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インタビュー

【UFC】3年1カ月ぶり復帰戦“シン”ジョーンズはヘビー級でいかに動けるか、ガーヌはサイドステップを駆使し、JJのテイクダウンを切れるか(高阪剛)=3.4『UFC 285』

2023/03/03 10:03
 2023年3月4日(日本時間5日)、米国ネバダ州ラスベガスのT-モバイル・アリーナにて『UFC 285』が開催される。  メインイベントは、UFCを離脱したフランシス・ガヌー(カメルーン)が持っていた、現在空位のヘビー王座をかけて、実に3年1カ月ぶりの復帰戦となる元UFC世界ライトヘビー級王者のジョン・ジョーンズ(米国)と、元ヘビー級暫定王者のシリル・ガーヌ(フランス)が対戦する「ヘビー級王座決定戦」。  この一戦の見どころをWOWOW『UFC-究極格闘技-』解説者としても知られる“世界のTK”髙阪剛に語ってもらった。 JJはこの3年間の取り組み、ヘビー級仕様で5Rをライトヘビー級時代のように戦えるかが問われる ――『UFC285』のメインイベントで、ついにジョン・ジョーンズが3年1カ月ぶりに復帰。しかもヘビー級に転向していきなりシリル・ガーヌと王座決定戦を行うことになりましたね。 「ついに来ましたね。この試合のポイントはいろいろありますけど、まずは大きく2つ。ジョン・ジョーンズが3年間、格闘技にどう取り組んできたのかということと、はたしてヘビー級に対応することができるのか、ということですね。  ジョン・ジョーンズは身長が高くてリーチも長いから、フレームとしてはヘビー級でも問題ないと思うんですけど、体重が重くなればなるほど、身体への負担がぜんぜん変わってくるんですよ。  とくにタイトルマッチは5ラウンド制なので、ライトヘビー級では5ラウンド通して動けていたのが、ヘビー級になったら途中で失速したりすることも普通にある。単純に今まで以上の体重を背負っているというだけじゃなく、攻撃の出力も上がっていると思うので、その出力コントロールがうまくいかずに途中で腕がパンパンになってしまうこともありえますから」 ──ジョーンズはライトヘビー級王者時代、5ラウンドをフルに戦うことが多かったですけど、これまでどおりにはいかない可能性があるわけですね。 「ライトヘビー級時代後半のジョン・ジョーンズって、スタンドでプレッシャーをかけながらパンチの無駄打ちはしない──言ってしまえば安全に勝ちにいくという戦い方をする気持ちが本人の中にもあったんじゃないかと思うんですよ。前回、3年前のドミニク・レイエス戦でも、ジョーンズはプレッシャーをかけながら要所要所で打撃をヒットさせて、僅差の判定をモノにしていた。でも、あれをヘビー級の身体で、しかもフットワークが使えるシリル・ガーヌ相手に通用するかどうか。ちょっとそこが自分としても見えない部分ではあるんです」 ――今回はヘビー級転向第1戦ということだけじゃなく、対戦相手が“ヘビー級らしくないヘビー級”であるシリル・ガーヌというのもポイントですよね。 「そうなんです。ジョン・ジョーンズはプレッシャーをかけて、しっかり自分のかたちを作れると盤石の強さを発揮しますけど、シリル・ガーヌみたいにフットワークを使って、タイミングをずらして強い打撃を打ってくるタイプって、あんまり得意じゃないと思うんですよ」 ――ジョーンズが絶頂期に苦戦したアレクサンダー・グスタフソンも素早いフットワークを使いボクシングが得意な、いわばシリル・ガーヌタイプでしたよね。 「ガーヌはフットワークもそうなんですけど、相手を追いかけさせておいて、反対に動くことができるんですよ。要はサイドステップなんですけど、ヘビー級のあのサイズで素早いサイドステップができるっていうのは、ちょっと考えられないことなんです。  ヘビー級って体重があるから、サイドステップをすると体にものすごく負担がかかるんですよ。