリュー・ドーバーがブラジル人と(ライト級で)戦っているのを見たけど、本当に激しく打ち合っていた。ヘビー級ではそんなことはできない。軽量級のような打ち合いをしていたら、すぐに致命傷になる。ヘビー級ではジャブ一発で倒れることもあるからね。だから、ヘビー級は異なる基準で評価されるべきだと思う」 ──12-6エルボーの解禁と、グラウンド状態の定義の変更についてどう思う? 「グラップラーにとって非常に有利だと感じる。多くの人がグラップラーを嫌っているから少し驚いているけど嬉しいよ。特にエルボーの解禁によって多くの技術が生まれると思う」 ──同じシカゴ出身のベラル・ムハマドについてどう感じている? 「素晴らしいよ。同じエリアから2人の選手が出てきて、どちらもサウスサイドで育ったんだからね。シカゴにいた時に彼と出会わなかったのは不思議なくらいだ。もし、ちゃんとやるべきことをやっていたら、もっと早くベラルに会っていたかもしれない。でも、2人ともベルトを持ち帰るチャンスがあるのは本当に素晴らしいことだと思う」 ──ゲームプランは? 「試合に入る時、これをしなければならないというゲームプランを持つことはない。それで罠にハマるかもしれないからね。プランは持たずに、その場に応じて動く。もしテイクダウンの機会があれば、それを狙う。機会がなければ、無理に狙わない。そして、打撃でも彼を倒せると信じている。もちろんテイクダウンして、自分の土俵に持ち込めれば良いけど、立った状態でも問題なく戦える」 ──敵地で戦うことについては? 「何度も経験している。レスリングのバックグラウンドがあるから、他の高校や大学に行ってブーイングされるのが大好きだったよ。それがエネルギーになるんだ。UFCでは少し違って、皆の声は全く聞こえないんだ.オーストラリアでマーク・ハントと戦った時も、ファンの声は全く聞こえなかった。それにブラジルで戦う準備もしていたんだよ。正直言うと、ブラジルのファンの方がイギリスのファンより怖いって聞いているから、それと比べたら問題ないよ」 ──ところでアレックス・ペレイラのヘビー級転向についてどう感じていますか。 「彼にとっては悪いアイデアだね。彼のために準備した計画を教えてあげるよ。すぐにタックルしてテイクダウンするつもりだ。彼を自由にテイクダウンできると分かっているのに、打撃戦に応じる必要は無い。彼もそれを知っているはずだから、対戦相手選びには慎重になっているんだと思う。タイ・トゥイバサや、ランキング15位くらいなら勝てるかも。でも、トップ5の生粋の重量級と対戦しても勝てないだろう。もしヘビー級で戦うなら、ぶちのめすよ。スキルというよりも、俺のほうが重い。ヘビー級では本当に重要なことなんだよ」 ──敵地での試合は? 「クールだよ。少し歩き回ったけど、ファンはみんなリスペクトしてくれて、とても親切だ。アスピナルを応援するけど、君もいい奴だと言ってくれるファンもいる。それで十分だよ。尊敬さえしてくれれば、応援してくれなくても、好きじゃなくても構わない」 ──ジョーンズとミオシッチは引退試合になると予測していたが、ジョーンズと対戦する機会がなくなるのは残念? 「少し残念だけど、それほど悲しくはない。ベルトを持っているし、お金も手に入る。他にも話題性のある試合はあるし、さらにお金も稼げる。満足さ」 ──試合後にはまたトムとビールを飲む? 「そうしたいね。トムは尊敬できる男だし、特に問題はない。こういう試合が一番好きなんだ。純粋に技術で勝負する。彼は俺より2歳若いんだ。ここは医療も整っているし、彼とはまた戦わなきゃいけないだろうと思ってた。でも、ベルトをかけて戦うとは思ってなかったけどね」 ──なかなかタイトル挑戦権を得られなかったことについては? 「2018年2月にマーク・ハントを倒して、6月にアリスターを倒した。それなのに、ダニエル・コーミエーとデレック・ルイスの暫定タイトルマッチが行われた。タイトルマッチに出るべきだったのは自分だ。その時が一番、俺は何をすれば良いんだよって思った。でもそれが理由で、ガヌーとの再戦を受けたけど上手くいかなかった。自分がオンラインで派手なことを言わないからチャンスを逃していることも分かっている。クレイジーな投稿をしないし、派手なインタビューもしない。それは自分で理解している。そうすることで不利になることも分かっている。でもそれが自分なんだ。レスリング出身だから、相手に悪口を言ったりしない。試合の前後で握手をする。礼儀正しい道を進んで、予想より時間はかかったけど、タイトルマッチの挑戦権を得たんだ」 ──アメリカで再戦をしたかった? 「ファンも会場も関係ない。フェイスオフも関係ない。たぶん、俺はフェイスオフでは毎回負けているが、関係ない。ファンは彼を助けることもできないし、俺を傷つけることもできない。だから会場は全く関係ない」 ──あなたは吃音のある人々を代表している一面もあります。多くの人からアドバイスを求められているのでは? 「そういう連絡は何年も前から受け取っている。自分が吃音の代表者として見られるとは思っていなかったんだけど、父も吃音があって、自分もそれを受け継いだ。遺伝的なものであって、CTE(慢性外傷性脳症)ではないと強調しておきたい。これが一番よく聞かれる質問だからね。娘も吃音があるから気がかりだ。子供たちは残酷だからね。吃音がある人や、吃音のある人と関わりのある人たちに、自分を見て、やりたいことが何でもできると感じてもらいたい。警官になりたければ警官になれる。父は警官だったし、最近退職したけどね。教師や宇宙飛行士、何でもいいんだ。吃音なんて気にしないでほしい。  昔は、名前を聞かれた時に、『自分の名前も言えないの?』って思われるのが嫌だった。でも今では、逆に彼らを判断する。成長した大人が、自分の名前を言えないなんて思うほど無知なのかと。自分は吃音があるけど、それを乗り越えたんだ。でもそれには時間がかかった。27、28歳くらいまでね。高校の頃は、答えを知っていても手を挙げなかった。笑われるのが嫌だったんだ。吃音のある人たちにも知ってもらいたい。『もし人があなたを笑ったとしても、それは彼らの性格の悪さを示しているだけで、あなたに問題は無い』とね」
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