2023年11月4日(土)タイ・バンコクのルンピニースタジアムで開催される『ONE FIGHT NIGHT 16』の「ONEバンタム級キックボクシング王座決定戦」でジョナサン・ハガティー(英国)と戦う、ONEバンタム級MMA世界王者のファブリシオ・アンドラージ(ブラジル)が、ONE公式の試合前インタビューに答えた。
アンドラージは、ハガティーの受けの弱さを指摘し、3競技を制覇したスタンプ・フェアテックスを例に、自身もMMA、キックに続きムエタイ王座も狙うこと。さらにボクシングへの挑戦も視野に入れていることを語った。
キック王座獲得後は秋元皓貴を防衛戦の相手に指名するなど勝利への自信に満ち溢れたアンドラージは、2024年の日本大会への参戦を熱望した。
ハガティーよりパワーで優り、パンチでも蹴りでもヒザでも倒せる武器をたくさん持っている
──今回のキック王座戦、最初にオファーをもらった時の心境は?
「過去のインタビューでも話しているけど、自分とONEの契約は元々、MMA、キックボクシング、ムエタイの3競技に出場するものだった。契約時、僕はキックボクシングの試合を多くやっていたし、むしろキックのプロモーションで戦う方に興味があったんだ。ここ2年間はMMAに専念していたけど、(MMAの)チャンピオンになったことで今回のチャンスが回ってきた。このオファーを受けない選択肢もあったけど、僕は受けることを選んだよ」
(C)WLF
──アンドラージ選手のキックの試合は、2019年8月のWLFでのジン・イン(※2023年WLF武林風 東北アジア4カ国-63kg級ワンデートーナメント優勝)に3R TKO勝ちした試合以来となります。現在のコンディションは?
「パーフェクトさ。いつも以上に早く仕上がったので、もう戦いの時を待つだけ。素晴らしい戦いを見せるよ」
──ジョナサン・ハガティーとの試合に向け、ファイトキャンプではどんなことを意識して準備しましたか。
「正直、これまでのトレーニング通りで大きく変えていない。MMAの試合でも、ボクシングを中心としたスタンド技術を磨くのに意識していたから。違いがあると言えば、今回は柔術、レスリング、グラウンドの練習をしなかったくらい。あとは試合時間が5分から3分に変わるので、そのタイム感覚かな。試合開始からすぐに前にガンガンいくことを意識して練習してきたよ」
──この期間でのアジャストメントはそれほど苦労しませんでしたか。
「全く違う競技のMMAを4年ほど集中してやってきたから、今回のキャンプは長めにやった。時間をかけてキックボクシング仕様にアジャストさせたので、試合の準備は万全だ」
──久々のボクシンググローブで戦うことについてはいかがですか? これまでMMAグローブでやってきて、やり辛さなどは?
「通常のボクシンググローブで戦うのは全く問題ない。練習でも使用しているし、MMAのオープンフィンガーの方が小さくて、自分的にはKOしやすいけど、パンチが見え辛く、不用意に前に出ると逆にKOされる可能性もある。でも、グローブが大きいとディフェンス力が上がるし、パンチの質も変わってくる。まあ、いずれにせよ、通常のボクシングでの戦いでも僕は自信があるよ」
──ハガティー選手の印象は?
「とても有名なファイター。彼はこれまでタフな相手と激闘を重ねてきて、ムエタイルールにおいては非常に技術が高い。対戦相手のミスにつけこむのも上手い。戦略的に戦って、僕のボクシング技術を封じるために、カウンターを狙ってくると思う。ただ、彼は試合で、フェイントからのエルボー、首相撲やヒジを上手く使ってきたが、今回はキックボクシングだ。ムエタイとキックは類似点が多いが、同時に違いも多い。ONEムエタイはオープンフィンガーグローブだから、キックでは通常のグローブで大きく、ヒジも首相撲も使えない。彼がキックボクシングルールにどの様にアジャストするのか、楽しみだ」
──あなたのスロトングポイントと、相手のウイークポイントを考えた場合の相性は?