普通に立っているところからパッと横に動くのは誰でもできるんですけど、例えば左に動いて相手を寄せておいて、右にパッと動いて、サイドから顔面に打撃を打ち込むというシリル・ガーヌのやり方は、なかなかできるもんじゃない」 ――慣性の法則があるから、大型トラックが急ハンドルを切るのが難しいようなもんですかね。 「それに近いものがあるかもしれない。これは“ヘビー級あるある”なんですけど、サイドステップをやると足の裏の皮がめくれて血だらけになったりするんですよ。自分の重さと圧力に皮が耐えきれない。だから逆に、足が効かなくならないために下手にサイドを切らないように動いたりもするんですけど、シリル・ガーヌは後半のラウンドになってもその動きができるので、もしこれに翻弄されちゃうと、ジョン・ジョーンズも苦しくなるかもしれないですね」 ――シリル・ガーヌのサイドステップによって、ジョン・ジョーンズのプレッシャーが効かなくなるかもしれない、と。 「だからジョーンズは、あえてヘビー級らしいどっしり構えた戦い方ではなく、ライトヘビー級王者になったばかりの頃の、何をしでかすかわからないような戦い方のほうが活路を見出せるかもしれない。空振りしてもいいから距離を詰めて、相手がケージに詰まったところにヒジを叩き込むとか。サイドを取られても振り返りながらバックスピンエルボーを出すとか、そういう技をヘビー級の身体でやらやれたら、シリル・ガーヌも嫌だと思うんですよね」 ――そんなヘビー級ファイター、他にいないわけですもんね。 「だからジョン・ジョーンズがヘビー級に転向するのは新しい試みなんだけど、動き自体はよりライトヘビー級っぽいというか、若い頃みたいにいろんな技を駆使したほうが強いと思うんですよ。同じプレッシャーをかけるのでも、よりスピードを乗せるイメージでシリル・ガーヌのサイドステップを止められたら、得意のヒジがヒットするかもしれない。あとはタックルですよね。ジョン・ジョーンズはあの長身で、リーチが長くて低いタックルに入れるので」 ――シリル・ガーヌの唯一の敗戦は、フランシス・ガヌーとのヘビー級王座統一戦(2022年1月『UFC 270』)でしたけど、その時はガヌーがまさかのテイクダウンからグラウンドコントロールで来て、寝技で抑え込まれての判定負けでしたしね。 「あの試合を観ると、グラウンドになった時の対応力というのは、まだそこまででもないのかなという気がしますよね。だからこそ極力、寝かされないために、サイドステップでずらして正面に立たないようにしていたのかもしれない。そういう考え方もできる」 ――ましてやジョン・ジョーンズは、NJCAA(全米2年制大学体育協会)レスリングのオールアメリカンで、あのダニエル・コーミエーからもテイクダウンを奪っている選手ですからね。 「そうなんですよ。だからレスリング力という武器が勝敗を左右する可能性がある。べつにタックルを軸に試合を作らなくても、“タックルが来るぞ”とガーヌの意識に植え付けるだけで、ガーヌはより横の動きを強くしなければならないから、さすがに後半足が疲れてくると思うんですよね」 ――では、レスリングも含めた、ジョーンズが持つさまざまな技術を駆使することが重要になってきそうですか? 「そうなんですけど、ヘビー級の体重を背負ってそれをやるためには取捨選択をする必要が出てくるはずなんですよ。出力を出しすぎて次の動きが上手くいかなくなる、ということが起こるのがヘビー級なので。だから出力を抑え気味にしながら、なおかつ倒しに行くという技のバランスや、仕掛けの組み立てができるかどうかが問われる。ヘビー級って大味に見えますけど、ホントに難しいんですよ(笑)」 ──となるとジョン・ジョーンズは、ヘビー級になった自分を使い切れるかどうかですね。 「そうですね。また、3年のブランクの間に手に入れた新たな技術なりパワーというものは絶対にあると思うので。試合だから、必ずしもそれが出せるとはかぎらないですけど、せっかく復帰するんだから“ニュー・ジョン・ジョーンズ”を見せてほしいっていう期待感はすごくありますね」 ――ジョン・ジョーンズがここで自分の能力を存分に発揮できたら、またMMAのヘビー級が変わりますよね。