空道
レポート

【空道】2年前、世界選手権に出場できなかったロシア勢、鬱憤を晴らすアジア制覇。決勝で日本人をアナコンダチョーク葬

2025/11/06 19:11
一般社団法人全日本空道連盟「第4回アジア空道選手権大会」2025年11月3日(月・祝)東京・国立代々木競技場第2体育館  空道における最強国といえば、世界選手権で全カテゴリーの王座を独占したことすらあるロシアだが、ウクライナ進攻問題を機に、その国際大会への出場は認められなくなり、前回2023年の世界選手権においては、ロシア人選手のいないなかで、日本人選手が8カテゴリー中6カテゴリーを制していた。  それから2年を経て、今回のアジア選手権、KIF(国際空道連盟)は、ロシアのうち、ウラル山脈より東側(シベリア~沿海州地区など)は、アジア圏とみなし、それらの地区より選出された代表選手の参加を認める判断を下した。  迎え撃つ日本としては、あの2023年の栄冠に対し『やっぱりあれはロシア抜きだからこその結果だったんだな』といった評価をされないためには、今大会において“アジア地域のロシアの代表”たちを問題なく制しておきたいところだったが――。【写真】表彰式後、ロシア国旗を身に纏い、壇上で記念撮影を行うロシア勢。前列右からルスラン・ジャファロフ(-270クラス優勝)、バヌシュ・チャホヤン(-240クラス優勝)、オレシア・セルゲエヴナ・ブルダコワ(女子-220クラス準優勝) ▼-240クラス決勝戦〇バヌシュ・チャホヤン(ロシア)延長 一本勝ち×佐々木虎徹(日本・大道塾総本部) 【写真】バックキック&ロシアンフックで圧力を掛け、組んでは反り投げ…といかにもロシアンらしいパワーファイトで圧倒したチャホヤン(白) 今年2025年全ロシア選手権を制しているチャホヤンは、初戦で2022年U19 全日本春秋連覇の佐々木惣一朗、準決勝で2022年全日本優勝、2024・2025全日本準優勝の伊東宗志を退け、決勝では2024全日本無差別ベスト8の佐々木と対戦した。  本戦は佐々木が重い左ミドルをヒットし、前後のステップでロシアンフックに空を切らせるなど健闘したが、延長ではチャホヤンが投げ、ニーインベリーからキメ突き。腋を差して立ち上がろうとした佐々木に対しチャホンは、腋下で腕を組んでのチョーク(いわゆるアナコンダチョーク)によりカウンター。一瞬でタップを奪ってみせた。 【写真】タップでの敗北に悔しさを抑えきれない佐々木 つまり、ロシア人ひとりに対し、日本人のトップファイター3人が立て続けに挑んで、全員敗れてしまったということだ。今大会、全カテゴリーをみれば、優勝したのはロシア人2名、日本人5名。  その数値だけを切り取れば、日本が勝っているようにも受け取れるが、ロシア人は4名のみ出場し、日本人は24名出場していて、この-240クラスのように日本人が次々とロシア人に挑んだカテゴリーや、ロシア選手の出場者のいないカテゴリーがあっての、この結果なのである。  7戦あった日露対決にフォーカスしてみれば日本の2勝、ロシアの5勝。その「ロシア」が全ロシア代表でなく、東部アジア寄りのロシア地域のみの代表に過ぎないことを考えれば、2年後の世界選手権で日本が競技母国としての威厳を保つのは、やはり並大抵のことではないと感じざるを得ない。 [nextpage] ▼女子-220クラス決勝戦〇小野寺玲奈(日本・大道塾帯広支部)再延長 効果優勢勝ち×オレシア・セルゲエヴナ・ブルダコワ(ロシア) 【写真】支え釣り込み足から内股への連絡→キメ突きで、快挙を達成した小野寺(青) 2023世界選手権優勝以降、2024体力別&無差別2025体力別と全日本を連覇している小野寺だが、実は、その連勝の合い間に重い1敗を喫していた。2024年ユーラシア大会決勝アナスタシア・モシキナ戦での惜敗だ。  ロシア不出場の世界選手権での優勝者としては、前回世界選手権優勝のロシア選手との直接対決において旗を得られなかったことは、その後、どんなに勝利を重ねても(この7月にはワールドカップでも優勝したが、この大会にロシアは不出場)、心に燻るものを残していたに違いない。  今大会で、仙石梨江・大倉萌をいかにもロシアンファイターらしい前のめりな突進で下してきたブルダコワのプレスに力負けすることなく、かつ、重心の移動を誘発し捉えるタイミング技で力に頼らずポイントを奪ったことは、自らの心を晴らすだけでなく、ロシア対策を考えるチーム日本に、不落の城を攻め落とす道筋を示したであろう。 [nextpage] ▼-270クラス決勝戦〇ルスラン・ジャファロフ(ロシア)本戦 一本勝ち ※肩固め×テミルラン・アイティモフ(カザフスタン)  今年2025年の全日本王者・松岡陽太は、初戦で右ストレートで1つめ、パンチ連打で2つめの効果を奪われ、アイティモフに敗戦。圧倒的なパンチの破壊力をみせたアイティモフだったが、決勝ではジャファロフとの打ち合いで後退し、気後れ気味なタックルを仕掛けるも切られ、寝技の展開でも流れるようなパスガード→キメ突き→肩固めで完敗。  このジャファロフがあくまで「アジア地域のロシアの代表」であって、今年2025年の全ロシア選手権では優勝できていないというのだから、2年後の世界選手権の重量級で日本が真の世界一を勝ち名乗りを上げることの難しさをまざまざと見せつけられた感あり。 【写真】各カテゴリー優勝者。左上から時計回りにキム、鈴木、水村、ジャファロフ、大西、内藤、小野寺、チャホヤン【その他の階級の優勝者】■男子270+ デユ・キム(韓国)-260 水村健太郎(日本・大道塾総本部)-250 鈴木浩佑(日本・小杉道場)-230 大西凛駿(日本・大道塾総本部)■女子220+ 服部雅子(日本・大道塾横浜北支部)  ※空道ルール:道着・拳サポーター・頭部防具を着用し、頭突き・肘・膝を含む打撃と、投げ技・寝技によって争う。階級別大会では、身長センチと体重キロを足した数値(体力指数)によって、男子6階級、女子2階級にクラス分けを行う。一本(打撃によるKO、絞め・関節技によるタップアウト)のほか、効果=1ポイント、有効=2ポイント、技あり=4ポイントによるポイントの多寡により、勝敗を決し、両者ポイントのない場合は、旗判定で決着をつける。1試合の試合時間は本戦3分+延長3分(+決勝のみ再延長3分)。
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