「僕のストロングポイントはパワーだ。あと想定外な動きができる点も。ボクシング強化で試合運びも進化した。ヒザでもKOできる自信がある。パワーで優位に立っているのは、ヒザだけでなく、蹴りもパンチもだと思う。相手のウィークポイントは打たれ弱さ。攻撃の時は強いが、攻撃を被弾すると弱さが出る。ここが今回の勝負の要になると思う。
ハガティーはロッタンに下の階級の試合でノックアウトされた。今回の試合は1つ上の階級だから、打撃のパワーには大きな違いがある。それに、自分は下の階級の選手よりもはるかに大きなパンチ力があると思う。だから、ハガティーはバンタム級での自分のパンチの威力を体感することになるだろう」
──では、今回の試合はあなたのフィニッシュ勝利に終わる?
「もちろんだ。それが僕のゴール。これは全ての試合においてもそうだ。僕は戦いが始まれば、フィニッシュすることしか考えていない」
──理想的な試合展開は?
「それについてのイメージはない。僕のゴールはただフィニッシュすること。それがどのような流れであっても構わない。僕は倒せる武器をたくさん持っている。だからKOパターンが試合ごとに違う。ヒザでも蹴りでもパンチでもKOできる。同じパターンじゃないんだ。だから、一つの戦術に拘らず、持っているもの全てが出せるように準備をしている。僕は空に羽ばたく鳥の様に自由に決めることができるんだ」
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多くのブラジル人ファイターがPRIDEの時のように日本で成功している。日本で戦うことは僕の夢だ
──今回、勝利した場合、あなたはMMA、キックの2競技を制覇したことになります。その意味について教えてください。
「女子選手のスタンプ(フェアテックス)が先日、3競技制覇(MMA、キック、ムエタイ)の偉業を達成した。それに触発されたわけじゃないけど、男子ファイターではその偉業を成し遂げた者はまだいない。MMAストライカーでキックやムエタイにまで通用する打撃力を持っている選手は稀だから。だから、僕が今回キックの世界王者になって、2競技を制覇すれば、自分の名前はもっと認知されると思う。誰も成し遂げ成し遂げたことがないことに向かっているからだ」
──では、この試合で勝利した場合、次はムエタイにも挑戦し、3競技制覇を目指しますか?
「もちろんだ。まず獲ったベルトの防衛戦をやらなければいけないけど、可能性としてはある。あと、僕にはボクシングも挑戦したいという夢がある。あくまで可能性の話だけど、オープンに考えている。でも、まずはキックでベルトを獲れば、その可能性は高くなるだろう。だが、自分は今、目の前のことに集中している。まずはキックボクシングの世界王者になるんだ。その後、先の事をじっくり考えるさ」
──元王者の秋元皓貴選手に対しては、どのような思いを持っていますか。
「今回のオファーをもらった当初、対戦相手の候補はアキモトになると予想していた。彼はその実力があるし、ペッタノンからベルトを奪われたが、ペッタノンは1年間は欠場だし。この試合が終わったら(自分が王者になり)、防衛戦のナンバーワン・コンテンダーはアキモトだと思っている」
──もし秋元選手と戦った場合、どんな試合になると思いますか。
「僕が彼をKOするイメージしかない。彼はキックボクシングのスペシャリストだ。空手出身で、間違いなく素晴らしいファイターだ。戦い方もアグレッシブで技術も高い。しかし、僕だってこれまで多くのキックの試合を戦ってきたし、自分をキックのスペシャリストだと思っている。僕の技術で彼をKOできると信じている」
──チャトリ代表が公の場で、2024年の日本大会開催の可能性を唆する発言していますが、日本大会参戦の興味はありますか?
「もちろん! 日本で戦うことは僕の夢だ。多くのブラジル人ファイターはPRIDEの時のように日本で成功しているし、多くのブラジル人の友人も日本に住んでいる。大雅、武尊、松倉信太郎もタイで出会って、彼らとも友人になった。日本を訪れることが待ち遠しい。日本は世界の格闘技の聖地の一つだと思っている。その国を訪れることはもちろん、やはり、その場所で戦ってみたい」
──日本ファンへメッセージを。
「11月4日の僕の試合、ぜひ期待して欲しい。きっとエキサイティングなものになるから。全力で戦って最高のショーを見せるさ」