MMAの進化を促すというか。 「“ジョン・ジョーンズ”という存在が出てきたこと自体がそうでしたからね。ライトヘビー級王者になったばかりの頃の彼の試合では、“MMAでこんなことができるんだ!”という驚きが毎回ありましたから。今回のヘビー級転向でも“なんだこいつは!?”と思わせるような、ジョン・ジョーンズらしい“宇宙人ぶり”が観られることを自分は期待しています」(取材・文/堀江ガンツ) ◆WOWOW『UFC -究極格闘技-』放送・配信スケジュール『生中継!UFC‐究極格闘技‐ UFC285 in ラスベガス ジョン・ジョーンズ、いよいよヘビー級降臨!vsシリル・ガーヌ』 3月5日(日)午後0:00[WOWOWプライム]※生中継(WOWOWオンデマンドでメインカードを同時配信) 3月8日(水)午前8:00[WOWOWライブ]※リピート(WOWOWオンデマンドでメインカードを同時配信) [nextpage] UFC 285: Jones vs.Gane 全カード 2023年3月4日(日本時間5日)、米国ネバダ州ラスベガス T-モバイル・アリーナ 【メインカード】 ▼UFC世界ヘビー級選手権試合 5分5Rジョン・ジョーンズ(米国)26勝1敗(UFC20勝1敗)※UFC4連勝→ヘビー級転向シリル・ガーヌ(フランス)11勝1敗(UFC8勝1敗) ▼UFC女子世界フライ級選手権試合 5分5Rワレンチナ・シェフチェンコ(キルギス)23勝3敗(UFC12勝2敗)※UFC9連勝中アレクサ・グラッソ(メキシコ)15勝3敗(UFC7勝3敗)※UFC4連勝中 ▼ウェルター級 5分3Rジェフ・ニール(米国)15勝4敗(UFC7勝2敗)シャフカト・ラフモノフ(カザフスタン)16勝0敗(UFC4勝0敗)※UFC4連勝中 ▼ライト級 5分3Rマテウス・ガムロ(ポーランド)21勝2敗(UFC4勝2敗)ジェイリン・ターナー(米国)13勝5敗(UFC6勝2敗)※UFC5連勝中 ▼ミドル級 5分×3Rボー・ニコル(米国)3勝0敗(UFC0勝0敗)※コンテンダー出身、レスリングU-23世界選手権優勝ジェイミー・ピケット(米国)13勝8敗(UFC2勝4敗) 【プレリミナリー】 ▼バンタム級 5分3Rコーディ・ガーブラント(米国)12勝5敗(UFC7勝5敗)トレビン・ジョーンズ(グアム)13勝9敗(UFC1勝3敗) ▼ミドル級 5分3Rデレク・ブランソン(米国)23勝8敗(UFC14勝6敗)ドリカス・デュ・プレシ(南アフリカ)18勝2敗(UFC4勝0敗)※UFC4連勝中 ▼女子フライ級 5分3Rビビアニ・アラウージョ(ブラジル)11勝4敗(UFC5勝3敗)アマンダ・ヒバス(ブラジル)11勝3敗(UFC5勝2敗) ▼ミドル級 5分3Rジュリアン・マルケス(米国)9勝3敗(UFC3勝2敗)マルク・アンドレ・バリオー(カナダ)14勝6敗(UFC3勝5敗) ▼ウェルター級 5分3Rイアン・ギャリー(アイルランド)10勝0敗(UFC3勝0敗)※UFC3連勝中ソン・ケナン(中国)16勝6敗(UFC4勝2敗) ▼バンタム級 5分3Rマーナ・マルティネス(米国)10勝3敗(UFC2勝1敗)キャメロン・サーイマン(南アフリカ)7勝0敗(UFC1勝0敗) ▼女子ストロー級 5分3Rジェシカ・ペネ(米国)14勝6敗(UFC3勝4敗)タバサ・ヒッチ(ブラジル)7勝1敗(UFC2勝1敗) ▼バンタム級 5分3Rファリド・バシャラート(アフガニスタン)9勝0敗(UFC0勝0敗)ダモン・ブラックシア(米国)12勝4敗(UFC0勝0敗) ▼ライト級 5分3Rエステバン・リボビクス(アルゼンチン)11勝0敗(UFC0勝0敗)ルイク・ラジャボフ(タジキスタン)16勝4敗(UFC0勝0敗)
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